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魔法少女めぐ☆める  作者: 荒三水
お兄ちゃんは大魔法使い?
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お兄ちゃんは大魔法使い? 5

「あの……そもそも魔法ってどうやったら使えるようになるんですか?」


 いまいち実感の沸かない巡は、当然の疑問を発した。目の前にいる中年男性はどうにも怪しい。


「う~ん、細かい原理とかは置いとくとして、美少女である事が大前提だね」

「それ自分がペテン師って告白してないですか?」

「え? ああ、お兄ちゃんは別格だよ。そもそもお兄ちゃんが魔法に目覚めたのは、忘れもしない童貞のまま三十歳を迎えたあの日……」

「三十って……、今いったいいくつなんですか! 母さんが今三十五だからどう考えても五十オーバー……? いい年こいてこんな……」

「い、いやいや、ま、魔法使いに年齢なんて関係ないよ? うん。い、今こそ青春を謳歌してるんだ。それに老化を和らげる魔法かけてるから若く見えるのも無理はないし。……え? にしても童顔だって? 童貞クサイとか言わないで。泣いちゃうよ?」


 巡の中で道程の評価が童顔小型中年男性からロリコン童貞変態ジジイにクラスアップした。

 母親の年齢から逆算しても道程の実年齢が五十過ぎであろうことは間違いない。

だが栄養がたっぷりつまってそうなふっくらとした丸顔、それに妙に甲高い声はどう見積もっても三十代、下手すると二十代に見えなくもなかった。


「てことは道程さんが男性で唯一魔法が使えるってことですか?」

「男は基本使えないけどね、お兄ちゃんと似たような境遇の同志はいるよ、四天童っていう四人の童貞とかね。みんなお兄ちゃんより年下だけど、結構な使い手だよ」

「それは……なんかすごそうですね……。そのほかは美少女限定ですか? でもなんで?」

「だって美少女しか入学させないし教えないもん」

「……教えれば誰でも使えるってことですか?」

「全然ダメな子もいるからやっぱ人によって適正あるよ。でも大体血縁だね。そのへんで女の子をさらってきたりするわけじゃないから、入学する子達も身内の紹介とかがほとんどだし」

「僕は誰にも魔法の使い方とか教えてもらってないんですが……」

「多分メルちゃんに魔法をかけられたショックで目覚めたんだと思うよ。君はきっと天才だね」


 巡はてっきりメルの呪いのせいだと思っていたが、そういうわけではなかったようだ。

 女の子になれば魔法力が覚醒する。メルは巡の中に眠る魔法の力を感じ取ったと言っていたが、果たして本当にそこまで見越していたのだろうか。


「でさ、さっきのお仕事の話なんだけど。どうかな?」


 道程がそれた話を元に戻す。どうしても巡をスカウトしたいようだった。


「う~ん……それって具体的にはなにをするんですか?」

「ああ、そうだね、え~っと」


 そう言って背後の棚から大きめのファイルを取り出し、綴じられたリストをぺらぺらめくってみせる。


「これが要注意人物のリスト。ちょっと度が過ぎるかなって感じのね。この子たちをおとなしくさせてほしいんだ。お兄ちゃんちょっと怒ってるよって。あんまり反抗するようならおしおきするんだけど」


 最初に出てきたのは名前や生年月日から趣味やスリーサイズまで記入されたオリジナルの履歴書。

 続いて顔のアップや全身を前後左右から撮った写真、制服バージョンや普段着バージョン、シチュエーション別などと書かれて分類された写真がアルバムのように綴じられていた。

 中には被写体が明らかにカメラを認識していない盗撮らしきものもあった。

 ざっと見たところ三、四十人はいそうである。そのどれもが美少女ぞろいだ。

 

「これは……す、すごい……」

「まあまずはこの危険度のところを見てもらって、一番簡単なEランクぐらいの子からやってもらおうかと」

「ランク付けとかしてるんですね……。どうやって決めてるんですか?」

「基本的には魔法力の強さと、どういった使い方をしてるかだね。後は性格。どんな問題行動を起こしたか、または今後起こしそうかとか、そのへんを総合的に判断してのランクね」

「ふ~ん……」


 ……Eランクが一番簡単ってことは、EからAまで格付けがあってAランクが最高かな? 

 ずいぶん幅があるみたいだけど、最高ランクにされる子って一体どんな子なんだろうな……。

 道程に渡されたリストをパラパラめくっていると、不意に見慣れた笑顔が視界に飛び込んできた。

 

 

 潮見夢留 愛称 メルちゃん 危険度SSランク


 ……ヤツだ。もしかして、とは思っていたけど、やっぱりいた。

 しかも危険度SSって……。Aが最高じゃなかったのか……。 

 

 巡は一瞬手を止めたが、履歴書のどこかの欄にオ○ニーというあり得ない単語が記入されている(おそらく本人の字)のが目に入ると反射的にページをめくった。 

 痛々しいプロフィールを直視することができなかったのだ。

 

「……危険度SSって、要するにどのくらいなんですか?」

「ええと、間違いでも魔法を教えた事を一生後悔しそうなレベルかな……」

「後悔っていうか全人類に対して謝罪すべきですよ……。さっきなんで注意しなかったんですか? ……SSランクを」

「……ほら、これぐらいの女の子って傷つきやすい年頃じゃん。お兄ちゃんだって嫌われるのやだし。とくにメルちゃんなんてお兄ちゃんがなに言っても聞かないし……。もう無理かなって」

「傷つきやすいって言うか……、逆にこっちが大怪我します」


 ……ダメだこの人。

 これ以上メルのような災厄を誕生させないためにも、この男を始末した方が世のため人のためになるんじゃないかと、ふとそんな考えが巡の頭をよぎるのだった。

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