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魔法少女めぐ☆める  作者: 荒三水
メルちゃんのお宅訪問
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メルちゃんのお宅訪問 7

「さあて、たまきちゃんの居所もわかったし、わたしはこのへんで」


 つまらなさそうに話を聞いていたメルが、そう言ってさっと出て行こうとする。

 しかし巡はターミネーターをこのまま行かせまいと後ろから腕を掴んだ。


「待った。……それで環をどうするつもり?」

「ふふ。やだなぁ、そんな、妹と認識できないぐらい顔を変形させるとかやらないよ」

「当たり前だよ! そういう発想ができる事自体危険すぎ!」

「ちょっと顔を確認するだけだよ。わたしにとっても妹になるわけだから」

「いやならないでしょ!」

「え? なるよね?」

「真顔で聞き返さないでよ! ……じゃあさ、僕もその学校連れてってくれないかな。お兄ちゃんって人もそこにいるんでしょ?」

「べつにいいけど、お兄ちゃんに会ったとこで何するの?」

「だから! その人に僕が男に戻れるよう頼むって話だったでしょ!」

「あっ、そっかぁ~、わっすれてたぁ~。ごめ~ん」

「今とぼけようとしてたよね……」

   

 言動がおぼつかないメルをたしなめると、なんだかんだで結局これから魔法学校へ向かう事になった。

 なんだか面白そうだと駈も行く気になっていたが、ウザいし一緒にいるところを外で見られたくないのでスルーし巡とメルはマンションを出た。

 路上に出た二人を沈みかけの夕日が照らす。

 帰りが遅くなると夜になってしまうなと思ったところで、どうやって行くのか、そもそもその学校がどこにあるのか全く知らないことに気づいた。

 

「メルちゃん。ところでなにで行くの? 場所どのへん? 僕お金ないからタクシーとかは……」

「心配ご無用。あっという間に着くよ」

 

 巡の質問をさえぎってメルは自信満々に言う。

 彼女はいつの間にか自分の背丈よりやや短めの棒状のもの、例えて言うならトイレの詰まりをスッポンスッポンやって解消する時に使うアレのようなものを手にしていた。

 結構な長さだが、メルは手なれた様子で扱う。

 銀色に光沢を放つそれは、妙に高級感が漂っていた。


「……えーと、なに、それ」

「これ? ホウキのリリちゃんだよ?」

「……ホウキ? その大きな吸盤みたいな先端、どう見てもはき掃除できないよね? それになんかかわいい名前つけてるみたいだけどすごい鉄っぽくて無機質なんだけど」

「まえはちゃんとした竹ボウキだったんだけど、ちょっと激しい使い方したらボキッていっちゃって。頑丈に改造してもらったの」

「一体どんな使い方したの……?」

「え? それは……やだ、恥ずかしい」


 そう言ってお茶を濁すとメルはリリちゃんとやらにまたがる。

 わざとらしく足を上げてパンチラし、巡の反応をうかがうのも忘れない。

 

「ほら、めぐるちゃんも早くうしろにまたがって」

「……ねえ、まさかそれで空を飛んでいくって言うつもり?」

「そうだよ?」

「ほ、本当にそれ飛ぶの? なんか頼りないし、風圧とかで振り落とされそうな予感がするんだけど」

「大丈夫だよ。抵抗調整に重力制御機能だってあるし。いちおう魔法でもカバーするし」

「よくわからないけど大丈夫なのかな……。怖いなぁ」


 いまいちメルを信用しきれていない巡は不安を隠せない。

 だがいかがわしい物体にまたがっていかがわしい事をしようとしている姿を通行人に見られたら嫌なので、仕方なく言うとおりにすることにした。

 おそるおそるメルの後ろのスペースにまたがる。

 

「……なんかこの棒ところどころ突起があるんだけどこれ何?」

「じゃあいっくよ~! リリちゃんゴー!」


 投げかけられた疑問を無視し合図をかけるメル。

 その瞬間、ふわりと体が持ち上がり二人の体が宙に浮いた。

 

「おわっ、すごい! ホントに浮いてるよ!」

「えへへっ、すごいでしょ! でもリリちゃんの力はこんなもんじゃないんだから」


 メルがそういった途端、ホウキが小刻みに震えだした。

 ブルルルルと体と棒の接着部分が振動する。

 

「ち、ち、ちょっとストップ! な、なにこれ!」

「何ってバイブレーション機能だよ? 突起をうまく使ってね……あんっ」

「止めて止めて! ダメだってこれ! あぁっ」

「恥ずかしがらないで声だしていいよ? ほら! ちょっと乱暴にしても今度はそう簡単に折れたりしないから!」

「こ、これのせいで折ったの!? ……ってもういいから! 早く、ストップ!」


 何度も大声で催促することでやっと振動は止まった。

 ホウキ全体をパワーオフにしたようで、二人とも浮き上がる力を失いゆっくりと地に足が着く。

 後ろを振り返りながらメルが残念そうに言う。 


「もう、これが一番すごい機能なのに……。めぐるちゃんには刺激が強すぎたかな?」

「いっつもこんなの乗ってるの……?」

「つまりそれってわたしにオ○ニーの頻度を聞いてるってこと? めぐるちゃんいやらしい」

「……どうでもいいけどさ、こんなの乗ってたら公然わいせつとかそんなんにひっかかりそうじゃない? それに未確認飛行物体だとかなんとかで騒がれるんじゃないの?」

「大丈夫。ステルス機能付きだから、飛んでる時とか一般の人には見えないよ」

「そっちの方がバイブレーション機能より絶対すごいよね……」

「そんなことないよ、だって強弱調整できるんだよ? あとすごいのがオート機能っていって……」

「もういいから早く行こう!」

「早くイキたいの? じゃあフルパワーで」

「バイブはもういいから!」


 再びホウキが浮き上がり、今度は振動することなく一気に高度を上げた。

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