美園の家庭
フローライト第九十五話。
美園の影響を受けて、久しぶりに利成の曲が注目をされ始めた。ここ何年かは自身での曲より、他のアーティストへの楽曲の提供の仕事の方がほとんどで、ある意味落ち着いていた日々だった。
ただ利成との共演だけは断ってくれと美園は事務所に言っていた。何故かと聞かれても明確な理由はなかったが、「何となく」だ。もちろんそんな理由は無視されるか、ヘタしたら”我がまま”だとレッテルを貼られ、いい印象にはならないことはわかってはいたが・・・。
朔はインスタで自分の絵を宣伝することにはしたが、動画ではなく写真にした。どうしても喋るのは嫌だというのだ。顔出しなら写真でもいいということになって、明希と一緒の写真をインスタにアップした。
「いいじゃん、これ」と美園はインスタを見ながら言った。朔が明希と一緒に笑顔で映っている。バッグには朔の絵があり、手にはあのポストカードを持っていた。
「そうかな・・・」と朔が言う。今日は金曜日で、近頃は週末は美園の家に朔は泊まるようになっていた。
「うん、いいよ」と美園が朔に笑顔を向けると、朔も笑顔になった。
「こないだの三者懇談どうだった?」
そろそろ学期末が近づいていて、二年生は完全に進路を決めなければならなかった。
「どうって・・・」
「だって朔はまだ決めてないって言ってたでしょ?」
「うん・・・決まらない・・・でも、進学か専門か・・・就職なのかせめて決めろって・・・」
「だろうね」
「美園は?どうするの?」
「私?んー・・・進学はとりあえずやめた。後は・・・適当」と美園は笑顔を作った。
「適当?」
「うん、先生はこのまま芸能界でやってくと思ってるみたいだから、突っ込まれなかったし・・・。後は咲良だね」
「咲良さんは何か言ってるの?」
「真面目に芸能界やるんでしょうねって」
「やるんだよね?」
「さあ・・・わかんない。やめるときはやめるし・・・面倒なんだよ」
「面倒って?」
「んー・・・ユーチューブ勝手にやってたときと違って、いちいちマネージメントしてくれる事務所からダメ出しが入るし、チェックはいるし・・・好きにはやれないから」
「そうなんだ・・・」
「そう。奏空はよくぞそんな中で結婚したと思って。しかもアイドルなのによく許してもらえたなって思うよ」
「うん・・・」
「あーやっぱりやってみたけど、奏空や利成さんみたくはできないな・・・」
美園はベッドの上にバタンと横になった。
「・・・こないだ・・・クラスの男子に美園のこと聞かれた・・・」
「えっ?私のこと?」と美園は起き上がった。
「・・・どういう関係かって・・・」
「そう。何て答えた?」
「・・・何でもないって・・・」と朔が言ってうつむいた。
「何でもない?」
「・・・・・・」
「それで納得してた?」
「・・・いや・・・」
「それでどうしたの?」
「机の上のもの・・・ゴミ箱に全部捨てられた・・・」
「は?」
美園が朔の顔を見ると、朔は自分の膝を叩いていた。
「それで黙ってたの?」と美園が聞いても、朔はただ黙って膝を叩いている。
「朔?」と美園が朔の手を握って膝を叩くのをやめさせた。朔が美園の顔を見る。
「付き合ってるって言っていいんだよ?隠す必要ないから」
美園がそう言うとまた朔が膝を叩きだしたので、美園はまたその両手をつかんだ。
「我慢するからそんなにストレスになるんだよ」と美園が言うと「我慢はしてない」と朔が言う。
「じゃあ、何で自分の膝を叩くのよ?」
「・・・・・・」
その時部屋のドアがノックされて咲良が顔を出した。
「ご飯、できたよ」と咲良が言う。
「うん、朔も行こう」と美園は立ち上がった。
三人で食卓に着くと、奏空が帰ってきた。三人揃っているのを見て「あれ?今日は遅いご飯だね」と言った。咲良が「美園がさっき帰ってきたからね」と言う。今の時刻はもう夜の十時近かった。
「そうなんだ・・・ただいまとお疲れ様、美園」と奏空が抱きついてくる。
「おかえりとお疲れ」と美園も返した。
「朔君もただいま」と言って奏空が朔に抱きついたので、朔が思いっきり驚いて味噌汁の入ったお椀をひっくり返してしまった。
「あっ!」と咲良が言う。「もう、奏空が朔君に抱きつくから朔君が驚くでしょ?」と咲良がキッチンの方に行った。
「すみません・・・」と朔が焦っている。美園はそばにあったティッシュペーパーでこぼれた味噌汁を拭きながら、「朔は悪くないよ。悪いのはこの変なアイドルやってる人だからね」と言った。
「アハハ・・・”変な”って何よ?」と奏空はまったく動じてない。
「朔はハグになれてないんだよ」と美園は言った。
「そうか、じゃあ、今後は慣れよう」と奏空が言う。
咲良がキッチンから布巾を二枚持ってきてテーブルの上を拭いた。そして朔のズボンが少し汚れているのを見ると、それももう一枚の布巾で吹き出した。すると今度も朔が思いっきり驚いて椅子を引いた。
「ちょっと、咲良が朔の股間のところゴシゴシやるから、朔が焦ってるでしょ?」と美園が言うと咲良が「股間なんてやってないから」と言った。奏空が「アハハ・・・」と声を出して笑ってから「何か今日は賑やかだね」と言う。
「誰のせいよ」と咲良が言い「朔君、味噌汁新しいのあげるからね」と汚れた布巾を持ってまたキッチンに行った。
「すみません・・・」と朔が頭を下げている。奏空が上着を脱いで洗面所の方に行った。
「はい、朔君」と咲良が新しいお椀に味噌汁を入れて持って来た。
朔が「すみません」とまた言う。
「朔君はうちでハグとかはないんでしょ?」と咲良が聞いた。
「はい・・・」
「そうだよね、普通」と咲良が椅子に座って箸を持った。
「普通って?」と奏楽空が戻ってくる。
「普通、いちいちハグしないでしょって話し」
「そう?」と奏空がキッチンの方に入って行った。
「あ、奏空、味噌汁はもう一度温めて」と咲良が言う。
咲良がすましてご飯を食べ続けてるの様子を見て、「奏空さんって自分でやるの?」と朔が美園に聞いた。
「自分って、今咲良が言ったこと?」
「うん・・・」
「味噌汁くらいは奏空でも温めできるでしょ」
「そうだけど・・・」
「あ、そうか、朔んところはお父さんは何もやらないんだ?温め直しもやらないんだね」と美園は言った。あの父親ならそうだろうと思った。
「うん・・・」
「へえ、そういう父親っていまだいるんだね」と咲良が言った。
「そういう父親?」と奏空が味噌汁とご飯を持ってテーブルに着く。おかずはあらかじめラップで包んだのがテーブルの上に置いてある。
「男ってことだけで何もやらないでふんぞり返ってる男だよ」と咲良は言ってから、朔に気が付いて「あ、ごめんね。朔君のお父さんなのに」と謝った。
「いえ・・・」と朔が味噌汁を飲んだ。
「性別も人間が作ったゲームだからね」と奏空が言う。
「ゲームって・・・そんな軽い感じで?」
「男と女って概念は人が作ったものでしょ?」と奏空は味噌汁を一口飲んで「あちっ」と言った。
「男と女って人間じゃなくて神様がそう作ったんでしょ?」と咲良が言う。
「神様は”男と女”は作ってないよ」と奏空がまた言う。
「だって聖書だかに書いてあるでしょ?」
「聖書?よく知ってるね」と奏空が言うと「奏空が昔言ってたじゃん」と咲良が言った。
「そうだっけ?まあ、意味付けは人がしてるから」
「奏空の話し聞いてると、結局すべて何の意味もなくなるよね?」
咲良がおかずを口に入れた。
「そうだよ。その通り」と奏空が笑顔を朔に向けた。
朔はさっきから不思議そうに夫婦の会話を聞いていたが、奏空の笑顔に急に我に返ったように箸を動き始める。
部屋に戻った朔が「美園のうちは不思議だね」と言った。
「何で?」
「奏空さんも咲良さんも楽しそうに話してるし、話すことも不思議なことだし・・・」
「あーそうだね。話すことってちょっと普通の家庭で話さないようなことかもね」
「うん・・・」
「朔、さっきの話だけど、私のことでいじめられたりしてないよね?」
そう聞いたら朔が美園から目をそらした。
「いじめられてるの?」
「いじめられてないよ」
「ほんとに?さっきのはいじめだよね?」
「・・・・・・」
「どの男子?名前教えて」
美園がそう言ったら朔が顔を上げた。
「どうするの?」
「ぶっ飛ばすんじゃなくて、注意しとく。優しくね」と美園はわざと笑顔で肩をすくめてみせた。
「い、いいよ」と朔が焦った顔をした。
「良くないでしょ?」
「いい・・・」
朔がまた膝を叩きだした。美園はその様子を少しの間黙って見ていた。
「朔、寝ようか?」
美園が言うとようやく朔が膝を叩くのをやめた。
「していい?」と朔が聞いてくる。
「いいよ」と美園はベッドに入った。
「前みたく・・・してくれる?」と朔が言う。
「前みたくって?」
「前に美園がしてくれた・・・」
「あー舐めて欲しいってやつ?」
「うん・・・」と朔が恥ずかしそうにうなずいた。
「いいよ、寝て」
美園が言うと朔がベッドに横になった。美園が朔のズボンと下着を脱がす。舌で舐めるとすぐに朔のが反応した。しばらくそうしていると「今度美園のを舐めていい?」と朔が言った。
「いいよ」と今度は美園がベッドに仰向けになった。
朔が美園のパジャマのズボンと下着を脱がしてくる。舌で舐められて美園もどんどん感じてきてしまった。
「美園もイって欲しい・・・」と朔が言う。
「いいよ・・・私は・・・」
美園が途切れ途切れに言うと、朔がもっと吸い付くように舐めてきた。
(あ・・・ちょっとヤバい・・・)
朔の唾液と自分のでべとべとになってくる。朔が「もう・・・やっぱり入れる・・・」と言って美園の中に入ってきた。
いつものように「美園」と朔が名前を呼んでいる。美園は朔を感じながら、また不思議な感覚と快感に酔った。
(最近はやっぱりセックスするたびに朔にハマっていくな・・・)と思いながら・・・。




