最もシンプルな方法
――聖女目指して駆けること20分。
ようやくそれっぽい聖堂を発見。
見事なステンドガラスを目印に突撃する。
*****
けたたましい音を立て、ステンドガラスが弾ける。
「な、何事!?!?」
なにやら聖女っぽい女がこちらを振り向いて目を剥く。
まぁ、突然背後の巨大なステンドガラスが粉々になり、その前には見知らぬ男がいる。驚いて当然かもしれない。
ともあれ、無事聖女を発見したことに安堵し、その奥に視線をやる。
よし、バカを発見した。
僕のド派手な登場にびくともせず、その場で虚ろに佇んでいる。
どうやら見事に洗脳されているようだ。やはり黙ってれば美少女なんだがな。ままならないものだ。
聖女を視る。ふむ、あの指輪が原因らしいな。
しかし、指輪のステータスが文字化けしている。やはり――
そこで、聖女がはっとし、我に返った。
「貴方は?一体どういうつもりですの?」
静かな怒気を含んだ声音、しかし、こちらを冷静に分析しようとしている。ほう、随分と理知的なものだ。奥のバカにも見習わせたいところだが。
「そこにいる金髪女の上司だ。この世界を救いにきたのと、まぁ、ついでにそのバカを回収しに来た」
聖女は少し驚いたような表情をしたが、すぐに微笑を湛える。
「まぁ、世界を救うとは、大仰なことをおっしゃりますのね。しかし....ええ、とても残念です。あなたの部下、ルインは私に心酔していますので、その要望にはお応えできないかと。....ですよねぇ、ルイン?」
聖女がそう問いかけると、ルインは静かに首肯した。いつもそのくらい静かなら、こっちも助かるのに。
さて、....まぁ、うん。
この場合、解決方法はひとつだけだ。
僕は手元に剣を出現させ、柄を無造作に握る。
「あら、私を殺すおつもり?構わないわ。ただし、あなたの部下であるルインも死ぬことになるけど、それでもいいかしら?」
聖女がそう言うと、ルインは腰の剣を抜き自身の首に添えた。
こちらが動けば、自害するぞと言わんばかりに。
聖女が勝ち誇った目でこちらを見ている。
あまりの見当違いに、ふっと笑い声が漏れてしまった。
聖女が怪訝そうな表情をした直後。ルインの背後にテレポートし、首を刎ねた。
そう、これがもっともシンプルな方法だ。
「なっ....!!??」
聖女が目を剥く。さすがに予想外だったようで、だらしなく口を大きく開けていた。
まぇ、当然だろう。部下を助けに来たと言っていた男が消えたと思ったら、その部下の首を刎ねていたのだから。
しかし、僕も最初の頃は躊躇したものだが、最近はいよいよなにも感じない。慣れとは怖いものである。
しばらく場を静寂が支配する。聖女がなにか言おうと口を開いた瞬間、突如、ルインの体が輝きを放つ。
光は体を縁取り、数秒後、首なし死体があった場所には、何事もなかったかのように無傷の少女が立っていた。
その表情は、心なしか嬉しそうにも、怒っているようにも見える。
「先輩、来てくれたんすね!....っていうか、ノータイムで首刎ねるとかヒドくないっすか!?最近マジで扱い雑っすよね!?」
「黙れ。お前がいつもいつもやらかすのが悪い。僕だって、心を痛めているんだ」
「ぜったい嘘っすよ!?心痛めてる人は、真顔で出会い頭に首刎ねませんって!」
「あ、貴方達は、一体――!?」
僕らに話しかけようとした聖女が、なにかに気づき驚愕した表情を見せる。
あまりに狼狽えているので、教えてやるとするか。
「ま、さすがの洗脳も、一回死ねば解けると思ってね。君は知る由もないだろうが、僕とコイツには創造の女神の加護がある。生き返ることなんて朝飯前だし、こんな芸当もわけないさ」
僕は聖女から奪い取った指輪を見せながら、そう言ってやった。
ユキの見た目は、高校生くらいのイメージ。
『鑑定』や『交渉』に加え、テレポート、アポートなど、超能力が使えます。
....CVはたぶん神谷さんです。