No.1「謎の少年少女」
普通の生活にはもう戻れない。
偶然? 必然? 運命?
偶然が続けば必然となる。
当たり前だと言えばそれはもう、運命なのだ。
「こちらを向いてください!」
「すみませーん、お名前を聞かせてください!」
「ただいまこちらの空港では、連日報道されている『謎の少年少女六人組』が到着しました!」
「テロリストと対峙した時に緊張はしませんでしたかー!」
カメラのフラッシュが目に眩しい。こちらを覗くレンズがズラリと道筋にならんでいる。報道陣は他社に負けじと声を張り上げていて、空港内は混乱に包まれていた。対象がプライベートであろうとも、良いネタを手に入れるためならばモラルもプライバシーもへったくれもなしだ。そんな渦中の彼らが報道陣に対する反応は三者三様だった。
「ハロ〜!」
手を振り笑顔で応える、長身でブレザー型の高校制服を着た赤髪の少年。
「チッ、うるせーな」
不機嫌そうに目障りな報道陣を睨みつける、学ランを着た黒髪の少年。
「わあ、すごい。人に埋まりそう……」
低身長で涼しげな水色のセーラー服を着た、空色の髪の少女。
「ふん、まあ有名人ってこんなもんよ。仕方ないわ」
優越感を感じているのか「そんな悪い気はしない」と言う、女子にしては高身長なブレザーを着たピンク髪の少女。
「オレ達有名人?! なんかいい響きだな!」
目を輝かせ片手でカメラに向かってピースサインをし、満面の笑みを浮かべ闊歩するオレンジ髪でやや低身長の学ランを着た少年。
「疲れた、帰りたい……」
飛行機にでも酔ったのだろうか。負のオーラ全開で顔色が悪い、ブレザーを着た金髪で猫毛の少年。
謎に包まれた少年少女だったが、すぐに着ている制服で通っていた学校が割れ、最近ではその学校の前にも報道陣が通いつめていた。
六人と知り合いだとか、友人と名乗る人もネットには溢れかえったが、信憑性はどれも低いものばかりだった。しかし某呟きサイトでは早々に全員のアカウントが特定され、フォロワー数が一気に跳ね上がったらしい。
そんな有名人の仲間入りを果たした少年少女は、特に列を作るでもなく各々のペースで歩みを進める。全世界がこの謎の少年少女六人組に注目していた。
――――その理由は、数日前にさかのぼる。
東京で行われたテレビ中継もされている大規模なイベント中、六人の銃を持った覆面の大男達に占拠されてしまったのだ。不幸にもその内の逃げ遅れた五百人が人質となり、大きな事件として連日報道され続けている。
そしてテロリスト達は逃げ遅れた哀れな国会議員の頭に銃口をつきつけ、大金を要求してきた。一時間以内に用意ができなければ、十分おきに人質を殺すという。テレビ中継をしていたカメラマンも人質になってしまい、緊迫したその現場をリアルタイムで全国へ放送された。
誰もがこの状況を悲観していた時、人質の中から突如六人が立ち上がり、持っていた拳銃を発砲した。
刹那、テロリストが一斉に動きを止め、その場に膝から崩れ落ちてしまったのだ。それを合図に、人質五百人は悲鳴を上げながら警察側へと必死に走った。
人質を囲む形で立っていた六人のテロリストの前には、それぞれ立っている人がいた。片手には拳銃が握られている。テロ現場を制圧した張本人である事を証明するには、それだけで充分な証拠だった。
――――そう、この六人が謎の少年少女達だったのだ。
休日の午後に起きた大事件という事だけあり、視聴率98パーセントという前代未聞の数字を叩き出した。これが意味する事は、国民のほぼ全員がこの惨状と勇姿を目にしていたという事だ。
謎の救世主達は世界中のニュースで取り上げられた。ネットでもニュースでも頻繁に目にするのは、その謎の少年少女六人組の事ばかり。日間検索ワードランキングでは、なんとあの日から一位を一度も譲らない。
世間では「警察関連の人達なのでは?」とも噂され、いろいろな憶測が飛び交ったが、結局何の公式発表もないまま一週間が過ぎようとしている。しかしその後も六人は姿を隠すでもなく、堂々とした態度で何度も人々の前に現れた。
マスコミやファンは六人をずっと追う状態で、泊まっているホテルのロビーにまで波のごとく押し寄せ、プライベートなどない生活に等しくなっていた。
「なぁー腹減ったよ、オレ」
「ルームサービスは?」
「ここのホテルのは一通り食ったもん。他のが食べたい」
「出前とか?」
「外に食いに行きてーの!」
「そんな事言ったって、そのまま報道陣引き連れて行くことになっちゃうよ〜?」
「それは辛いな……」
成長期真っ只中の最年少。中学三年生の月見里信太は飢えていた。橙色の短髪から連想させられる活発さと、運動神経の良さだけが取り柄の彼だが、空腹にその全てを吸い取られていくばかりだ。
それをなだめるのは最年長、高校三年生でアメリカと日本のハーフ、アルフレッド・ウィリアムズ。暑苦しさを連想させられる赤髪は、男にしてはやや長髪で顎まである。しかしそれとは対照的にどこか達観しており、いつも笑顔で気の抜けた感じがありながらも頼りになる存在だ。
「おいアル、そのサルにかまっててもきりねぇぞ。餓え死ぬくらいがそいつにはちょうどいい」
口が悪く、無愛想な少年の名は蔦森夜斗。黒髪で前髪がアシンメトリー。そのせいか目つきの悪さが強調されてしまっている。両耳にピアスをしており、常に眉間にシワが寄っている。高校二年生であるが、通っていた学校では頭の良い不良として知られていた。
「んなッ、サルじゃねぇ、信太だ! この万年不機嫌野郎!」
「誰が万年不機嫌野郎だこのサル! 俺は夜斗だって何回言えばわかるんだ。その頭じゃ名前すら覚えらんねぇのか」
「や、やめてよ二人とも。頭に響く……」
見かけはいかにも貧弱。喋り口調も気弱そのもので、今はソファで横になり休んでいる。そんな彼は高校一年生で高園佐久兎という名前だ。綺麗な金髪は隔世遺伝による祖父のものであるらしい。
「そうよあんた達。少しどころかすっごくうるさいんだけど。ねぇティア?」
もう一人の高校二年生。桃色の髪を低い位置でゆるく二つに結んでいる。夜斗と似て口はあまり良くないが、毒気はあまりない。しかしそんな桃井愛花は素直さに欠け、つり目という要因も重なり怖い人だと誤解を受けやすかった。
「愛ちゃんの言うとおりだよ。佐久兎が具合悪いんだから寝かせてあげないと」
そして最後は高校一年生、ティア・ルルーシェ。綺麗な空色の髪は腰まであり、前髪は綺麗に切りそろえられている。大きく愛らしい瞳はどこまでも優しく、それはまるで彼女の内面を映しているかのようだった。しかしどこか儚さを感じさせる、一筋縄ではいかないような人物だ。
「う、ティアがそう言うなら。ごめんなさい」
信太が素直に頭を下げた。
「そうよ〜! 病人は労らないとダメよっ」
「……アルってたまにそのテンションになるわよね」
愛花が苦笑する。しかしアルの冗談を楽しんでいる様にも見えた。
「お父さんはね、嬉しい事があるとついうかれちゃうのよ!」
「口調がお母さんよ、アル。それにお父さんってよりお兄さんって感じだけどね」
「確かにそうだね。世話好きなお兄さんみたいな!」
ティアが納得したように深く何度も頷く。
「愛花は毒舌っていうか意地悪っていうか、怖いよな!」
「信太はデリカシーってものがないの? あたしよりティアの方が怒ると怖いと思うけどね」
「が、ガオー? あはは、骨の髄まで食べちゃうぞ〜」
「なんで怖いイコール肉食動物なのよ。全く怒らない人が怒ると怖いってやつよ」
平気な顔して実はティアも飛行機に酔っているのではないだろうか。いつもより気の抜けた喋り方だった。
「確かにティアが怒ったところ見た事ないな! ていうか優しいしな」
「私はそんなにできた人間じゃないよ」
「ティアがそう言おうと、ティア以外にはそう見えてんのよ。いい事なんだから認めなさいよ!」
「ほーらまた愛花ってば強引な」
アルがまあまあと割って入るが、ティアは起こしていた体を再びソファに投げ出した。やはり調子が良いとは言えないようだ。閉所恐怖症だと言っていたので、飛行機のせいで極度の緊張により体に不調をきたしたのだろう。
「そういえばアル、あんたはあたし達がどうやって選ばれたか知ってるの?」
「いや、知らないなぁ。日本在住って事以外は共通点ないと思うけどね?」
「世間じゃ謎の少年少女六人組って呼ばれてるけど、その本人であるあたし達でさえ何もよく分かってない」
愛花の冷静な一言に一瞬にして静まり返る。
「突然集められて、イベント会場で待機命令が出て……。そのまま撤退命令が出るまで普通に過ごしてたら突然テロに巻き込まれて。そこで出された指示は人質に紛れてテロリストを捕らえろ? 持たされていたカバンの中を見れば拳銃が入ってる。麻酔弾らしいから躊躇せずに合図と同時に打ったけど、一般人にテロリスト任せて、しかも銃撃たせるって何よ。頭おかしいんじゃないの? もしかしてあたし達、騙されてるんじゃ……」
「うーん、それはないんじゃないかなぁ? 本当は国の人からの指示じゃありませんでしたって事なら、ボク達もうとっくに捕まってるよきっと!」
「それもそうかぁ……。でも直接その人達と会ったのは一回だけよね。お金は全部出してくれてるからいいけど、このホテルにも後何日いればいいんだか」
「うーん、私達の共通点かぁ。アルの言った通り出身や育ちは違えど現在は日本国籍。それともう一つ。訊きづらい事だからあえて触れなかったけど、貴方達は過去に親しい人を……その、亡くしていませんか?」
ティアのその言葉に目の色が変わる。何かが瞳の奥で揺らいだ。目を見開いたり、眉根を寄せたり反応は様々だ。
「……ボクの両親は十年前に事故死したよ。小学二年生の頃だったかな〜」
「あたしは父がいないわね。一歳の時に山で遭難してから行方不明になったらしいって、母に聞いたわ」
「オレはじいちゃんばあちゃんに育てられたんだけど、父ちゃん母ちゃんは俺を産んでからすぐに事故で死んじゃったらしい」
アル、愛花、信太の順で答えるが、質問したティア本人含む佐久兎と夜斗の三人はまだ答えていなかった。
「両親は私が七歳の頃に亡くなりました」
「ぼ、僕はお母さんがいない。三年前、取材中に行方不明になったってお父さんに聞いた」
「俺も十五年前に両親は死んだ。それから親父の弟に引き取られたんだ。でも高校になって一人暮らしを始めたから、叔父さんとももう疎遠だな」
夜斗が話し終えると、ティアが複雑そうな顔で六人の共通点の二つ目を、皆はもう分かっているがあえてそれを口にすることで確認した。
「私達の共通点の二つ目。親しい人が行方不明、または既に亡くなっているって事……ですね」
あえて親しい人と表現したのは、ここで明かされた以外にも親だけではなく、その他の家族や友人を失っている可能性があるからという事だろうか。ティアには他の五人以上に見えているものが数多くあった。
「俺達は適当に集められたってわけじゃなさそうだな。って事はなんだ? 日本在住で親が死んでるのが何かの条件なのか?」
「ボク等の共通点が他にあったなんてね。ティアって勘がすごくいいんだね?」
「親譲りってやつじゃないかな。亡くなった両親の置き土産、なんてね!」
アルの勘繰りを適当な言葉で受け流すティア。
「オレなんかバカだから共通点なんか考えた事なかった! そういや一番年上のアルは、俺達より何かしらの多くの情報を与えられてたりしてないの? 指示も全部アルにメールで来るじゃん」
「信太は元気が取り柄なんだから悩む仕事は他に任せなよ〜。ちなみに情報はなんもないでーすっ! ……あ、でも今日誰か来るらしいよ」
「は? なんで今まで黙ってたんだよ」
「サプライズ的な!」
「じゃあなんでバラしたんだよ?!」
「えへっ、口が滑った!」
夜斗のツッコミにお茶目に返すと、タイミングを見計らったかのようにインターホンが鳴る。
「あたしが出るわ」
愛花が客人を招き入れると、黒髪ポニーテールの現代の日本では風変わりな男性が現れた。
「どうも。今日からこの隊の責任者、つまり隊長の二十一歳の実盛右京です! よろしく」
口々に挨拶を軽く返す。着物の袖を暑そうにパタパタと振るその姿は、決して威厳があるだとか、お堅いイメージではなかった。比較的歳が近いのも合間って、必要以上に身構える事はなかった。
「あの、早速なんですがボク達はなんで集められたんですか? ……右京さんは知ってますよね?」
「まあ気になるようね。まずはちょっとした説明から始めようか」
六人の視線が右京に集まる。生唾を飲み込み、真剣な眼差しを静かに向けた。
「明日、政府から発表がある。今まではそれはずっと隠されていた事なんだ。我々人間は密かに水面下で人ならざるもの……つまり霊や妖怪、悪魔等の総称である『人外』と戦ってきた。そして世界には対人外を専門とする、人外対策局というものがある。略称はAMS。今日までは秘密組織だった。けれど明日からは秘密でもなんでもないね!」
内容の突飛さに半信半疑ながらも、とりあえず全てを聞くまで口を閉ざした。
「とりあえず俺はそこに所属する退魔師と呼ばれる者です! 外国では退魔師をエクソシストと呼んだりするね。俺達は人外を退治する仕事をしている。テロリストを簡単に倒した君達だから、きっと大きな戦力になると思うんだ。だからスカウトしに来ました〜! 俺達と一緒に戦おう。ヒーローになっちゃおう! はい、パチパチパチ〜」
「な、なんだかよく分かんないけど、ジンガイ? とかいう奴と戦って人を守れって事か! かっけぇな!」
「ぼ、僕は、もうあんな目に遭いたくないから嫌だよ……」
どこまでも素直な信太と怖がる佐久兎。個人の意見を尊重してくれそうな人だが、期待虚しく難しそうな顔で唸る。
「それがそうもいかないんだ。あのテロ事件は本来、警察とか機動隊とかが処理すべきだったんだけどね。テロリストの主犯格が人外を使役してテロを遂行しようとしている事が分かって、俺達人外対策局管轄の事件になったんだ。人外が絡んだ瞬間に、ほとんどの決定権はこちらに移る。しかし人外対策局は現在人員不足でね。何かあった場合に備えて早急に人員不足の解消、つまり人手を集める事に必死だったんだ」
彼の言葉は嘘ではない。そう直感するがどうも訝しい。今まで霊を見た事がない彼らに、言葉だけで信じてくれというのも変な話だ。しかしその反応は予想の範疇であったようで、いちいち頓着する事なく話を進めた。
「そこで条件を満たした十代後半の人が全国から今回は十二名選出された。君達はその内の六人だ。手っ取り早く能力を知ろうと試験的で手荒な試みだったけど、見事成功というわけだね。でも一応現在も一般人の君達が銃を取り扱っていいものだろうか? 答えはもちろんノー。銃刀法違反だったりその他諸々法律に引っかかっちゃうんだよね!」
「え、えぇッ?! じゃあ僕達、え?! でも、やれって言ったのはそっちで、なのに……理不尽な……」
佐久兎は混乱し、愛花は怒りを露わにした。
「理不尽ですよ。試されたって事ですか? あの場でもしもあたし達の中の誰かが死ぬような事があったら、どうする気だったのよ?!」
「そんな事にはならない」
「なんでそんな事が言えるのよ?!」
「君達が弾を外してしまった事も想定して、俺達も銃を構えていたからね。君達が殺られる前に、俺達がテロリストを殺っていたさ」
「それ、ボク達に圧力をかけてるんですよね? ボク達の顔はもう世界中に知れ渡った。少なくともすぐには普通の暮らしには戻れないし、ネット上に写真やら動画やらが載った以上、今更消したって半永久的に残る」
アルが真剣な眼差しで右京を睨む。口元は笑っていても、目だけは心情を顕著に映していた。
「もう後戻りできないような状況を作り出して、話を受け入れさせようとしてるって事ですよね〜? そんなにそちらさんがボク達に執着するのは何故ですか」
アルがチクチクと右京を刺す。観念したかのように大きなため息を吐く右京は苦笑を浮かべた。
「もういっかぁ。正直に話すよ。こういう腹の探り合い好きじゃないんだ。俺は君達の味方だしね。……人外対策局が欲した人材、つまり君達が最も人外対策局に所属する事を拒みそうな六人だった、って事だよ。後の六人は君達が入るよりも少し前に入ったんだ。人外についての存在を元から知っていたから、すんなり所属を決めてくれた。そして人外対策局の存在を明かすきっかけにする為、君達を人外対策局の顔に仕立てあげたんだ。断れないようにってね」
露骨に顔をしかめる夜斗、信太、愛花、佐久兎。そして複雑な表情をしているアルとティア。そんな六人を見て苦渋に満ちた顔をする右京。
「こんな汚い真似をしてまで上層部が君達を欲しがっているんだ。でも、本当に申し訳ない。俺の力が及ばずにこんな事態になってしまい、巻き込んでしまった。それでももし、俺達の組織に入ってくれれば合法的に銃を扱った事になるから、罪に問われずに済むんだ。そこで君達の意思が聞きたい。俺的には君達に退魔師になって、俺の隊の隊員になってほしい。まずは訓練を三ヶ月間……八月いっぱいまでは仮編成と呼ばれる隊で訓練をしてもらいたいんだ。その二ヶ月後に正退魔師になれるかどうかの試験がある」
納得がいかないように口をへの字にしているが、最後にともう一度頭を下げた。
「とりあえず今は所属してくれる事が必要なんだ。もちろん命の危険はつきまとうから強制はさせられない。でもこのままじゃ君達の身が危うい……。頼む。所属してください」
言葉だけではなく総合的に評価して、右京はどうやら悪い人ではないのが分かり、あっさりと一番に声を上げたのはティアだった。
「私は、所属します」
「オレも! なんかカッケェ!」
「牢屋に入るよりはマシだな」
「夜斗なら脱獄しそうだよな。未成年が牢屋に入るかは分からないけど!」
「俺をなんだと思ってるんだコイツ」
信太も夜斗もティアに続く。
「後輩だけ危険な目に合わせるわけにはいかないな〜! って事でボークもっ」
アルまでも所属すると言う。
「は、はあ? そんな事すぐ返事して、あんた達ちゃんと考えてるの?! ねぇ佐久兎!」
「ぼ、僕はいいよ。捕まるよりはマシだと思うから。怖いけど、怖いけどね……!」
佐久兎に助けを求めたつもりが、更なる追い打ちをかけられた愛花は絶句し口をぱくぱくさせた。
「後は君だけだね」
右京が思った以上に早かった回答に驚きを隠せないように笑いながら、残り一人となった愛花の答えを待った。
「……っああもう! なんなのよ、あんた達ってただの馬鹿なの?! くそっ、いいわよ。あたしもなんとか局に入るわよッ」
「ありがたい回答だね」
そうして右京は勢いをつけて立ち上がった。
「これからよろしく! 仮編成右京隊の皆!」