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日本の立場

4/8 1.米国の戦略、の(2)(ウ)に「国際法上の問題」を加えました。


以前、掲載していた内容をベースに、アップデートを試みています。

 ペルシャ湾岸地域との関係に関し,日米間には当然ながら、宗教を含む歴史的な関わり、また石油資源を軸とした経済関係に根ざす立場の相違があるものの,特に危機や戦争に際しては,日本は外交政策の基盤たる日米関係を重視し,米国から要請ある場合には、可能な範囲で支援し,政策協調してきた実績がある。しかし時として矛盾をはらむ場合もあると考えられるところ,主な論点次の通り。


 1.米国の戦略


(1)ユダヤ教徒の影響


(ア)米国は移民の国であり,大多数の国民がキリスト教徒である事に加え,ユダヤ教徒,イスラム教徒が多数いるが,何れの宗教も中東に根ざすので,中東地域に対して特別な国民感情があろう。この中でユダヤ教徒は全国民の約2%しかいないが,ニューヨークをはじめ大統領選に大きな影響力を持ちうる都市に集中している。


(イ)旧約聖書では「カナアン」(パレスチナ)の地にてイスラエル人の国家が神から約束されている。これは第2次大戦のユダヤ人大規模虐殺 (ホロコースト)を経て,大戦後の1948年に実現した経緯がある。しかるに米国ではユダヤ教徒の影響力が大きいこともあり,伝統的にユダヤ教徒の国家イスラエルを支援する政策を執ってきた。なおホロコーストを起こしたナチス・ドイツが,主としてキリスト教徒だったとすれば,キリスト教徒の罪悪感も手伝っていよう。


(2)東西の軸 (イスラエル支援の観点)


(ア)エジプトは「アラブの春」以降の政情不安もあり、もはやイスラエルの脅威ではなかろう。他方、イラクのサダムフセインが打倒され、特にIS戦争後は、イスラエルに非友好的と見られるイランの影響力が増大。従って米国は、イランの核・ミサイル開発の動きに敏感である。


(イ)イラクは、イスラエルとイランとの間の重要な緩衝地帯。イラクのすぐ北西には(イランの支援する)シリアがあり、シリアはイスラエルの隣国にして仮想敵国。従ってイラクがイランの勢力圏に入る場合、イランの影響力が地理的間隙なしにシリアに及ぶ結果となろう。

 特に首都バグダッド周辺には(イランに最も多い)シーア派住民が集中する事もあり、米国は、イラクが過度にイランの影響下に入る事を警戒。


(ウ)国際法上の問題


 米国のイスラエルに対する軍事支援は、同盟条約に基づくものではなく、伝統を踏まえた政策によるもの。従って、2026年の米国によるイラン攻撃の、国際法上の是非を論じる場合、先制攻撃だとすれば(国連憲章第51条で認められる)集団的自衛権には相当しない、との結論が出よう。  

 逆に言えば、米国・イスラエルの両国が、同盟条約を締結すれば、イスラエルに米国の抑止力が合法的に備わり、米国の軍事行動にも透明性と予測可能性が加わるだろう。


(3)南北の軸 (ペルシャ湾南側に軸足)


 米国は、特に1979年のイラン革命以降、親米傾向の強いサウジ、バハレーン、ア首連等、ペルシャ湾の南側に位置するアラビア半島諸国との関係を重視し、これらの国々を支援してきた。もって湾の北側に位置するイランとの勢力均衡を維持し、出来れば米国に有利に展開させたいとの思惑があろう。


 2.米国の政策に協調すべき理由


(1)基本的価値の共有に基づく伝統的友好協力関係


 ここでの基本的価値には,自由(言論,表現等),民主主義,男女同権を含む基本的人権の尊重,法の支配,市場経済等が含まれるだろう。


(2)日米同盟


 我が国は日米安保条約に基づき,普段から米国の核抑止力や在日米軍の抑止力に防護されており,有事の際は米国に支援してもらう立場にある。然るに一般論として米国の海外派兵の際を含め,米国有事の際には,道義的に米国を支援すべき立場にある。


(安保条約は形式上,片務的であり,米国には日本の防衛義務が課せられている反面,日本には米国の防衛義務が課されていない。しかし実際には,米軍が危機や戦争に際して海外に派遣される場合,米軍関係者が生命を危険にさらすのは明白である。仮にその様な局面で、米側の要請にも拘わらず、日本が協力姿勢を示さない場合,米国で対日感情が悪化するだろう。その結果,今度は日本の周辺で危機発生の場合,米国の兵士を危険にさらしてまで、日本の防衛に貢献する価値があるのだろうか、との疑問が当然生じるだろう)


(3)在日米軍との関係


 上記の特殊なケースとして在日米軍、例えば横須賀を母港とする米国の第7艦隊や海兵隊は,有事の際,ペルシャ湾に派遣される米軍部隊を支援してきた実績があり、今後もその可能性があろう。しかるに中東で危機が生じ,在日米軍が投入される場合,日本の支援が特段に期待されよう。

 在日米軍関係者は日本を第二の故郷とし,普段から日本のサポートを必要としている。然るに自分の生命に危険が及ぶ海外派遣の指令があった場合,日本の支援を当然視するだろうし,期待通り得られない場合,士気に大きく影響しよう。何故ならば日本の危機に際して米軍が動員される場合,先ず当事者となるのは彼らだろうから。


(4)シーレーン防衛


 中東の石油への依存度の高い日本は,ペルシャ湾からインド洋,南シナ海へと連なるシーレーンの安全を確保する必要があり,かかる観点から米国やその同盟国の海軍力に依存している。


 3.立場の違い


 上記の通り,政策協調すべき理由は説得的と思われるが,他方,日米間に次の様な立場の違いがあることも事実である。


(1)中東への石油依存率の違い(日本:94~95%,米国:10~20%)


 シェールオイル革命を経た米国と違い、日本は中東の石油への依存率が高いため,産油国との友好関係を重視すべき立場に立たされている。しかるに中東の油田は,ペルシャ湾周辺のクウェート,サウジ,アラブ首長国連邦,イラク,イラン等に集中しており,いずれもイスラム圏の国である。(このうちイラン以外はアラブ系の国)


(2)宗教・文化・歴史の違い


 日本では、中東との距離感が大きい事もあり、イスラエルやイランに対し、米国にありがちな先入観が少ないだろう。


(ア)日本では仏教や神道が浸透しており,また鎖国時代のキリスト教禁令の歴史もあり、中東で生まれた宗教(特に一神教)とは、明治維新に至るまで比較的縁が薄かった。

 従って一般的には、イスラエルに対し、ユダヤ教に根ざす特別な感情はなく、西欧で大問題だった、ユダヤ系住民を排斥する感情も、ほとんど理解されていないだろう。むしろ歴史教育の現場でホロコーストの勉強をさせられて、初めて理解するのが一般的に違いない。


(イ)イランに関しても、西洋でありがちな「古くは、ギリシャ(特に民主主義揺籃のアテネ)と対峙した、独裁色の強い古代ペルシャの後継国家にして、今ではイスラエルと対峙するイスラム国家」とのイメージは共有されず、むしろ「シルクロードのメジャーな帰着点にして、正倉院にササン朝ペルシャ時代の美術的価値の高い文物の伝来した、東洋的な国」のイメージが強いだろう。


(ウ)最近の見方によれば、未解読の古代文字のうち、ギリシャのクレタ島(クレタ聖刻文字、線文字A等)、キプロス(キュプロ・ミノア文字、キプロス音節文字)、更にインダス河流域(インダス文字)で発見された文字の背景言語は、全て古代の日本語である由。

 これが正しければ、日本語民族や日本文化のルーツは、地中海やインダス河流域の古代文明に求められるし、地中海や中東、またインド洋に関し、日本では米国と異なる、深遠なる見方があり得るだろう。

 因みにクレタ島のミノア文明を築いた人々は、アナトリアから、またインダス文明を築いた人々は、イラン方面から移動してきたと言われている。


(3)平和国家と専守防衛


 日本は先の大戦の反省の下に成立した現憲法の下で平和国家を国是としており,また第9条に基づき,専守防衛に徹し,また自衛隊を戦闘地域に派遣しないとの政策を堅持している。

 因みに古代のインダス文明や、クレタ島のミノア文明では、環境に恵まれた事もあり、戦争への備えが少なく、平和的であり、交易により栄えた、と言われるが、これが日本語民族の本来のあり方であり、悠久の年月を経て、今日の平和思想に繋がる可能性があろう。


 4.同盟のジレンマ


(1)中東危機への対応


 中東の危機や戦争に対応して米軍が現地に派遣される場合,これまでの前例や実績もあり,米側より同盟国たる我が国に対して協力要請越すことも十分想定される。しかるに,どこまで対応可能かについては我が国の特性や制約を踏まえ,是々非々で慎重な検討が必要であろう。


(ア)国連との関係


 武力行使を容認する国連安保理決議の採択を,協力の要件と見做すか否か。米国以外の常任理事国の反対等により決議が採択されていない場合,我が国は在日米軍に対するHost Nation Support及び国際機関等を通じた人道援助に限定すべきだろうか。


(イ)自衛隊の派遣


 日本の従来の政策に鑑み,別途の検討が必要だろう。イラク戦争の際,同国サマワに陸自が人道支援(給水活動)の目的で派遣されたが,今後,自衛隊の派遣には,如何なる要件が必要と考えられるか。特に派遣の結果、日本が新たな交戦国と見做される可能性を含め、慎重な検討が必要だろう。

 なお北朝鮮情勢が不安定な中では、日本が東アジア域外に自衛隊を投入する余裕はなかろう、との判断も予想される。


(2)イランとの関係


(ア)個別的なケースとして、米国とイランとの関係が悪化した場合、イラン産原油の輸入を含む経済関係や経済協力を抑制する方向で、米国に政策協調するよう求められることも想定されるが、その場合、イランを含む中東への原油依存度の高い日本として、如何に対応すべきか。

 なおイランに関しては、米国主導による経済制裁を受けている等の事情から、北朝鮮との仲間意識が強いと見られる。日イラン関係の推移によっては、日朝関係にも余波があり得るので、この点も勘案していくべきだろう。


(イ)米国から見れば日本の対イラン政策は、親米路線の試金石あるいは踏み絵であり、戦争のある場合は特に、日本を米国の路線に取り込もうとするだろう。


(a) 日米のイランとの関係には、歴史・文化・宗教等の背景から大きな違いがあるのは明白だが、それを根拠に日本が、米国の政策ラインから乖離する傾向を示す場合、放置すると際限なく米国の路線から離れ、イランと関係ない領域にまで広がる事を懸念するだろう。


(b) ついては米国の路線から乖離する動きは、当初から抑えてしまう事が肝要と考え、特に戦争が起きている場合には、米国の同盟国としての「規律」を維持する観点から、日本の独自の動きを察知する場合、強くけん制しようと試みてきた感がある。


(c) これは戦後のサンフランシスコ平和条約・日米安保条約の同時締結(1951年)以来、東西冷戦を背景に、米国が日本を西側陣営の一員と見做し、徹底的な協調路線を敷いてきた事が背景にあろう。1945年に終了した第2次大戦から100年も経ていないのに、1991年12月、東西冷戦が西側の勝利に終わったからと言って、それを機に日本外交に目立つような独立性や自律性を許容するのは時期尚早、との発想だろうか。


(d) その場合、戦後70年あまりで第二次大戦で対日戦に従軍した多くの米国軍人も存命中であり、多大な人的損失を伴いながら勝ち得た「大日本帝国の崩壊。そして日本を勢力圏に入れた、太平洋国家としての米国の成立」と言う、自分たちの「偉業」を温存したいとの心理が働くに違いない。


(e) 日米安保の片務性?


 〇 米国には、「日米安保条約は片務的だが、米国による防衛義務をバランスさせる大きな要因が、在日米軍の(中東に至る)地域的な汎用性や、平和時の便宜的な側面。そして日本の対米協調路線」との問題意識があろう。


 〇 他方、第二次大戦中、日本はハワイの真珠湾攻撃をほぼ唯一の例外として、米国の一般市民に被害をもたらしていないのに、米国は日本の本土空襲(広島・長崎の原爆攻撃を含む)や沖縄戦により、何10万人もの市民を犠牲にしたのも事実である。

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