表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はひなたで生きていく  作者: とま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/26

第18話「塔の核心、半魂の真実」

 カツン、カツン、カツン――。


 塔を下りる途中――ソウは、急に足を止めた。


「……待って」


 ヒナが――驚いて、振り返る。


「どうしたの?」


「気になることが――ある」


 ソウは――ゆっくりと、祭壇の方を見上げた。


「光の存在――最後に何か、言い忘れたような気がした」


 眉を寄せる。胸に――引っかかるものがある。


 ヒナは――少し考えるように、首を傾げた。


「……確かに」


 彼女も――祭壇を、見上げる。


「何か――途中で、消えちゃったよね」


 言われてみれば――あの消え方は、唐突だった。

 まるで、何かを伝え忘れたまま――時間切れになったような。


 二人は――顔を、見合わせた。


 そして――無言で、頷き合う。


 祭壇へ――戻ることに、した。


 カツン、カツン、カツン……

 今度は、上へ。階段を、登り返す。


* * *


 ハァ、ハァ……息を切らして、頂上に戻ると――。


 祭壇は――まだ、光っていた。


 ボウッ……と、淡い金色の光。

 けれど――光の存在は、いない。


 ソウとヒナは――ゆっくりと、祭壇の前に立った。


「……何か、あるのかな」


 ヒナが――祭壇を、じっと見つめる。


 ソウは――祭壇に刻まれた模様を、見た。


 複雑な――幾何学模様。


 円と線が絡み合い、渦を巻き、無数の記号が彫り込まれている。


 試練の前は――ただの、模様に見えた。


 装飾だと――思っていた。


 けれど――今――。


「これ……文字じゃないか?」


 ソウは――目を、凝らした。


 模様の中に――文字が、隠れている。


 古代の――文字。

 読めない――けれど、何かが書かれている。


 瞬間――。


 ジリジリッ――!

 胸の刻印が――熱く、なった。


「……っ!」


 ソウは――思わず、胸を押さえた。


 刻印が――光っている。

 金色の光が――服の上からでも、透けて見える。


 ヒナの刻印も――同じだ。


「ソウ、これ……」


 ヒナが――不安そうに、言う。


 その瞬間――。


 ゴゴゴゴゴ……

 祭壇の模様が――動き始めた。


 文字が――ゆっくりと、浮かび上がる。


 シュゥゥゥ……

 光となって――空中に、文字が並んでいく。


 それは――日本語、だった。


 『ここまで辿り着いた者へ』


 ソウとヒナは――ゴクリと、息を呑んだ。


 文字が――次々と、現れる。


 『お前たちが知るべき――真実がある』


 『それは――世界が隠してきた、禁忌』


 ゴォォォォォォ……!

 祭壇が――さらに強く、光った。


 眩しいほどの――金色の光。


 そして――。


 ゴゴゴゴゴゴッ……!


 床が――開いた。


 ガギギギギッ――!

 石が軋む音。地面が割れ、左右に開いていく。


 祭壇の下に――階段が、ある。


 下へ――下へと続く、暗い階段。

 冷たい空気が――下から、吹き上げてくる。


「……下に、何かあるのか」


 ソウが――呟いた。


 喉が――乾く。


 ヒナは――ギュッと、ソウの手を握った。


「行って――みる?」


 声が――少し、震えている。


「……ああ」


 ソウは――深く、頷いた。


「ここまで来たんだ。真実を――知りたい」


 二人は――手を繋いだまま、階段を下り始めた。


 カツン、カツン――。

 足音が――暗闇に、吸い込まれていく。


* * *


 階段は――塔の内部へ、続いていた。


 上へ登った螺旋階段とは――別の、ルート。


 下へ――下へ――。


 カツン、カツン、カツン……

 足音だけが、冷たい石の壁に響く。


 やがて――フッと、視界が開けた。


 広い――空間。


 円形の――部屋。


 壁一面に――無数の文字が、刻まれている。

 まるで、図書館の本棚のように――びっしりと。


 そして――中央に――。


 フワリ……と、水晶のような球体が浮いている。


 淡く光る――透明な、球。

 手のひら二つ分ほどの――大きさ。


 その中に――何かが、見える。


 映像? いや――記憶、のようなもの。

 過去の光景が――閉じ込められている。


「これ……」


 ヒナが――恐る恐る、球体に近づいた。


 瞬間――。


 シュゥゥゥゥ……

 球体が――反応する。


 光が――ボウッと強くなる。

 映像が――ぼやけていたものが、くっきりと鮮明になっていく。


 そこには――。


 人々が――映っていた。


 白い服を着た――老人たち。


 賢者のような――学者のような――。

 長い髭を蓄え、杖を持ち、何か神聖な雰囲気を纏っている。


 彼らは――円形のテーブルを囲んで、何かを話し合っている。


 音は――聞こえない。


 けれど――真剣な表情が――まるで、何かを企んでいるように見える。

 時折、首を振り、資料を示し、激しく議論している。


 パッと、映像が変わった。


 今度は、転生者が映っている。


 光に包まれて、この世界に現れる。

 まぶしい白い光の中から、一人の青年が姿を現す。


 けれど、その瞬間。


 白い服の老人たちが、何かをしている。


 手を翳し、呪文を唱え、複雑な紋様を空中に描く。

 その光が、転生者の魂に触れている。


 そして。


 ズバッ。


 魂が、切り離された。


 はっきりと見えた。視覚化された魂が、半分に切断される。

 まるでナイフで切るように。鮮やかに。残酷に。


 転生者は、苦しそうにうずくまる。声にならない叫びを上げる。


 魂の半分が、体から離れていく。

 光の粒子となって、宙に浮かぶ。


 いや、消えたのではない。


 老人たちが、それを回収している。


 切り取った魂の欠片を、透明な器に入れている。

 まるで、貴重な資源を採取するように。


 ソウの全身が、ブルリと震えた。


「……嘘だろ」


 声が、かすれる。


 ヒナも、顔色を失っている。

 唇が青ざめ、目が見開かれている。


「これって……」


 映像が、また変わった。


 今度は、光持ちが映っている。


 ヒナのような、金色の髪を持つ少女。


 まだ幼い。村で大切に育てられている。

 人々は彼女を"祝福の子"として崇めている。


 けれど、老人たちが彼女を見ている。


 観察するように。


 品定めするように。


 まるで、家畜を評価するような目で。


 そして、転生者と引き合わせる。


 半魂の転生者と、光持ちを。

 二人は出会い、契約の儀式が執り行われる。


 魂が繋がる。

 金色の光が二人を包み、刻印が胸に刻まれる。


 老人たちは、満足そうに頷く。

 計画通りだ、とでも言いたげに。


 パッと、映像が消えた。


 代わりに、文字が現れた。


 壁に刻まれた文字が、ボウッと光る。


 『これが、真実』


 『半魂は、自然現象ではない』


 『意図的に、作られている』


 ギリッ。

 ソウの拳が、震えた。


「……誰が」


 声が、掠れる。喉の奥から絞り出すように。


「誰が、こんなことを」


 文字が、冷徹に続く。


 『古代の賢者たち』


 『彼らは、世界の均衡を恐れた』


 『転生者が増えすぎれば、世界が歪む』


 『だから、制御装置を作った』


 ヒナが、ハッと息を呑んだ。


「制御……装置……?」


 その言葉の意味が、恐ろしい。


 文字が、また現れる。


 『半魂と光持ちの契約』


 『それこそが、制御装置』


 『転生者の力を、光持ちに依存させる』


 『そして、光持ちを管理する』


 ゾクリ。

 ソウの胸が、冷たくなった。


「光持ちを……管理」


 その言葉が、意味するもの。


 文字が、さらに続く。


 『教会は、光持ちを集める』


 『彼らを保護する、という名目で』


 『だが、本当の目的は』


 『半魂との契約を、コントロールすること』


 ヒナが、ヨロリと後ずさった。


「じゃあ……教会は」


 彼女の声が、激しく震える。

 顔が蒼白になっている。


「最初から……知ってたの?」


 文字が、冷酷に答える。


 『教会は、古代の賢者たちの意志を継ぐ者』


 『彼らは、世界の均衡を守る、と信じている』


 『だが、その方法は』


 『転生者を不完全にし、光持ちを犠牲にすること』


 バンッ!

 ソウは、壁を殴った。


 怒りが、体中から湧いてくる。


「ふざけるな……!」


 声が、震える。拳が、痛む。


「俺たちは……実験動物か?」


 文字が、また現れる。


 『お前たちは、制御されるべき存在だった』


 『けれど』


 『お前たちは、ここに辿り着いた』


 『制御を、拒んだ』


 その言葉に、ソウはゴクリと息を呑んだ。


 『均衡の塔は、真実を知るための場所』


 『そして、制御から逃れるための場所』


 『お前たちは、魂を完全にした』


 『もう、光持ちに依存しない』


 『それは、制御装置が壊れたということ』


 ヒナが、ギュッとソウの手を握った。


「じゃあ……私たちは」


 彼女の声が、わずかに希望に満ちている。


「もう……制御されてないの?」


 文字が、答える。


 『そうだ』


 『お前たちは、自由だ』


 その言葉に、一瞬、安堵が。


 『けれど』


 文字が、警告するように光る。


 『教会は、それを許さない』


 『制御装置が壊れた者は』


 『排除される』


 ゾクッ。

 ソウの背筋が、冷たくなった。


「排除……」


 その言葉の重み。


 文字が、続く。


 『お前たちは、既に賞金首だ』


 『教会は、お前たちを"回収"しようとしている』


 『それは』


 『制御装置を、再び機能させるため』


 ヒナの体が、ブルブルと震えた。


「どうやって……?」


 聞くのが、怖い。

 けれど、知らなければならない。


 文字が、冷酷に答える。


 『半魂を再び作り、光持ちと結ぶ』


 『そのために』


 『お前たちの魂を、分解する』


 スッと、ソウの血の気が引いた。


「……魂を……分解」


 体中が、冷たくなる。


 文字が、さらに続く。


 『ソウの魂を再び切断し、半魂に戻す』


 『ヒナの光を、別の半魂に与える』


 『そうすれば、制御装置が、また機能する』


 ポロポロと、ヒナは涙を流した。


「そんな……」


 彼女は、ソウにしがみついた。

 服を掴む手が、震えている。


「私……ソウと、離れたくない」


 ソウは、ギュッとヒナを抱きしめた。


「大丈夫」


 彼は、できる限り強く言った。


「そんなこと……絶対に、させない」


 文字が、また現れる。


 『教会は、強大だ』


 『お前たち二人では、抗えない』


 『けれど』


 『方法は、ある』


 ソウは、ハッと顔を上げた。


「方法……?」


 文字が、答える。


 『真実を、広めよ』


 『世界に、知らしめよ』


 『半魂が人為的に作られていること』


 『光持ちが犠牲にされていること』


 『教会が、世界を制御していること』


 『それを、人々に伝えよ』


 ソウは、ゴクリと息を呑んだ。


「でも……誰が信じる?」


 ただの言葉だけでは、誰も信じない。


 文字が、答える。


 『この塔に、証拠がある』


 シュゥゥゥ……

 球体が、ボウッと光る。


 『この記録を、持って行け』


 球体が、ゆっくりと小さくなる。


 大人の拳ほどあったものが、手のひらサイズに縮んでいく。


 そして、フワリとソウの前に浮かんだ。


 『これには、全ての真実が記録されている』


 『古代の賢者たちの陰謀』


 『教会の真の目的』


 『転生者と光持ちの真実』


 『それを、世界に示せ』


 ソウは、そっと球体を受け取った。


 ヒヤリと、冷たい。

 けれど、確かな重みがある。ずっしりと、手のひらに乗る。


「……これで……戦えるのか」


 こんな小さなものが、教会と戦う武器になるのか。


 文字が、答える。


 『戦うのではない』


 『真実を、明らかにするのだ』


 『人々は、真実を知れば、判断する』


 『教会を信じ続けるか』


 『それとも、お前たちを信じるか』


 ヒナが、球体を見た。


「でも……危険だよ」


 彼女の声が、不安に満ちている。


「教会全体を……敵に回すことになる」


 それがどれほど恐ろしいことか。


 文字が、静かに答える。


 『それでも』


 『真実は、語られるべきだ』


 『嘘の上に築かれた平和は、脆い』


 『いつか、崩れる』


 ソウは、ギュッと球体を握りしめた。


「……分かった」


 彼は、深く息を吸い、決意した。


「真実を……広める」


 ヒナは、じっとソウを見た。


「本当に……?」


 目が、不安と恐怖で揺れている。


「ああ」


 ソウは、力強く頷いた。


「俺たちは、ここまで来た。真実を知った」


 彼は、ヒナの手をギュッと取った。


「なら……それを隠すわけにはいかない」


 ヒナは、少し迷った。


 唇を噛み、目を伏せ、考える。


 やがて、顔を上げて、頷いた。


「……うん」


 彼女は、ソウの手を強く握り返した。


「じゃあ……一緒に、戦おう」


 文字が、最後に現れる。


 『お前たちに、祝福を』


 『真実の担い手よ』


 『世界を、変えよ』


 フッ……と、文字が消えた。


 部屋が、暗くなる。


 けれど、球体だけが、ボウッと淡く光っている。

 その光が、二人の顔を照らす。


 ソウとヒナは、球体を見つめた。


 これが……真実。


 半魂の真実。


 光持ちの真実。


 教会の陰謀。


 全てが、この小さな球の中にある。


「……行こう」


 ソウが、静かに言った。


「塔を出て……真実を、広める」


 ヒナは、コクリと頷いた。


「うん」


 二人は、階段を上り始めた。


 カツン、カツン、カツン……


 球体を持って。


 真実を抱えて。


 重い足取りで、一段ずつ。


* * *


 塔の外に出ると、夕日が沈みかけていた。


 ザァァァ……風が吹き抜ける。


 荒野が、真っ赤に染まっている。

 空は茜色。雲が、金色に輝いている。


 ソウとヒナは、ゆっくりと塔を振り返った。


 黒い塔。


 その中に、真実が眠っていた。

 世界が隠してきた、禁忌の真実が。


 そして今、その真実を持っている。

 手の中に、ずっしりと。


「これから……どうする?」


 ヒナが、不安そうに尋ねた。


「まず」


 ソウは、少し考えてから答えた。


「街に、戻る。人が集まる場所へ」


「そこで……真実を?」


「ああ」


 ソウは、手の中の球体を見た。

 淡く光る、透明な球。


「この記録を……見せる」


 彼は、前を向いた。地平線を見つめる。


「人々が……どう判断するかは、分からない」


「信じてくれるかも……分からない」


 ヒナが、小さく付け加える。


「それでも」


 ソウは、ヒナの手をギュッと強く握った。


「伝える価値は……ある」


 ヒナは、フッと微笑んだ。


「うん」


 二人は、歩き出した。


 カツ、カツ、カツ……


 荒野を横切り、街道へ。


 真実を持って。


 これから、長い戦いが始まる。


 教会との戦い。


 けれど、それは武力ではない。


 真実と嘘の、戦い。


 ソウは、胸の刻印に手を当てた。


 服の上から、そっと。


 金色の紋様。


 これは……制御装置だった。


 意図的に作られた、支配の道具だった。


 けれど今は、絆の証だ。


 自分たちで選んだ、絆。


 誰にも壊させない。絶対に。


「ヒナ」


「ん?」


「お前と……出会えて、良かった」


 ソウは、心から笑った。


「制御装置だろうが……何だろうが」


 彼は、ヒナを見た。

 夕日に照らされた、金色の髪。蜂蜜色の瞳。


「お前との絆は……本物だ」


 ヒナは、ウルウルと涙ぐんだ。


「……うん」


 彼女も、笑った。

 涙を拭いながら、笑った。


「私も……ソウと出会えて、良かった」


 二人は、手を繋いで歩き続けた。


 カツ、カツ、カツ……


 夕日が、二人を照らす。

 オレンジ色の光が、体を包む。


 影が、地面に長く伸びる。


 重なった、一つの影。


 それが、今の自分たちの姿。


 真実を知り、絆を選んだ。


 光と影の、二人組。


 世界を変えるために。


 真実を広めるために。


 彼らの旅は、まだ続く。


 これからも、ずっと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ