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魔法少女めぐ☆める  作者: 荒三水
お兄ちゃんは大魔法使い?
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お兄ちゃんは大魔法使い? 4

「お金、ですか。具体的な金額って……」

「そうだねー、施術にカウンセリング、アフターケア込みでざっとこのぐらいかな」


 道程はぴっと指を三本立てる。


「さ、……三百円」

「巡君。お兄ちゃんそういうベタなボケはあまり好きじゃないんだよなあ」


 ついさっき凍てつかんばかりのノリツッコミをした道程が呆れ気味に言う。


「三十円か。細かいのあるかな……、おつり出ます?」

「出ないよ。……こういうとき普通金額上げるよね?」

「ってことは三千円……。……ゴクリ」

「いや、ゴクリじゃなくてね」 

「……さ、三万円ですか!? まったくしょうがないですね! じゃあ毎月百回分割払いにしてください!」

「いや三万じゃないし。やっぱり三百円ずつしか払う気ないのね……。ていうかなんでキレ気味なの?」

「あ、保険証あるから三割で九千でいいんだ、よかった」

「保険とかきかないからね。勝手に安心しないでね」


 なんとか値切ろうとする? 巡にラチが明かないと思ったのか、ついに道程ははっきり金額を口にした。


「特別サービス。お友達価格で端数切捨てぽっきり三千万。用意してもらえるかな?」

「さんぜんまん……? それって月三百円だったらどのくらいかかります?」

「……君は何世代にも渡って払い続けるつもりなの? 言っとくけど分割払いは不可。施術は前払いで入金してからね」

「…………それは円で?」

「そうだけど……。何? どっかわけのわからない通貨で払うつもりだった?」

「そんな……」


 あまりにも法外な金額にがくっと意識を失いかける巡。

 日々の暮らしにも事欠いているような彼の家に、当然そんな大金があるはずもなかった。

 衝撃の宣告でお通夜ムードになりかけた時、先ほどから一言も発せず巡の食べかけをおいしくいただいていたメルが口を開いた。


「あれ? お兄ちゃん、授業でやったときとかそんなのパッパと直してくれたよね?」

「えっ? どういうことですかそれは」

「そ、それはね。お兄ちゃんの大切な『妹』たちだからね、うん、タダなんだよ」

「じゃあお兄ちゃん、メルのお願い。めぐるちゃんを元に戻してあげて」

「い、いくらメルちゃんの頼みといえどこれは……」

「えっ、そんな……。わたしお兄ちゃんのこと嫌いになっちゃうかも……」

「い、いやほら、それはあれだよ、ほらメルちゃん!」


 道程は慌てふためきつつ、手でなにかのジェスチャーをした。 

 そしてメルが道程と視線を合わせること数秒。

 彼女は急におとなしくなり、


「……うん。わかった。今日はもう帰る。たまきちゃんはいないしめぐるちゃんとは明日会えるし」


 そう言ってゆっくりとソファーから立ち上がった。

 メルの不気味なまでの変わり身を見て巡は追及する。


「……ちょっと、なんですか今のサイン」

「えっ!? い、いやあれだよほら、メルちゃん、次はカーブ行くよ!」

「そんなのでごまかされないよ! なんなんですか!?」

「じゃあねめぐるちゃん。夜電話するねっ」


 巡の問いかけに答えることもなく、メルは笑顔とともにそういい残しドアから出て行った。 

 メルにしては引き際があっさりしすぎていたので、巡は余計に疑心を抱いた。

 道程は自分にはメルのあいさつがなくて弱冠へこんでいた風だったが、仕切りなおすようにして話を切り出した。

 

「……ふう、邪魔者はいなくなったしこれでゆっくりお話ができるね」

「ものすごく不自然な去り際だったんですけど一体何が……。……あの、どっちにしろ僕にはそんな大金絶対に払えないです。ただでさえ貧乏なのに……」

「うん、実はそれは知ってる。環ちゃんが入学のね、面接に来たときに聞いたから」

「それ、知っててわざと……」

「だからね、そんな巡君に今ぴったりのお仕事があるんだよ」

「……なんですか仕事って」


 道程は「うーんとね……」と少し言いにくそうにしている。

 何を言い出すのか、巡は嫌な予感しかしなかった。

 

「実はさ。卒業した女の子達、魔法使いすぎて目立つなって言ってんのにやりたい放題だから困ってるの。もちろん野放しにはしてないよ? 監視役をつけたりして様子見たりしてるし。でも最近人手不足で、その監視役が足らないんだよね。だから巡君にその手伝いをして欲しいなあ、なんて」

「……教育がなってないですね。それは道程さん自身が責任持ってやるべきなんじゃないですか?」

「お兄ちゃんはね、忙しいの。いろいろ運営したり商売したり授業したり盗撮したり。それにお兄ちゃんが直接叱ったりとかさ、ほらあんまり印象よくないし、角が立つしね」

「……はあ。でもそれをなんで僕に? だいたい僕なんかにできます?」

「面接に来た環ちゃんもそうだったんだけどね。やっぱ南ちゃんの血筋かな、すごいよ君たち。ちょっと見ただけでもメルちゃん並の資質を感じる。きっと優秀な魔法使いになれるよ」


 魔法……。ついさっきも家でメルちゃんを吹き飛ばしたあれのことかな……?

 でも全然無意識だったしなあ……。それになんかどんどん話がおかしな方向へ向かっている気がする……。

 当初の予定と大きく変わりそうな流れに巡は戸惑いを禁じえなかった。

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