表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
3章 冒険者になる悪役令息ルックスY

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/166

71話 ライバル会社は大切だと思います

 ピスケス公爵家は王国でも有数の権力者である。国王派筆頭でもあり、国を守る鎹とも言われている。その屋敷は王都にある別邸でも広大な敷地を持っており、庭園を見るだけでも、その整えられて季節ごとに咲く花園や木々から、羽振りの良さが察せるというものだ。屋敷は幾つ部屋があるかもわからず、召使いの数だけでも百人を超える。それだけの財力と権力を持つもの、それがピスケス公爵家だ。


 そして今、最近躍進してきたアスクレピオス侯爵家が訪れており、秘密の会談を行っていた。


           ◇


「子供というのはよいものですな、そう思いませんかアスクレピオス侯爵?」


 ピスケス公爵は窓越しに庭園を見て、柔らかな目で言う。視線の先には二人の少女が遊んでいる姿があった。


「あ~ちゃん、このおはなもらっていい? ペットがおはなだいしゅきなの」


 一人は可愛らしい幼女だ。名前はアムネジア・アスクレピオス。真の名はアキ・アスクレピオスにして悪役令息ルックスYにして、悪逆非道の大悪魔が憑いているとかいないとか。それをピスケス公爵は知ることはない。


「お花を愛でるペットなんて珍しいですね。もちろん良いですよ。綺麗なお花を選びましょう」


 おっとりとした口調で微笑むのはマノミ・ピスケス。ピスケス公爵家の娘だ。最近はとみに魔法に力を入れており、腕をあげているし、以前のような弱々しい性格ではなく積極的でもある。


「マノミしゃんにもみせたげるね! マモってゆーの。おはなたべりゅのだいしゅきなの。そ~しょくどうぶつっていうんだって。むぎのおみずもだいしゅきなの!」


「あら、お花を食べるんですね。ではペットが好きそうなお花を選びましょうか」


「うん! あと、ぶどうのおみずもすきだっていってた。おこめのおみずも!」


「??? なにか少し変なペットなんですね」


 アムネジアが張り切って説明すると、マノミはよくわからない感じがするわと首を傾げるが、幼女なので説明が拙いんでしょうと納得して、ニコニコとお花を選択するのであった。


 そのほのぼのとした光景は、アスクレピオス侯爵が今回訪問した表向きの理由だ。家族同士での交流を図り親しくなるとの理由で、少し離れた四阿ではピスケス公爵夫人とアスクレピオス侯爵夫人がお茶会をしている。


 そして、男たちはお茶会ではなく、酒でも飲もうと屋敷にいるという設定であった。


 本当はアスクレピオス侯爵から秘密の相談があるとの連絡を受けての会談である。


「さて、今回の訪問。どのような理由かをお聞きしてもよろしいかな? 緊急であり他者には知られたくない内容とか」


 ソファに戻り、対面の男、血の侯爵とも呼ばれるたった1年で領地を復興させた鬼謀の持ち主。国王派に引き抜いたが、決して油断できない相手だ。


「ピスケス公爵、訪問を許していただき感謝を。そして、緊急の理由は先日死亡した冒険者ギルド長の事件になります。こちらの資料をお読みください」


 アスクレピオス侯爵がスッと紙を差し出してくるのを受け取り、ピスケス公爵はしばらく中身を見ていき………手を震わせて資料をテーブルにゆっくりと置く。


「これは本当のことなのかね? ギルド長が王都をゾンビラットで襲撃していたと? たしかに彼らは下水道で死体となって発見された。だが、まさか貴族の一員がそのようなことを企んでいたというのか!」


 思わず声を荒げるのも無理はない。その内容は信じ難い内容であったのだ。


「はい。残念ながら、それが真実です。証人は平民が数人と貴族のヤタノ・コルブスです。サーベラス家はどうやらネクロマンサーの能力を秘していたようですね」


「その噂は知ってはいたが、まさか真実だとは………陛下に急ぎ上奏しサーベラス家を処分しなくては」


「いえ、それは無駄でしょう。証拠が証言だけでは弱い。捕縛できればよかったのですが、あいにく手加減できる相手ではありませんでした」


「その口ぶりだと、そなたが動いたのか。むうぅ、たしかにギルド長は将軍級の凄腕と聞いている。捕縛など無理であろう。そうか………助かったぞ、アスクレピオス侯爵。そなたの活躍がなければ王都は大混乱となっていただろう。だが、これだけのことをしでかしながら、貴族派を放置するわけにはいかぬ」


 ピスケス公爵は、ギルド長の起こそうとした事件を聞いて貴族派の策謀だとすぐに思いついた。そして、彼らがかなり力を持ち始めていることも。そうでなければ、これだけの事件を引き起こす理由がない。しかし、これを機会に貴族派を追及しようともたしかに証拠が足りないのが口惜しい。


「そこです。私も国が乱れることは望みません。なので、貴族派の力を削るところから始めましょう」


 アスクレピオス侯爵の鋭い目を見て、この男がここにきた理由を悟る。ギルド長のことを告げに来ただけではないようだ。


「どのように削るつもりだね? まさかとは思うが暗殺はなしだぞ? 失敗する可能性は高く、見つかればこちらの傷となる」


「もちろん違います。そのような直接的な行動ではなく、間接的であり、それでいて致命的なダメージへと変わる方法です」


「………そのような方法があると言うのかね? あるならば、当然その方法を採りたいが」


「はい。私たちも手は出しません。貴族派につけこまれることとなりますからね。投資をしようと思います。最近、設立した商会へと」


「投資? 儲け話………と単純な話ではあるまい? どんな話なのだろうか?」


「総合商社。薬草採取から、ポーション販売まで。冒険者ギルドの行っていた派遣業と、数少ない錬金術師が作るポーション製造、流通業をまとめて行う商会です」


 ピスケス公爵へとニコリと微笑みアスクレピオス侯爵は告げるのであった。その瞳からなにも読めず、鬼謀の持ち主の提案に思わずピスケス公爵は唸ってしまうのであった。


「冒険者ギルドの仕事を奪うというのか。たしかにあのギルドは貴族派の資金提供の柱となっているため、極めて邪魔な存在だった。だが、今さら手を出せるのかね? すでに国内に根を張っていて、簡単には手を出せないのが冒険者ギルドだ」


 ピスケス公爵にもアスクレピオス侯爵の提案は理解できた。冒険者ギルドを潰そうとも何度も考えたことがある。しかし冒険者ギルドを潰すと、冒険者たちが仕事を無くし、山賊や暴力集団になる可能性も高く、その理由をもって貴族派が反対するために手を出せなかったのが実情である。


「それはアプローチが間違っていたのです。冒険者ギルドを潰そうと考えるので手を出せない。ライバル業者を作り、冒険者たちを引き込めば、自然と冒険者ギルドは赤字となり、潰れることでしょう」


「そううまくいくと思うか? 絶対に貴族派の邪魔が入るぞ?」


「いきなり全ての領地に展開する必要はありません。まずは国王派の貴族領に展開させます。国王派の領地ならば手を出せませんし、反対にそれでも邪魔が入るのであれば………その貴族は本当に国王派なのか疑問に思わなくてはなりません」


「一石二鳥というわけか。むぅ………たしかに良い考えにも思えるが、そんなに簡単にいくものか? 国民は皆冒険者ギルドというものを認識している。ここで新たなる冒険者ギルドを作ってもうまくいくだろうか?」


「上手くいかせるのです。ピスケス公爵は冒険者への依頼料を知っていますか? 薬草一つで作れる低位ポーションは銀貨5枚であるのに、薬草採取は10束で銅貨3枚。一つ銅貨3枚ではなく、10束でです。私は冒険者ギルドへ依頼料の補助金を渡した時にその低すぎる依頼料を知りました。これからはかなりの賃上げをすれば、冒険者たちはこぞって移動してきます。それは去年の私が行ったことが証明です」


 アスクレピオス侯爵領に冒険者たちが集まり、人口が増えた要因は、依頼料をほんの少し上げたからである。それだけでも貧困にあえぐ冒険者たちはアスクレピオス侯爵領に移動したのだ。たしかに依頼料を上げれば多くの冒険者が移動する証明でもあった。


(昨年からこの事態を予想して、アスクレピオス侯爵は冒険者ギルドへと補助金を出していたというのか? 我らへの証明にもなる。先々のことまで考えて行動しているとは恐るべき戦略眼だ)


 ピスケス公爵は舌を巻き、アスクレピオス侯爵の戦略に感心と恐れを抱く。全てを無駄なく行動するその姿は恐るべきものであった。


 実際はその時々で思いつき、行動に移すせっかち幼女が裏にいるのだが。傍目にはアスクレピオス侯爵が考えているように見えるので、ますます侯爵の評価は上がっていくのであった。


「数少ない錬金術師たちがポーションを無駄に高くする。それも私の用意した錬金術師たちに手伝ってもらって安価にします。そして、冒険者たちの依頼をこなすことをアカデミーの教育に加えましょう。現在、冒険者ギルドのランクはAランクまでありますが、依頼料が安いため、Bランク以上はほとんどいません。なぜならば『騎士級』がBランク以上になる条件。そのため、ほとんどの者が騎士になるのですから」


「アカデミーの者たちを………実戦にて鍛えられるし、高ランクの依頼も片付けることができる。だがアカデミーの反発も……。そうか、アカデミーは崩壊している。これがチャンスということかね?」


 アカデミーは崩壊し、今や復興費用を集めるのにも苦労をしている。しかも腕の良い教師たちは軒並み死んでおり、アカデミーとしての存在意義も疑われているのが現状である。


「はい。依頼をこなすことによる手数料をアカデミーに渡せば文句はつけないでしょう。そして、最後に……ポセイドン王国との交易品を総合商社に取り扱わせましょう」


「ポセイドン王国の! か、彼らは交易を始めるというのかね?」


 最後の爆弾発言にピスケス公爵は思わず立ち上がって驚いてしまう。王国が落ち着くまでとの話で、未だに貿易が行われていなかったのだ。そのため、南大陸から手に入るスパイスなどは枯渇し、今や黒胡椒一袋で船と交換できるほどの価値まで釣り上がっていた。南大陸との交易が不可能となって、無駄となった船とはいえ、信じられないことでもある。


「はい、交易の主体は我らアスクレピオス侯爵家とピスケス公爵家で行い、総合商社に商品を卸します。我らの商会と総合商社だけが取り扱えば、計り知れない利益が出るはずです。もちろん総合商社を設置した各領地も利益が出るはずです」


「むぅ………たしかにその旨味があるならば諸手をあげて皆は歓迎するだろう。国王もこの提案には喜ぶに違いない。だが、その総合商社は誰に任せるのだ? これだけの大きさの商会を任せるにはしかるべき者でなくてはならないぞ?」


「はい。この商会を任せるには、商会主は信頼できる者を。そして副当主には━━━」


 ピスケス公爵とアスクレピオス侯爵はその後も顔を突き合わせて、秘密の会談を続け、そうして総合商社が数日後に王都に作られるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
聖女様も大好きなおみず メランを倒したあと、聖女様はお仕置きされちゃったのかな?マジメに戦ってたから許してあげてて欲しいな
総合商社かぁ、管理者が大変そう。 ……ハッ、ガチャでほにゃららライブラリを当てれば運営を丸投げできるのでは?! レア度凄そうだけど、隠し財宝も手に入ったしお小遣いをぶっ込むんだアキちゃん!
葡萄のお水好きなので私も実はマーモットかもしれないです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ