訪問! メルちゃんのお宅 6
今回はちょっと危険かもしれません。
「あ、あの、静流さん?」
「はい?」
巡の上ずった呼びかけに、静流は変わらぬ調子で返事をした。しかしその右手は、ごそごそと巡の腰元でせわしなく動いていた。
すぐに指先が巡の衣服をかきわけシャツの下にもぐりこみ、直接素肌に触れる。
「ひゃっ!?」
巡は右のわき腹あたりに冷たい手が触れるのを感じ、一際高い声を上げてしまう。
こそばゆさを感じ体をよじらせるが、静流の手はおかまいなしにさらに上へ上へと侵入を続ける。
「すごいわ……、吸い付くようなこの肌の手触り……」
うっとりとそう呟く彼女の手は、やがて控えめな胸のふくらみに到達する。
そこで手は一旦上昇をやめると、乳房全体を、その柔らかい感触を楽しむようにゆっくりと揉みしだいた。
「ち、ちょっと、な、なにを……ひっ!」
抗議の声を上げた巡を黙らせるように、指先が敏感な突起を摘み上げた。
強い刺激を受けここにきて危険を感じた巡は、両腕を伸ばして静流を押しのけようとする。
しかしそれを見計らっていたかのように、静流の体が体重をかけるようにして巡の上に覆いかぶさってきた。
男の時でさえ非力な巡。すでにソファの上でおかしな姿勢になっていた彼に、腕の力だけでそれを押しのける術はなかった。たちまち仰向けになった上に馬乗りされるような体勢になる。
「こ、困りますって! こんな!」
「いいじゃないですか少しぐらい……」
「いやもう少しってレベルじゃ……!」
「あと少し……、あとほんのちょっとですから……」
静流は口ではそう言いながらも眼前で妖しく微笑み返すだけで、一向に体をまさぐる手の動きは止まらない。
それどころか手つきはさらに激しく、大胆になっていく。
どうしてこんなおかしなことに……、とソファに倒されながらも一体今がどういう状況なのか巡の脳が急いで分析を始めた。
結論はわりとすぐに出た。巡はある事を思い出したのだ。腐っても(べつに腐ってはいないが)彼女は、あのメルと血を分けた姉妹なのだということを。
……やばい、本気でこの人危険だ! 一体どうすればこの場を……。
と、その時追いつめられた巡の頭に一つの名案が閃いた。
――あっ! そうだ、確か静流さんは男の人が苦手だって……。なら、ここで腕時計を装着して男に戻れば……。
巡は、さっきメルが「お姉さまは体を触られでもしたら、それこそ卒倒しちゃう」と言っていたのを思い出したのだ。
そもそもそのせいで今男子の制服を着たまま女の子をやっているのだから。
もうこの際、本当は男だったとかそんなこと知ったことではない。
ならば、と巡は意を決してポケットをまさぐりどうにか腕時計を取り出し、器用にも片手で腕に輪を通しパチンと止め具を鳴らした。
その瞬間、カッとまばゆい光りが身を包み――。
「あら? あらあら?」
当然すぐにその変化に気付いたであろう静流が不思議そうな声を上げる。顔にありありとハテナマークが浮かんでいるのが見て取れた。
一方の巡は、さあ、どうだ、これで……! と心の中で勝ち誇った。
これで間一髪なんとか助かったぞ。とそう胸をなでおろしたのもつかの間。
静流は何事もなかったかのように愛撫を再開した。
……あれ? おかしいなあ……、もしかして気付いてないのかな?
「えー、あの、静流さん?」
「はい?」
「あ、あの、僕、実は…………男なんですけど!」
「……ええ、それで?」
「え、いや、だから…………あれ?」
何の反応もなかった。
てっきりきゃーっと叫び声でも上げて一目散に逃げ出すかと思ったのに。
――ま、まさか……。
これ以上ないほどに嫌な予感。というか、巡の中ですぐにその予感は確信に変わった。
そう、メルがそうであるように、彼女もまた怪しい性癖の持ち主である事を家族に隠しているということ。
……そうか、姉妹そろってバイなんだ! これで謎が解けた。よかったよかった。
これにて一件落着、と一段落したところで、巡はぼっと火が出るほどの勢いで顔が赤くなっていくのを感じた。
すぐに自分が窮地に立たされていることを自覚する。
さっきまでは性欲皆無の女の子モードだったからよかったものの、今はそういうわけにはいかない。
いたって健全な年頃の男の子が、二人きりの部屋で年上の綺麗なお姉さんに押し倒されているのだ。
まともでなかった神経が、急にまともになった。普通なら喜ぶべきことだが、ことこの状況に限っては大変な事態なのである。
早速至近距離で思いっきり嗅いでしまった女性の匂いが、麻薬のようにくらくらとめまいを起こさせる。
と同時に体が徐々に火照りだし、ドクドクと心臓が血液を送り出す速度が上がった。
「でもちょっと驚いちゃいました。だけど心配しないで。夢留さんが連れてきたお友達というのならきっとなにかの魔法がらみなんでしょう?」
普通に考えたら、いきなり男女が入れ替わっただけでも驚いてそれどころじゃなくなるのでは? という巡の最後の望みも絶たれた。
それどころか、いや、あろうことか、静流は巡の股間に手を伸ばしていた。
「あらぁ、ここ、固くなってる……」
そして股間のわずかに膨れ上がった部分を、服の上から撫でるようにさすり上げる。
極度の緊張はその優しい愛撫を受けるとともにだんだんと解けていき、代わりに急速な速さで体が強く熱を帯び始める。
かつてないほど鼓動が強く脈打つのを感じ、それにつれ呼吸が荒く乱れていく。
静流の手が動くたびに体の中心から痺れるような気持ちよさが全身に広がった。それが脳に達すると、さらに興奮物質が分泌され快感が増幅される。
他人の手で触れられるというその初めての感覚と快感に、巡の頭は興奮で真っ白になりまともな思考ができなくなっていた。
もはや拒絶の言葉を口にすることもできず、代わりに漏れるのは荒く乱れた吐息。
さっきまで拒否していたはずの自分はそこにはなく、もうこのまま身を委ねてしまいたい、という甘い誘惑と必死に戦うことで精一杯。
そんな巡の反応を楽しむように、静流は無言のままズボンの上からその形を意識するように指を、手のひらを上下させる。
優しく、優しく、時に強く。静流の手はその一層固さを増した膨らみが、幾度か強く跳ねるように脈打つのを感じ取った。
しかしそれも長くは続かない。
巡が小さくかすれた声で何かを訴え始めた。
ふう……。
あれ、もしかしてこれアウト?
あとで改稿するかもしれません。