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魔法少女めぐ☆める  作者: 荒三水
訪問! メルちゃんのお宅
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訪問! メルちゃんのお宅 2

 息を切らして昇降口までやってくると、いつの間にか背後にメルの姿がなかった。

 すでに朝のHR開始の時間が過ぎていたため、あたりに人の影はない。これ幸いにと巡は鞄から洗濯済みのパンティが入った小さな紙袋を取り出し、(なぜ紙袋なのかは巡自身にもわからない)陽夏の下駄箱にラブレターよろしく忍ばせる事に成功した。

 なんかこれすっごい嫌がらせかもしれない、と巡は軽く罪悪感にさいなまれつつも先を急いだ。


 一仕事終えた顔で教室に向かうと、肝心の教師が遅刻していた。そのため二年B組はがやがやと騒がしくいぜんとして無法地帯だった。 

 教室に入った巡の目を引いたのは、黒板にいっぱいにでかでかとチョークで書かれた文字。


『しばらく修行の旅に出る。探さないでくれ 美道』


 ふ~ん、と軽く流して席に向かった巡の目に飛び込んできたのは、さっきまで後方をついてきていたはずのメルとクラス委員長の花奈がなにやら言い争う姿だった。


「だから! 大きいにこしたことはないでしょ!?」

「クリちゃんわかってない! ただおっきいだけのおっぱいなんて……、デカパイ=バカ=ヤリマンっていうのはずっと昔に証明された定理なんだよ!?」

「ヤっ、ヤリ……。あんた、もうちょっと口を慎みなさいよ!」


 あーやだやだ、どっかよそでやってくんないかなぁと巡は目を合わせないように席についた。なんだか二人でヒートアップしているようなので気づかれないかと思っていたが、 

 

「めぐるちゃんもそう思うでしょ!?」


 甘い、見えているぞとばかりにメルが急に話を振ってきた。


「まさかのキラーパス……」

「あっ、ごっめ~ん。めぐるちゃん超がつく貧乳だったんだっけ」

「か、関係ないよ。第一僕は男だから」

「そうだっけぇ~、そういえばそうだったよね~」


 二人のやり取りを見ていた花奈がいぶかしげに口を挟んだ。


「東西くん、あなた本当にメルの魔法解けたの? なんかあやしいんだけど」

「あ、あやしいもなにも見ての通り男だよ」

「はぁーあ、つまらない。せっかく可愛いペットにしてあげようと思ってたのに」

「クリちゃん、言っておくけどめぐるちゃんはすでにわたしのペットだからね?」

「いや違うよ!」

「じゃご主人様?」

「なんで主従関係築こうとするかなぁ……」


 腕時計の着脱による性別のコントロールについて花奈は知らない。

 メルからわたしはちゃんと知ってるんだからね、とでも言いたげな視線を受け巡がうんざりしていると、ガラガラとドアを開けて担任の久世が入ってきた。


「おらー、静まれー、ブタどもー」


 遅刻にもかかわらず悠々とした足取りの久世は、ふと黒板の文字にちらりと目をやると、


「お、ラッキー」


 それだけ言って何事もなかったかのようにHRを始めた。



◇ ◆


 

「ほら、めぐるちゃん早く!」

「え~、本当に行くの?」


 放課後、最後の授業が終わると同時にメルは巡をせきたてた。朝ちらりと口にした言葉は冗談ではなく、彼女は本気で巡たちを家に招待、いや連れ込む気らしい。


「すぐにヒナちゃんも回収しないと!」

「回収って……。そういえば陽夏ちゃんがどこのクラスか知ってるの?」

「一年C組出席番号一番!」


 そう即答され、いまのは愚問だったなあと巡は少し反省する。この勢いだとさらに細かい個人情報まで把握してそうだ。

 メルに腕をつかまれ半ば引きずられるようにして一年C組へとやってくるも、陽夏の姿が見当たらなかった。

 メルは下級生の視線をあびつつ大またに教室に入っていくと、手近な女子生徒を捕まえ標的の行方を尋ねた。


「赤桐さん、急いで帰ったみたいですけど……。すごく慌ててました」


 すでに逃げられていた。

 よかった、これで拉致イベントは中止だ、と巡が胸をなでおろしていると、隣でメルが不敵な笑みを浮かべていた。


「ふっ、逃げてもムダムダ。リリちゃんに乗って地の果てまで追いかけるからね」

「ちょっと怖いよ、やめようよそういうの……。陽夏ちゃんなんか用事があったのかもしれないし」

「え? う~ん……、あ、そっかぁ! ヒナちゃん今日生理じゃしょうがないよね」

「いや別にそうとは言ってないけど……」


 必要以上に大きな声で発言されたメルの言葉はクラス中の生徒に丸聞こえだった。


 「……なに? 陽夏ちゃんが生理だと?」「だからあんなに急いで……」「それに今日ずっと様子が変だったしなぁ」 


 あちらこちらでひそひそ声が聞こえる。主に男子の。

 陽夏ちゃんはきっとクラスのアイドル的存在なんだろう。あの可愛さなら当然かもなぁ、でもとんだ災難だなぁと巡は一人で納得していた。


「あっ、もしかしてヒナちゃん、わたしとめぐるちゃんに気を遣ったのかも」

「そういう風に思えるんなら幸せだよね……」

「やっぱ三人でするのはまだ早いもんね。まず二人で段階を踏んで……」

「じゃあね! 僕もう帰るから!」

「じゃ二人でメルちゃんのお家へゴー!」

 

 スキあらば逃げ出そうと機会をうかがっていた努力むなしく、巡は軽く腕をキメられ未知なる空間へと連れ去られることになった。


次回たぶんメルの○○が登場します。

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