表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
2章 アカデミーに悪役令息は通う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/166

64話 冒険者ギルドも下請けなんだよ

「何者だ? ヤタノはお前の部下か? よくも俺の弟を殺しやがったな、覚悟できてるんだろうなぁ!」


 下半身だけとなった弟の死体を見て、顔を真っ赤にして、激怒したメランが吠えると、空気がビリビリと震える。だが、厨二病たちはそよ風のように受け流し怯むことはない。


 そうしてゆっくりと口を開く。


「こんな下水道にいるんだ。わかるだろ? あたちたちはヒャッハー山賊団だ! 金目のものと命をおいてけー」


 仮面を被り、黒いコートに日本刀を腰に下げた厨二病の姿がぼやけると、そこにはマーモットに肩車をされて、ふんすと鼻息荒い幼女が現れたのであった。お鍋をかぶり、木の枝を腰にさして、風呂敷をマント代わりに羽織っている完全装備の可愛い幼女、その名はアキ・アスクレピオス!


 厨二病になりすまして、ヤタノを操るちょっぴり悪い幼女である。組織を知られない方法、即ち相手が別の組織と思っていればバレない法則です。なりすまし詐欺を得意としているとか、それは冤罪でしゅ。装備がへんてこなのは遊んでるんじゃないよ。幻術はそっくりの装備にするとリアリティがあっぷするからだよ。

 

「ヒャッハー、久しぶりの強盗だ!」


「おら、もう俺たちからは逃れられないぜ、ヒャッハー」


「ヒャッハー、酒は壊さないように大事に奪うようにー」


「まきゅー、まきゅー」


 アスクレピオス領都から連れてきたヒャッハー山賊団。久しぶりに全員が集まりノリノリである。楽しげに剣を舐めたり、杖を振ったり、酒を呷ろうとするヒャッハー山賊団。シィは後でお仕置きだ。


「………幼女? はぁ? どこの愚か者たちだ?」


 毒気が抜けたように口を開けて呆れるメラン。そして警戒心が薄れる他のギルド員たち。見掛けは雑魚のチンピラたちと、幼女とマーモットだ。怪しい集団だが脅威は感じなかったのだろう。


「メラン・サーベラス。冒険者ギルドギルド長。アルマゲスト王国の冒険者ギルドの元締めにして、貴族派の一員、サーベラス伯爵。王国内にギルド支部を展開するには、それぞれの貴族たちの了承を得なくてはならないが、国王は冒険者ギルドを放置した。だから気づいた時には貴族派に支配される結果となり、資金調達の金庫番となった」


 アキが弛緩するメランたちへと、小鳥の鳴き声のような可愛らしい声で、可愛らしくない内容を口にすると、メランの目が細まる。


「ほう………よく調べてやがるな。で、なにを言いたい?」


「話の流れは簡単だよ。病魔鼠を片付けようとしたがアンデッド化しており、王都に襲撃してきた、と説明するつもりだったんだろ? 安い金で雇った冒険者たちの死体を何人か作ってさ。でも、そうはいかなかった。王都の新人冒険者たちは皆稼げるアスクレピオス領都に行ったからね。自分たちで片付けるしかなかった。ヤタノだけの死体じゃこの話は無理があるよ」


 アキは知っていた。『王都疫病発生』クエストは普通に襲撃されるパターンと、ハーメルンを倒して数百匹が王都に向かう簡単なパターン。そして、最もきつい隠しルート、完全に病魔鼠を駆逐すると起きるメノン・サーベラスがゾンビ鼠を作って、王都を襲撃させるパターンかあることを。


 ハーメルンを倒したのに、『王都疫病発生』が発生しなかったから、予想がついたのだ。ちなみにこのルートは前半でのクエストなのにメラン・サーベラスがボスとなるので、戦闘ではクリア不可能とも言われていた。騎士団と伝手を作っておき、密告するのが正式なルートだ。


 でも、その攻略不可能な戦闘ルートを表に出るわけにはいかないアキは選ぶこととした。攻略サイトにある隠しボスを倒していくナイトメア難易度である。このルートのボスは皆が強いが報酬もでかいのだ。


「お前………本当に何者だ? 幼女がリーダーの組織なんざ聞いたことがない。が、俺たち貴族派を邪魔しにきたのは間違いなさそうだ。それにしては数が少なすぎる。現状が分かってんのか? 俺を含めてここにいるギルド員は精強だ。そして………俺の手駒には一万匹の病魔鼠ゾンビがいる」


 先程までの弛緩した空気は霧散して、メランが厳しい顔で、ぱちりと指を鳴らすと、ゾンビラットたちが動き始める。力は上がったが鈍足となったゾンビラットたちが波のようにアキたちに向かって歩き始める。


「数は脅威、噛まれたら病魔に冒される。でも、あたちも用意はしてきたんだよ」


 スカッと指を動かすと、アキは己の魔力を魔法に変換させる。それは奇跡の魔法にして、幻術の最高峰、階位8の軍団魔法。


『霧の道化団』


 アキの足元から霧が流れていき、フードを被った軽装の戦士たちが次々と現れる。その数は百人。


「こいつらは状態異常無効なんだ。全員合わせて113名と一匹。一人10匹倒せば、ゾンビラットたちは駆逐できるでしゅ」


 銅の剣を呼び出して、小さな手で握りしめるとニッと笑う幼女。


『あきちゃん、けーさんまちがってるよ! んと、ひゃくまんびきたおせちゃう! おおすぎましゅ』


 あ~ちゃんが指を折々言ってくる。計算ができる良い子なあ~ちゃんだけど少し違うかな。113掛ける10で…………。


「一人がたくさん倒せば一万匹だ! これは買いなおすからプレゼントッ!」


 餌を見つけた子猫のように獰猛な笑みになると、タンと地面を蹴り、アキは飛び出しながら、被っていたお鍋をメランに投げる。


「おもしれえっ! 久しぶりの殺し合いだ、乗ってやるぜ! お前ら、こいつらを殺せ!」 


 メランは軽く拳を繰り出し鍋を粉々に砕くと、部下に指示を出す。部下たちも応じて、アキたちとぶつかり合うのだった。


『悪逆非道が発動しました』


           ◇


「まずは先手」


「良き良き」


 眠そうな目で、緊張感なくのほほんとウイたちが杖を構えると魔法を唱える。


『ツインシンクロブリザード』


 氷の吹雪、触れるもの全てを凍りつかせる冷気がゾンビラットたちを中心に巻き起こり、氷の彫像へと変えていく。病魔鼠はモンスターレベル1の雑魚で、ゾンビラットとなってもそれは変わらないが、さすがに敵が多すぎるので、数を減らすことを優先したのだ。


「おし、任せてくれ」


 レイたちが弓を構えると、次なる武技を解き放つ。


『ボムアロー』


 放った矢は炸裂弾。落下した場所を中心に爆発し、爆風で吹雪を周囲に散らしていく。威力は減衰してほとんどなくなるが、それでもモンスターレベル1のゾンビラットは吹雪の残滓に触れただけで凍ってしまう。


 ヒャッハーたちの群れにして個体として存在する者たちしか行えない完璧なる連携だ。僅かでも着弾が早かったら、吹雪の威力が強すぎてボムアローは効果を発揮できなかっただろうし、遅ければ吹雪の残滓が弱すぎて、ゾンビラットを倒す最低限の威力を保てなかったであろう。


 だが、それでも数百匹を倒したにすぎない。残りは津波のように迫ってくる。


「まきゅー!」


『底なし沼』


 マモが前面に立つと、両手を地面につけて魔法を使う。ゾンビラットたちの前面が広範囲にわたり泥沼と変わり、襲いくるゾンビラットたちが躊躇なく足を踏み入れる。


 そして、身体が沈み込み、ずぶずぶと沼に呑み込まれていく。階位6の『底なし沼』だ。立ち入った敵を底なし沼に沈めて殺す即死魔法に系統される魔法だ。


「まーきゅっきゅっ。マモの魔法なら一万匹だろうが、十万匹だろうが、簡単に倒せちゃうまきゅ!」


 まるでレミングの死の行進のようにゾンビラットたちが沼に沈んでいき、マモは得意げにおヒゲをユラユラさせて笑う。だけど、即死魔法ではなく、即死魔法に系統されるというイマイチな呼び方をされるのには訳があって………。


「あ、こら、渋滞してるまきゅ。前の鼠が沈んでから足を踏み入れるまきゅよ。ラッシュ時のルールって知ってるまきゅ?」


 マモが手を振って、ゾンビラットへと無駄な説得をするけど、沈む速度がとにかく遅い。一匹沈むのに数分かかるため、次のゾンビラットが足場にして向かってきてしまうのだ。そう、この底なし沼の魔法は抜け出すのが容易なのでビミョーな扱いの魔法なのだった。


 それでも数千匹は倒したのだろう。すぐにタイチたちが追撃を仕掛ける。


爆発剣エクスプロージョンブレード

 

 爆発による殲滅と、爆風によるノックバック。その二つを両立した巧みな武技だ。押し寄せる夥しい量のゾンビラットたちは爆炎に包まれて、燃え盛り━━━。


「魔法剣! お前らの正体がわかったぞ!」


 ゾンビラットたちの群れの中からメランが楽しげに笑って飛び出してくる。驚くことにその体は焦げておらずノーダメージだ。


「ふんっ!」


「ちっ、ゾンビラットの中を来るとか正気か!」


 メランが剛腕を繰り出し、タイチが盾で受け止めようと構える。タイチは階位5相当にして、魔法の武具で身を包んでいる。なので盾で受け止められると思いきや━━━吹き飛ばされてしまう。


「おらぁっ!」


 地面に足をつけると同時に、体をひねりメランが蹴りにてタニを同様に盾ごと吹き飛ばす。魔法付与された頑強なはずの盾が僅かにひしゃげていた。血を口から垂らすタイチたちを癒しの光が包み込み回復させていく。


 二人の様子を見て、満足げにメランは笑い、指をポキポキと鳴らす。


「お前ら、アスクレピオス侯爵家の12剣だろ? 魔法騎士団の噂は聞こえてるぜぇ。そうか、俺たち貴族派の動きを掴んでいたから、邪魔しに来たってわけか」


 どうやら魔法騎士は滅多にいないので気づかれたらしい。隠していたのに困ったもんだ。


「だが、たったの12人で来たのは失敗だったな。普通の相手なら敵にならないだろうが………残念ながら俺は普通じゃねぇ! 『騎士級』を超えて『将軍級』なんだ!」


 ガツンと拳を突き合わせて鳴らすメランの身体から赤いオーラが吹き出し、強者特有の威圧感が襲ってくる。


 だけど、そんな余裕ぶるのは失敗だ。


「将軍級とか、よくわからないけど、これでおしまいだ!」


幻歩ファントムステップ

 

 メランの頭上にアキは霧のように現れて銅の剣を構える。突然出てきて、はい、おしまいだ!


『ファントムダンシング』


 6体の分身を作り出し、メランに一斉に斬りかかる。複数の鋭き刃により瞬時にその体は分断されて息絶える━━━はずであった。


「なぬ! 剣が通らない!」


 だが、銅の剣はメランの皮膚一枚切れることなく、止まっていたことにアキは驚いてしまう。どんなに力を入れてもびくともせず、不発に終わった分身たちが消えていく。


「俺の金剛の肌をしょぼい剣で切れるわけないであろうが!」


『ダイヤモンドナックル』


 メランが拳をダイヤのように硬質化させ、動揺したアキへと襲いかかるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ダイヤモンドナックル、劈開でパッカンだー‼ 幼女のカッティングが光るぜ!
メランが後半メノンになってるけど間違い?それともメノンが正解? あと、計算ができないのは幼女になったから?それとも元からとか………?
更新乙 やっぱ正体は幼女だったか! てか初めてBOSSらしいBOSSとの戦闘だな~ どうやって勝つつもりやら
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ