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旅人Aの憂鬱な現実   作者: 水無月稀兎
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今日の晩ごはんはカレーです。

数年ぶりに続きを投稿します。拙文ですがよろしくお願いします。

僕は相沢悠。ごく普通の高校生だ。好きなことはゲームをすること。

そう、今僕が一番ハマっているゲーム「エンジェルティア」をしているこの時間こそが至福の時間と言ったって過言じゃない。

約一年前にリリースされたこのゲームを僕はリリース当初からやっている。最初のうちは全然いなかったプレイヤーも今では全国、いや全世界に広がっているという。

いわゆる普通のMMORPGだが、自分で設定したキャラクター、そして経験値が身につけば特技も増える。ゲーム内でチームを組んで遊ぶことだってできる。なによりそういう仲間とチャットで交流できるのもこのゲームのいいところだ。

僕はちょうど目の前にいるモンスター一体を剣で斬りかかり倒した。モンスターを倒した分の経験値が貯まりちょうどレベルが上がった。そうだこの壮大なBGMも大好きだとふと思う。

ちょっと一息つこうと机の上においたマグカップを手に取りカップに入ったカフェオレを飲んだ。この一口だって僕には至福だ。ただのカフェオレだけど。

すると、階段を上がってくる足音がした。


「悠ー!晩ごはんできたよー!おりてきなさーい」

「わかったー」


家の二階のある僕の部屋の入り口でドア越しに母さんが声をかけてきた。トントントンと階段を降りる音がした。今日は母さんが新しいルーを見つけたからこれでカレーねと学校から帰ってきた僕に報告してきたのでカレーだ。いい匂いが一階からなんとなくしてくる。僕はダンジョンから広場へと戻り、席を立った。



「…でね、今日室長に言ったのよ!自分の席ぐらい自分で整理してくださいって!そう思うでしょ!」

「俺にも言われてるようで刺さるなそれ。」

「やだ、あなたには言ってないわよ。もちろん綺麗にしてるでしょうから」

「も、もちろんしてるしてる。大丈夫」


もっぱら晩ごはんの時間は母さんの話が大半を占めている。今日は室長さんの机から資料を探すのに一苦労だったらしい。母さんは何かとおしゃべりでいろんな話をしてくれる。父さんも時々話をしてるけどほとんど母さんの独壇場だ。

父さんは母さんの話を聞きながら気まずそうにしていた。多分自分の職場の席を思い出したんだと思う。母さんから威圧の笑みが父さんに向けられている。まるで蛇に睨まれたカエルのようだ。ドンマイ父さんなんて思いつつカレーライスを頬張る。今日のカレーはなんかスパイスがきいてるのかピリピリする。


「そういえば悠、今日学校どうだった?」


父さんが話題を変えたそうにこちらを見ている。こういう時の父さんは内心めちゃくちゃ焦っていることを隠してるようだけど全く隠せてない。父さんが焦る時なんかは顔に助けてくれと書いてあるような顔をしているからだ。母さんにもきっとばれてる気がする。僕は口の中のカレーライスを飲み込んだ。


「まあ、いつも通りだったよ」

「そうか、よかった。悠も学校の話たくさんしていいんだからな。」

「うん。話があればするよ」


僕はまた一口カレーライスを頬張った。学校の話ができるような話題は僕に持ち合わせていない。でも、父さんが話題を変えたそうにやっぱりこちらを見ている。母さんに整理整頓してないのばれたくないんだろうな。母さんの顔をチラリと横目に見ると、母さんの顔はさっきよりも広角が不気味に上がってる。何か言いたげの顔だ。これでもし僕が父さんの味方をすれば僕にも威圧の笑みが向けられるのは目に見えている。僕は父さんに心の中で謝ってカレーライスを飲み込んだ。


「それより父さん、机の上に資料山積みにしてたらまた母さんに言われるよ。部下のお姉さんに怒られちゃったって前言ってたじゃん」

「悠それは言わない約束だっ…」

「部下のお姉さんに何ですって?」

「えーと、何だったかな…」

「お母さんじっくり話が聞きたいなあ?ねえお父さん?」

「はは、はははは…」


広角が不気味に上がった母さんを止められるものはここにはいない。母さんは我が家の中では最強だから。エンジェルティアのボスだって絶対恐怖する大蛇だと僕は思ってる。そんなこと直接言えるわけはないけれど。だって僕も父さんも蛇に睨まれる側のカエルだから。僕はここから退散しようと席を立った。


「えーとじゃあごちそうさま。このカレー美味しかったよ母さん。」

「え、悠もう部屋に行っちゃうのか?」

「あら、ホントに?このカレールー買ってよかったわね。カレーのルーって新しいのあるとついつい食べてみたくなって買っちゃうけど失敗すること多いのよね」


母さんの喜んでいるような声を聞きつつ僕はカレー皿とサラダを乗せた皿をシンクまで持っていった。母さんと父さんはさて、またエンジェルティアをしよう。次はどこのダンジョンに行こうかな。欲しい武器があったからコインも貯めたいし、経験値も貯めておきたいな。シンクの中の皿に水を張りながらエンジェルティアのことを考えた。僕は母さんの後ろを通ってリビングのドアを開けた。なんとなく口の中がまだ今日のカレーの味でピリピリしてる気がする。


「さーて、お父さん?いろいろ聞きたいなあ、部下のお姉さんになんて言われたの?」

「えーと、また今度な母さん、まだ母さんの話聞きたいなあ」

「私の話は終わったでしょ、はやく父さんの話をしてくれる?」


父さんが誤魔化し続けようと試みていることを背中で感じながらリビングを出た。あの大蛇からは逃げられないことは父さんが一番よくわかってる。なんてったって夫婦だから。今は捕食する側とされる側だけど。僕はゆっくりドアを閉めた。

(父さん、どうかお達者で…)

階段をあがり、自分の部屋のドアを開けた。またエンジェルティアを始めよう。ゲーム用に買ってもらった椅子に深く腰掛ける。ふぅとため息が漏れた。


「そうだ、大蛇がボスのダンジョンあったな。あれにしよう。」


僕はまた広場からダンジョンを選ぶ画面を選択する。広場のBGMから冒険のBGMと曲が変わる。そうそうこの変わる時待つ時間も至福の時間だ。僕はまたダンジョンへの冒険を始めた。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

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