ペンは剣より強し-prologue
ペンは剣よりも強し、という言葉は知っているだろうか?
言論の力が権力をも上回ると、一般的にはそう誤解されている。さてここで聞きたいことがあるのだが、言論の力が暴力に勝ったことが今まで一度でもあっただろうか?いや、一度もなかった。たった一度でさえもない。これから本当の意味を教えよう。
「ペン」とは権力を揶揄している。これは逮捕令状や死刑執行などにサインする、司法の力を指している。そして「剣」とは暴力、「言論」を持って現国家の崩壊を望み、反旗を翻そうとする民衆の暴力を指す。つまり、暴力的な民草の言論も、法の力と国の軍隊の前には無力。という脅しの事柄だ。
言論の力が権力を上回った時に起こる事件の事をなんて呼ばれているか、君たちも知っているはずだ。クーデター、だよ。これは何も昔の話に限ったことではない、今現在も世界のどこかでクーデターは起きている。言論とは暴力のことを指して他ならない。
つまり人間の本質とは暴力だ。しかし、暴力だけでは今のような高度な文明レベルに達することはなかっただろう。そんな人間はある時、画期的な発明をした。それが金だ。金のチカラは偉大だ、暴力塗れの人間をすっかり変えてしまった。確かに、クーデターが起こるような国は現代も存在すると言った。しかし、それは貧しい国の話だ。金さえあれば、不満なんて誰も持ちやしない。
治安が悪くなるときはいつだってそう、経済が悪化した時だ。第二次世界大戦が起こったもそう、世界恐慌によって世界中が不景気になったからだ。そう、世の中は金でしか動かない。金でしか動けない。
つまりぼくは何が言いたいのかというと、ぼくは金が好きだ、富が好きだ、利権が大好きだ。金のついて考えるのが大好きだ。戦争が起きても構わないと思っている。どうせ放っておいても殺し合うだけさ、人間の本質は暴力だからさ。ぼくがそこにどう干渉しようがしまいが本質は変わりやしない。
さまざまなコミュニティが形成し、人間は"個"ではあると同時に、"群"としても動くようになった。しかし、そのいずれにしてもすることは同じ、人類史において人間は"人殺しと金儲け”この二つしかしてきていない。二つしか選択肢がないのなら、することは一つしかない。さあ、金を稼ごう。多かれ少なかれ、殺し合うんだ。僕が原因で争いが起きたってだなんて誰も思わない気付きやしない。そう僕は悪くない。僕は何も悪くない。僕は、僕のためだけにこの異世界を金に変えるー
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僕の家の中にあるこの扉は、異世界へと通じている。金だ、金の匂いがする。その大地が、資源が見える、人が見える。あらゆる金の資源が目の前に漂っているのを感じられる。その全てが、カラカラに痩せ細るまで貪り尽くしてやろうじゃないか。人類がそうしてきたように、今現在も僕らがそうしているように。
でも、そんなことは考えるべきではなかったのかもしれない。