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脳筋後輩系少女

 転移門に向かう道中、僕はそこそこ落ち着いていた。

 本来であれば、もっと緊張すべきなのかも知れない。

部下、それも一番親しいと言っていい後輩が、洗脳されているかもしれないのだから。

 焦って、いますぐ助けなければと血相を変える場面であって然るべきだ。


 だが、この状況、ちょっともううんざりである。はっきり言ってもうたくさん。泣きそうだ。

 『137』。

 この数字がわかるだろうか。

 ――なにを隠そう、ヤツが派遣先でやらかし、僕が助けに行った回数である。


 彼女の名を『ルイン』、我が部門の最古参であり、『脳筋』のあだ名を恣にする者だ。


 元勇者であり、俺の部下に志願した金髪碧眼の小柄な少女。

 僕がこの職についてまだ日が浅いとき、担当した転生者である。


 まだ仕事にこなれていなかったため、全力で熱意を注いだ結果、随分と懐かれてしまったのだが、部下に志願してくれたときは嬉しかった。なにしろ、部下になりたいなんて言われたのは初めてであったし、ルインの見た目は麗しく、数々の女神を見てきた僕からみてもその評価は変わらない。

 しかも、転生して間もない頃のヤツは気弱で、守ってやりたい儚げな雰囲気を醸し出していた。


 とんだ詐欺である。世界を救い、部下になってからというもの、僕からなにを吸収したのか、ルインはフィジカルに傾倒していった。

 勇者の頃は魔法スタイルだったにも関わらず、アネラに力の加護を望んだルインは、いまやフィジカルモンスターとなってしまった。

 力に溺れ闇落ちしなかったのは幸いだが、『力こそパワー』が信条のようなアホは、とてもじゃないが御しきれない。


『次こそは大丈夫っす!!ユキ先輩も、大船に乗ったつもりでくつろいでもらって構いませんよ!!!!』

とドヤ顔&クソデカボイスで言い放ち、転移門へ駆けていった一昨日のヤツが脳裏に蘇る。まったくお茶目なやつだ。殴るぞ。

 ま、結局はいつも通りの泥舟だったというわけか......。


 さて、愚痴はここまでにして、切り替えるとしよう。

 今回の世界の情報を思い出す。アネラに聞いたところ、聖女系の能力に長けた転生者の世界とのこと。

 覚えている。一昨日のことだ。

 相性が悪そうな世界だから止めておけと言ったのに、聞き分けなくガン無視して飛び込んでいったのだから。

 空気を読み、気を遣うという機能が欠陥しているのだろうか。

 おっと、つい愚痴ってしまった。


 まぁ、とにかくルインの洗脳を解けばいいわけだ。

 しかし、少し懸念していることがある。

 しつこいようだが、ヤツは脳筋なのだ。そしてお決まりだが、脳筋は精神干渉系に弱い。

 よって部下思いである僕はアネラに頼み、ヤツ専用の護符を創ってもらった。

 創造の女神の護符である。そう簡単に破られるものではない。にも関わらず、ルインは洗脳されている。アネラの護符を無効化した、ということだろう。


 ....だが、まぁ、ある程度見当はついている。

 まったく、迷惑なことだ。


 さて、やっと転移門に到着した。

 僕はテレポートができるのだが、天界では制限がかかっていて使えないのだ。まったく不便なものである。


*****


 ――厳かな闇夜の聖堂に、美しい声が響く。


「ウフフ、なんて美しいのでしょう」


 豪華絢爛な法衣を纏った聖女は、人差し指にはめられた指輪を眺め、ウットリと呟く。


「この《心壊の指輪》があれば、どんな者も思いのまま....』


 そうしてしばらく惚けると、彼女は指輪から目を離し、目の前に跪く少女を眺める。


「......」


 美しい金髪の少女は、虚ろな目を湛えていた。

聖女分からすところまでいけなかった....(泣)。

今回初登場?のルインの見た目は、どっかの素晴らしい世界の姫様とか、オーバーなロードの黄金さんをイメージしています(中身は全然違うけどね)。

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