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魔法少女めぐ☆める  作者: 荒三水
転校生は美少女?
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転校生は美少女? 7

その後も巡は変態魔法使いたち(主にメル)にいじられつつも、なんとか無事に放課後を迎えた。

 メルは教科書がないと言っては巡の隣にべったり寄り、校内を案内して欲しいと言っては空き教室に連れ込もうとしたり人気のない女子トイレに引きずりこもうとしたりで、とてもアグレッシブな一日を送った。

 一方の巡はすでに疲労困憊だった。メルの執拗なアタックに加え時おり花奈や美道と繰り広げられる争奪戦。

 美少女転校生と初日からいちゃいちゃする自分に向けられるクラスメイトの嫉妬や殺意。

 普段それほど目立つことのない彼にとっては針のムシロに座る思いだった。

 唯一の救いは巡の変化に気づいたものがいなかったことか。

 巡の周囲が騒がしい事に不思議そうな視線を送ってくるクラスメイトもいたが、それでも彼が性転換している、などとは夢にも思わないだろう。

 とりあえず現段階では誰もそのことに言及してこない。これも普段からおとなしく女々しい巡の態度のおかげか。

 

 最後の授業が終わって気が抜けるのもつかの間、巡は隣のメルに問いかけた。

 

「メルちゃん、放課後になったけど僕を戻してくれるって話、覚えてるよね?」

「もっちろん!」


 メルは元気よく答えた。この反応なら知らんぷりはされなさそうだと巡は安堵する。 

 だがメルが人差し指を口にあて、なにやら思案するような顔をしだすと一気に不安が押し寄せた。


「……でもぉ、よ~く考えたら今日はまだいいよね」

「な、何で?」

「だってめぐるちゃんも帰ってからその体でじっくりオ○ニーとかしたいだろうし」

「な、なんてこと言うんだよ! そ、そ、そんなのしないよ!」

「えっ!? 女の子の体フリータイムでさわり放題いじり放題なのに!?」

「なにそのすっごい驚きようは! ……大体今はとてもそんな気分になれないよ」

「あっ、そっか。今は二次元のおじいさんにしか興味ないんだっけ。残念だね」

「うう……」


 がくんとうなだれる巡。

 だがそのおかげでいつもは女の子とはロクに話もできない巡が、メルや花奈とある程度渡り合えているのも事実である。

 

「じゃあそれはいいとして、お兄ちゃんにお願いしに行って、すぐ男の子に戻れるかどうかはわからないんだけど」

「うん」

「どのみち戻る前に両親の同意が必要なの」

「え? なんで?」

「それは未成年なんだから当然でしょ?」

「女にする時は問答無用だったよね!? なんで今度はそういう手続きがいるの!?」 

「きゃっ、めぐるちゃんスルドイっ! 抱いて!」

「なにごまかそうとしてるんだよ! 誰だっておかしいと思うよ!」

「ごまかさないで抱いて!」

「うるさいよ、声がおっきい! ……言っとくけど家には父さんしかいないよ? 母さんはでていっちゃったから」

「ふ~ん。じゃあそれでもいいよ」

「じゃあってなにさ……。さっき両親って言ってたけど本当に大丈夫なの……?」

「さっそく行こっか。早く早く」


 疑問の声を無視し支度を済ませたメルは、巡の腕を引っ張り促す。

 早々に教室をあとにしようとする二人に、やはり横槍が入った。


「ちょっとメル、抜け駆けは許さないわよ?」


 隣でにらみを利かせる花奈。

 気後れすることなくメルは言い返す。


「クリちゃんはめぐるちゃんとずっと一緒だったかもしれないけど、わたしは今日初めて会ったんだよ? いいでしょこれぐらい」

「といっても半年ぐらいよ? それに異性を意識したのは私だって今日が初めてなのだし」

「異性じゃないよ!? 同性だよ!?」巡が声を上げたが歯牙にもかけない。

「美道、あんたも何か言ってやりなさいよ」


 そう言って花奈は前の席の美道に振る。

 彼はなにやら熱心にメールを打っていた。名前を呼ばれると体だけ横に向けて、なおも目線の先は携帯。


「なんだい、ボクは今忙しいんだ……。いいじゃないか別に。ボクはその気になれば巡の家にはいつでも行けるしな。場所だって知ってる」

「……なんで知ってるの? 来たことないし教えた事もないよね?」

「友達の家ぐらい知ってておかしくはないだろう?」 

「……僕美道くんの携帯番号すら知らないんだけど」

「ボクは巡の番号とアドレスも知ってるぞ」

「だからなんで知ってるの!」

「なぜ? ……知らない方がいいことも世の中にはあるんだ巡」

「そうだとしても、こんな身近に謎をかかえたくないよ……」


 また一層げんなりしたところで、花奈が呆れたように言う。


「まあいいわ。残念だけど私もそんなヒマじゃないからどの道今日はお別れだし。巡ちゃん、押し倒されそうになったら大声で人を呼ぶのよ」

「うん、それはもちろん」

「いくら集まろうが魔法で返り討ちにしちゃうけどねっ」

「怖いよ! 朗らかに言わないで!」

「うそうそ。ジョーダンだよ」


 巡はふと学校を灰にしようとした朝のメルを思い出し、身をすくませた。

 ……いや、あれもきっと冗談だったんだよ。途中まで呪文唱えかけてたけど。

 今度も冗談だといいなあ……。


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