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No.27「神のみぞ知る、上様の言う通り」

 それは水中にいるような、そんな不明瞭な音声だった。


「■■■■■■」


 目以外、夜斗に良く似た誰か(・・)のその言葉に彼が叫ぶ。しかし次の瞬間には、顔に返り血を浴びていた。見開かれるその目には、確かに横たわるティアが映っている。


 アルがあの時に見た未来だった。ティアを撃ったのは夜斗ではなく、その誰か(・・)だ。


「……ティア」


 聴覚がクリアになった時、夜斗の声がはっきりと聞こえた。絶望感に打ちひしがれ、顔から色が消える。目前で起きた事を理解しようとしてか、怒りからかは判断がつかないが視点が定まっていない。ふつふつと彼の腹の底から湧き上がる本能(かんじょう)が、顔に表情を形成させていく。


 怒り、悲しみ、憎悪。きっとそれ以外にも黒い感情が彼の中で渦巻いていた。


「……くそっ、殺してやる。……殺してやる!」


 見た事もないくらいに歪んだ顔には、一つの絶対的な決意が見て取れる。空気が震え、バチバチと空気を弾く電気のようなものが肌で感じられた。そう、これは殺意だ。


 しかしこの視点は誰のものだろうか。まるでそこに存在していないかのような、もしくは透明人間のような扱いだ。夜斗の目にも名前の知らない誰か(・・)の目にも止まらない。誰かしらの視点である事は、移動する度に上下する視界が物語っている。

 そして視点の人物はティアに向かって歩いて行き、彼女を見下ろし目の前の宙へ手をかざした。空間が歪む。それはゆらゆらと蜃気楼のように揺れ、ベールの向こうには全く違う景色が見える。


「無茶をする……。早く解毒剤を――」





「――――っ……!」


 声にならない声が漏れ、夢から醒める。夢というのは正確ではない。これは寝ている無防備な時に、未来視の能力が働いたのだ。あれは寝覚めの悪い夢ではなく、悲劇的な未来だった。


 上半身を起こし腕で体を支える。ティアの死にショックを受け、体が震えているのが分かった。


「訳、解んないよ……」


「……大丈夫か?」


 うなだれていると、突然隣から声がかかる。疑問の余地はない。夜斗だ。


「起きてたんだね」


「まあな、どうしたんだよ。何か視えたのか?」


 キメラ事件が起きているという状態が状態なだけに、夜斗の顔は真剣そのものだった。これはアルにとって痛い質問である事は、きっと彼には伝わっていない。無神経だなとは思わない。むしろ過敏すぎるくらいに敏感なのだ。


「……夜斗と戦う人の姿を視た。夜斗と同じ黒髪で赤目。髪は長くて、多分歳は近い。おそらくは、今視えた人が今回のキメラ事件の首謀者だよ」


 言葉にする事で本当になってしまいそうで、怖くてティアの事は口にできなかった。


「……俺さ、言われたんだよ。ティアに」


 しかし、その名前に思わず反応しそうになる。いつも通りの態度を努めて演じた。普段から彼女のようにポーカーフェイスなアルは、演技力には自信があった。


「今回の事件の黒幕は、俺の知っている誰かかも知れねぇって。……その外見の特徴が一致する奴を、俺は一人だけ知っている」


 それはやはり夜斗の知人という事だ。良くない考えが脳裏によぎる。戦いにくい相手になる事を予想し、心中を察すると心が痛んでしょうがなかった。


「俺を引き取ってくれた、叔父さんの息子。つまり従弟だ。名前は……蔦森(つたもり)呼斗(こと)


 だが、予想に反して彼は案外淡々としている。珍しくアルよりも夜斗の方が冷静だった。冷たいとも取れるほどの平静さは、彼の強さや優しさ、もしくは覚悟だ。


「……これは、右京さんに報告すべきなのかな」


「当たり前だろ」


 迷う事に否定的なその言葉に、アルは夜斗を非情だと思ってしまう。退魔師としては当然の行動。しかし家族に対してとる行動としては、どこか薄情すぎやしないかとも感じられ、つい責め立てるような口調になってしまう。


「当たり前って……。それは家族を殺す事になるかもしれないんだよ?!」


「家族だって関係ねぇ。家族だからって間違いを正すなって言うのかよ」


「……別に、そんなんじゃないよ」


 やけに言葉に感情のこもったアルに、夜斗は言い返す事はなく怪訝な顔をする。こんな彼を初めて見たという事もあり、妙な胸騒ぎを覚え、アルの心に余裕をなくした理由がどうしても知りたくなったのだ。


「本当にどうしたんだ。何かあったのか」


「……何でもないよ」


「何かはあんだろ。不満があるなら言えよ」


「そんなんじゃないってば」


「じゃあなんだよ?」


「なんだよはこっちの台詞だよ。強がるのやめたら? 見ていて痛々しいよ」


 痺れを切らした夜斗は彼の胸ぐらを掴む。しかしアルは身構える事なく、拗ねたように顔を背けるだけだった。


「黒幕は夜斗じゃなかった。それが分かっただけでも嬉しいけど、ボクはそれだけでは安心できない」


「他には、何が視えたんだ?」


 アルは口を固く結んだ。そしてゆっくりと再び口を開く。


「――――ティアの死、だよ」


 観念したように告げたその言葉は夜斗にとってはあまりにも衝撃的で、頭を鈍器で殴られたような感覚にとらわれる。底のない奈落にでも落ちかけているのではないかと思うくらいのめまいが襲うが、なんとか堪えた。


 ――ティアが……死ぬ……?


「これでも夜斗は強がっていられるの? 少し頭を冷やしなよ。犯人が身内だった事で本当は動揺しているんでしょ? そんな気持ちで……感情任せで戦ったら、あちらの思うつぼだよ。ティアを失いたくないのなら、今は自分の気持ちに正直にならないと。そして清算しないと戦えないでしょ。戦いの場面では、マイナスな感情は敗因にしかなり得ないんだから」


「ティアが殺されるのか? 呼斗に……呼斗にか?!」


「……うん」


 夜斗がまた何か言おうとしたところで、リビングから微かな物音がした。それは起きていなければきっと気づかないくらいのものだったが、人の体が打ち付けられるような鈍い音が確かに鳴ったのだ。

 何事かと二人が扉を開けると、壁際でぐったりとするティアの姿があった。そしてその向かいにいるのは――


「……呼斗」


「こんばんは、夜斗。久しぶり」


 暗闇に二つの赤い光が浮かび上がる。その瞳はゆらりと揺れ、二人を睨んできた。


「騒ぎを起こせば来てくれるんじゃないかと思っていたら、その前に来てくれるなんてね」


「お前……ティアに何を」


「んー? ……ああ、そいつ病み上がりなんでしょ? 殺るなら今じゃん。制御装置(リミッター)発動していない生身なら、更に殺りやすいしね」


「病み上がりなんでしょって、よくもそんな他人事のように……! 岩波あゆみの件だって、けしかけたのはお前だったんだろうが?!」


 忌々しげに呼斗を敵視するが、彼はどこ吹く風と言ったように笑顔を浮かべた。


「そう熱くならないでよ。……それに、そいつは隠してるみたいだけど、平気なフリして鎮痛剤だのなんだのどんだけの薬を服用してるのか分かってんの?」


「薬……?」


 顔を辛うじて持ち上げたティアは、振り返る夜斗に笑って見せた。アルが体を支えるがかなり辛そうな様子だった。


「大丈夫、だよ」


 ティアは声を発した途端に腹部を押さえ吐血した。血は、もう片方の手で口元を押さえた指と指の間から滴り落ち、床へ血だまりを作っていく。水よりも粘着質なピチャピチャという湿った血の音と、荒い息遣いが部屋に響いた。


「喋っちゃ駄目だよ! 今医務室から人を呼ぶよ!」


「大丈夫だから……」


 アルの言う事を聞かずに立ち上がろうとする。壁に手をついていなければきっと立ってはいられない。自分の体を支えるのがやっとなのだ。


「見なよ。さっきは薬を飲みに行く途中だったらしくてね。これが全部かは分からないけど、こんなにいっきに薬を飲むなんて尋常じゃないでしょ。……仲間だって言う割には、随分と関係性はお粗末じゃないか」


 呼斗の手からこぼれ落ちた大小様々な粒は、全て錠剤だった。数にしておよそ十はゆうに超えている。今まで気づかなかった事をアルと夜斗は責めた。


「違うよ、皆に非なんて全くない。これは私が黙っていた事だから、悪いのは全部私。だから、関係性は決して粗末なものなんかじゃないよ」


「分かってるんだよね? 鎮痛剤なんか使っても、その場しのぎにしかならないって事くらい。根本的な解決にはならない事だって。痛みを抑えつけるだけで、症状の改善はしないんだからさ。……退院が速いと思ったらこれだ。そして多量の薬によって得られた日常への代償は大きいね?」


「別にそれくらい構わない。何かでどうにかできるのなら、私はそれを使うよ。今回はたまたまそれが薬だっただけの事でしかない」


「へえ、随分と仕事熱心じゃないか。だけどお前、刹那主義もほどほどにしないと死ぬぞ? 全く、お前も夜斗も可哀想だな」


「可哀想だと? なんで可哀想だなんてお前に決めつけられなきゃなんねえんだ」


 夜斗が呼斗の嘲笑に睨み返した。


「弱味も見せられないような、そんな仲間に囲まれている事が可哀想だと言ったんだよ」


 しかし次の瞬間には、強張った表情から余裕綽々な笑みへと変わる


「仲間ってのは、弱味を見せ合う(・・・・)仲ってわけじゃねぇだろ。弱味を見せても(・・・・)いいかな(・・・・)と思える奴らの事だ」


 その言葉に諭されたのは、呼斗ではなく、ティアだった。


「……アホらしい」


 呼斗は足元に散らばる薬を踏みつけた。砕ける感覚に快感を覚えながらも、彼の苛立ちは収まらない。


「いつまでそいつらと仲間ごっこしてるのさ。虫唾が走るんだよ」


「ああそうか。なら嫌がらせに一生続けてやるよ」


「……茶番だね。はあ、夜斗を取り戻すのは無理か」


 そう吐き捨て背を向けた。窓を開け、引き止める間も無く高層階から彼は飛び降りた。あっさりと逃げに転じる呼斗を追う事も考えたが、今はそれどころではない。優先すべきは病人の事だ。


「……ティア、ティア!」


「大、丈夫……。あはは、せっかくの夏休みなのにごめんね」


「そんなんどうだっていいよ! 医務室の人がもう直ぐ来るからね……!」


「あはは、アルってばそんな顔しないでよ……。私が死ぬ未来が視えたんでしょ? ごめんね。視たわけじゃないんだけど、私も寝ていたら勝手に流れ込んできちゃったの」


 困ったように笑うティアの瞳は、だんだんと虚ろになっていく。光が小さくなっていくその目に映るのは、明日の風景だった。


「明日の朝までには戻って来るから……愛ちゃん達には、言わないでね」


「……っ馬鹿野郎が」


 泣きそうな夜斗に、ティアはただ笑いかけた。






 *






「おっはよーう!」


 玄関の扉が勢いよく開かれる。現れたのはティアだった。


「あ、ティア! どこ行ってたのよ。探したんだからね」


 愛花がティアの肩を掴みガクガクと揺らす。


「わー酔いそう。ジョギングわずだよ〜。ところでこれは新手のアトラクションかな?」


「ジョギング?! あんたそれ以上痩せてどうする気よ」


「何を言うか! 鍛えてるんですわ奥さん!」


「あらやだ。あたしも鍛えようかしら!」


「ぜひご一緒にマダム! シャルウィーダンス?」


「……いつまでその小芝居続くんだ?」


 夜斗のツッコミから小芝居は終了し、両者いつものトーンに戻る。


「いやぁ、今日も早朝から暑かった」


「熱中症に気をつけなさいよ?」


「ったく、昨日の今日で何やってんだティアは……」


「昨日の今日って?」


 激しく炎が燃え上がる夜斗の背景から目を逸らし、ティアは素知らぬ顔をする。しかし信太は純粋にその会話に疑問を抱いた。


「まあまあ。とりあえずティアと夜斗とボクは右京さんに呼ばれてるからもう行かなくちゃ。愛花と信太は、佐久兎と天が起きたら伝えといて。ボク達は右京さんの部屋にいるって」


「おう、了解」


「分かったわ。よく分からないけど、いってらっしゃい」


 怪訝な表情で二人は送り出した。






 *






「……諜報部がキメラの活動拠点を割り出し中。岩波あゆみが証言した場所は、もうもぬけの殻だったからね。しかし夜斗君の従兄弟だったとは……大丈夫?」


「問題ないです」


「……もうちょっと動揺するかと思ったけど、前よりもメンタルが強くなったね。刀の稽古をつけてもらいたいなんて言ってきた時には不安があったけど、これなら大丈夫そうだ」


「……そうだったんだ?」


 驚きにアルが夜斗を見る。


「俺はティアやアルとは違う。元から霊感がある訳でもねぇから、霊力では劣っちまう。その差を埋めるためには、霊体でも通用する強さが必要だと思ったんだよ。霊体になる事によって、肉体の強さが帳消しにされるわけじゃねぇからな」


「それに、経験によって霊力が強くなる事もあるからね。夜斗君みたいな努力家が、天才と肩を並べる事もある。それは賞賛に値するけど、ティアちゃん? 監督不行き届きは俺の落ち度だ。しかしそれにしても頑張りすぎだよ。健康を害し寿命を縮めるような事をしてまで頑張るなんて、俺は黙認できない」


 右京がティアを真っ直ぐ見据える。それは真剣そのもので、瞳には怒りも宿されている。しかしそれは隊長としての自分への不甲斐なさへの憤りだった。純粋に向けられた思いやりの言葉に、ティアはただただ申し訳なさそうに謝罪した。


「すみませんでした……」


「ティアちゃんは自分を大切にしなさすぎだよ。皆が良ければそれでいいと思っているんだろうけど、もっと周りを見て。視野の広いはずの君には、いつもたった一つだけ盲点があるんだ。……それは、自分自身の事だよ」


 ティアがいつも見落としていた事は、自分自身の事だったのだ。驚きを隠しきれずに、彼女は困惑の色を濃くした。


「ティアちゃんがいなくなったら、皆が悲しむ事を自覚してほしい。少し戦いから離れるべきだ」


 右京の言葉に、酷くショックを受けたようだった。自分の事を一番他人事のように感じていた彼女にとって、大切にする対象に自分の事は含まれていない。何年もずっとそれが当たり前だったのに、今更それをいきなり改めろというのは、到底無理な話だった。


「昨日の吐血は内臓が少しやられていただけで……この通り普通に生活もできています。私は皆と戦います。足手まといにはならないように努力します。……だから私をっ」


「駄目だ! ……休んでろ。完治するまでは、絶対に戦いに参加するな」


「ボクも夜斗に賛成。ティアは休んでいるべきだよ。足手まといになるならないじゃない。これじゃあティアの体がもたないよ……」


 有無を言わせぬ二人に、しかしティアは引かなかった。


「これが終わったら一ヶ月くらいは療養するよ。……だから、それまでは参加させてください」


「……う〜ん? どうして君は、そこまでこの戦いに執着するのかな」


 音もなく部屋に侵入してきた不審な男に、三人は身構えた。右京はその男を見ると眉をひそめ、彼の名前を呼んだ。


針裏(しんり)さん……」


「やあ仮編成右京隊の諸君〜! 本日は散歩日和……にしてはちょっと暑いっスかね」


 重い空気の中ヘラヘラと笑い、水をさす針裏に右京は溜息を漏らした。そして部下にこの人物の紹介をする。


「こちらは人外対策局基地内にある研究所の最高責任者、卜部(うらべ)針裏(しんり)所長。こっちの三人は……」


「おっと、名前は知ってるっスよ。ティアちゃん、夜斗君、アルフレッド君だよね? まあ気軽によろしく〜」


 右京隊の三人は口々によろしくお願いしますと言う。この飄々とした男は、組織内でも副局長に続く各専門機関のトップである。そして、日本本部に勤務する退魔師の一人だ。


「……それで、ティアちゃんはどうしてそんなに戦いに執着するの? 仲間が心配? 人の役に立てない自分に価値が見出せないの? それとも、岩波あゆみとその弟に責任を感じているとか? ……あるいは全部?」


 ティアはただ無表情で針裏を見据える。瞳には怒りも、それ以外の感情も含まれてはいない。底知れぬ何かが彼女の奥底で渦巻いていた。否、全ての感情を無で覆っているだけかもしれない。


「面白い目をしているッスよね。君が失った命は両親だけなのに、その何十倍もの命の死を見てきた目だ。独りよがりなくせに人懐っこい目だし、人を疑ってはいないくせに信じてもいない。集団に属しているくせにいつも君は独りだし、信頼を得ているくせにそれを望んではいない。……人間は寂しいから温もりを求める。だから温もりを求める人は集団に属する。でも結局、集団に属しているという事は温もりを求めているんだ。温もりを求めて集団に属しても尚、寂しくて温もりを求めているなんて矛盾しているよね?」


 問いかける声に、ティアは答えない。それでも構わずに針裏は続ける。


「君は矛盾を抱えすぎなんだ。別に沢山の悲しみを抱えている事に酔ってはいない。その代わりに救済心が強すぎるんだ。悲しみに同調するわけではないけれど、ただ救いたい一心で人助けをする。慈悲深い女神のようだよねぇ。……でもさ、汚濁のない人間なんているんスかね? 君を知ろうとすればするほど解らなくなる。光が強すぎて逆光のように影になり、真の姿が視えないんだ。天使でも悪魔になる瞬間があるものなんだから、その瞬間を是非とも見てみたいものッスよ」


「皆私を買い被りすぎです。物事を複雑化するから見えなくなる。素直で単純な人の方が、案外容易に真実に辿り着けるものです」


「素直で単純……ね。まあティアちゃんは戦いに出してあげてもいいんじゃないの、右京隊長。なんか気に入ったんスよ、矛盾をね」


「針裏さん……それはお断りします」


 目に見えぬ攻防戦は言い知れぬ緊迫感があり、見ているだけでも神経がすり減りそうだった。アルと夜斗は口を出さずに静観する。


「ところがぁ、どすこい!」


「どっこいです」


「実は、局長のお墨付きはもうもらってるんだよねぇ。君が口を挟む余地はないんスよ」


「……一体、何を考えているんですか」


「さ〜あね」


 右京の言葉に怒気が孕まれる。そして含みのある針裏の喋り口調はしばらく耳から抜けなかった。


「全ては神のみぞ知る、なんて言うけど実際は……上様(かみさま)の言う通り、なんスよね」

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