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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
2章 アカデミーに悪役令息は通う

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61話 マンション経営って憧れる?

「え~と、このお屋敷を寮代わりに使っていいの? 結構大きいよ、アキ」


 アスクレピオス侯爵家の屋敷。その離れの召使い専用家の前で、スピカがほわぁと口を開けて目を輝かせていた。


「本当だよ、アキ君。寮が破壊されてしまって、次の住居をどこにするか困ってたんだ。本当にこんな良い家を使わせてもらっていいの?」


「あぁ、構わない。まぁ………この周りの雑草やらを片付けたらな」


 カストールの感謝の言葉に本日はコブターンに化けているルックスYは気まずそうに目を逸らす。高位貴族の屋敷なのに荒れ果てた庭の奥にある建物だからだ。多少頑張って庭を整えようとした証に、背の高い雑草や壁に絡みつく蔦はなく、そこかしこで伐採された跡が残るのが痛々しい。


 だってねぇ……庭師の適性のある人がいなかったんだよ。とはいえ、庭師を雇うのも嫌だったので、武技でとりあえずは伐採しただけに終えたのだ。ケイに頼んだら、草むしりレベルを超えるので無理ですと涙目になったしね。


 お客様を呼ぶのには相応しくない屋敷になぜカストールとスピカがいるのかというと、彼らは平民のために寄親がいなかったからだ。寄親がいないということは、寮代わりに住める屋敷もないということになる。他の平民たちは皆裕福で王都住まいのため問題はなかったが、彼らは住むところがなく困っていたので、アキが声をかけたのだった。


 迷い家を手に入れた以上はこの屋敷には住まないので、放置するなら貸してあげようという優しい幼女心だ。あと、サブストーリーとかがあったらさりげなく誘導するつもり。おうちが近くならそれも簡単だろうしね。


「それじゃ私たちに任せてよ! 貴族のお屋敷に相応しいお庭に変えてあげる! アキはあの本邸に住んでるんでしょ? 他の召使いさんは?」


 相変わらず元気なスピカが腕まくりをして、ふんすと鼻を鳴らす。本当に庭を綺麗に整えてくれそうな勢いだ。けど、その後の質問が困るな。


「召使いはたまに来て掃除をしていく。それに俺はほとんど屋敷にはいない。その、あれだ。金が必要だからな。……そうだ、それよりもこないだの穴場の店。開いてたぞ。どうやらあの張り紙はいたずらだったようでな、お前らの分も錬金道具を一揃え買っておいてやった。穴場の店でな! 故障時の保証は穴場の店しか効かないから今後買い物はできるだけ穴場の店にするように!」

 

 もはやアキも迷い家を住処にしていて、実質あの屋敷は空であるが正直に言えないため、誤魔化すように、忘れていたと木箱から錬金釜やその他道具を取り出す。もう使わないからあげるよ。それと穴場の店をこれからは利用するように! 絶対だから! ファンタジーの世界で3年保証とかってあったっけ?


 だが、錬金釜を見て、スピカたちはぽかんと口を開けて、様子かおかしい。なぜか恐る恐ると口を開き尋ねてくる。


「えっ……これいくら? 高かったでしょ?」


「あぁ…………金貨一枚だな」


「金貨一枚!? ほんとに? これが?」


 驚くスピカに、ヤバいと焦るアキ。しまった、高かったか。でも、この品物をいくらで買ってきたか聞くの忘れてたよ! ゲームと違って金貨だけが通貨じゃなかったんだった!


「え~と、銀貨一枚? 安かったから! とても安かったから!」


 価格なんてわかんないよ。あたちは幼女だよ。はじめてのおつかいは召使いに任せたんだよ! ゲームでは金貨一枚だったよ!


 都合の悪い時だけ幼女心を取り戻すアキだが、なぜかスピカは瞳を潤ませて、それを誤魔化すように、うりうりと肘でつついてくる。


 なぜならば錬金術の道具は高額で、ソレが錬金術師への壁にもなっていたからだ。ワンセット金貨10枚する上に売り切れていたから、カストールたちは半分諦めていた。それがたったの金貨一枚なわけがない。どうやって手に入れたかは分からないが苦労したのだろうと、スピカはアキの親切心に嬉しくなってしまい、顔を赤面させる。


「アキは嘘が得意なんだから。でも………ありがと。王都中を探し回ったんだけど、なぜか錬金道具は売り切れだったから助かっちゃうよ。大切に使うね」


 大切そうに錬金釜を抱きしめるスピカ。でも、買い占めた幼女はここにいます。だって、穴場の店を使わなかったら困るからね。人これをマッチポンプと言うとか言わないとか。


「それにしても本当に助かったよ。でも金貨一枚で良いのかい?」


「カストールの言うとおりだよ。私たちもお金を貯めたから定価の値段を請求して!」


 カストールが感謝の気持ちを籠めて微笑み、ふんすふんすとスピカは鼻の頭がつくほどに顔を近づけてくる。この子のパーソナルスペースはどうなってるの?


「金貨一枚で充分だ。それ以上はいらん。本当に安かったんだ!」


「むぅ………。お人好しすぎるんだから」


 ふふっと照れ笑いを見せて顔を引くスピカ。その笑顔は幼女でなければイチコロの可愛さを持っていた。でも、残念ながら幼女なので効かなかった。


「にしても、なんで今日は眼鏡をかけてるの? 実は目が悪いの?」


「少し視力が悪いんだ。だからたまにつけたくなるんだ」


「視力が悪いとたまにかけたくなるの?」


 今日のコブターンは鑑定の眼鏡をかけている。なにせ主人公とヒロインだ。なにか珍しいアイテムを持っていないか興味があったし………この二人のどちらかが転生者の場合、珍しいどころか、普通なら手に入らないアイテムを持っているだろうからだ。油断をしない幼女、その名はアキ・アスクレピオスなのだ。まぁ、正直なところ、転生者とは思ってないので、興味半分の気持ちだけど。


『鑑定発動』


 まずはスピカを鑑定する。この眼鏡は生命体は鑑定できないが、道具ならポケットに入れていたり、隠し持っていても確実に鑑定する。普通の鑑定魔法とは違うフレーバーテキストで由来まで表示されるゲーム的なドン引き性能なのだ。性能がバレると社会的地位もなくなる非難を受ける可能性があるアイテムである。


『布の服』

『木のワンド』

『下着』

『財布』

『金貨11枚』

『銀貨2枚』

『銅貨8枚』

『ハンカチ』


 スピカの鑑定は以上であった。たいしたことのない装備だ。下着って、表記されてて少し安心もしたアキである。ブラジャーとか表記されたら、罪悪感が湧いちゃうところだった。


(この鑑定眼鏡、ボスキャラに使うと面白いかもな。良いアイテムを見逃すこともないだろうし)


 ゲームと違い、現実のこの世界。ドロップアイテムに頼らずとも全部回収できちゃうのだ。敵を財布代わりに考える良い子な幼女は、スピカの持ち物に面白そうなものがなくても落胆しなかった。それどころか、なにか良い装備をあげないとといけないかも考えていた。なにせヒロインだしね。


 ━━だが、カストールを鑑定して、その余裕の心は吹き飛んだ。血の気が引き、体が一瞬震える。


「ん? どしたのアキ? なんか顔色が悪くない?」


「そ、そうか? 最近はあんまり栄養のある飯を食べていなかったからな。少し体がだるいかもしれない」


「そうなの? 花壇で花や草を食べてるって噂は本当? きちんとご飯食べてる? あ、今日は私がご飯作ろっか? 居候をさせてくれたお礼!」

 

 様子のおかしいコブターンに、スピカが心配げに顔をのぞいてくる。そうしてパンと手を打ち笑顔となり手料理を作ると言ってきてくれる男の夢のパターン。居候からの料理コンボとかラブコメルートになるパターンだが………アキは全然そんな余裕はなかった。


「悪いが用事を思い出した。その家は掃除してないから、頑張って掃除しろよ? それじゃ、また今度な!」


「う、うん。それじゃまた後でね!」


「ありがとう、アキ。助かったよ」


 スピカが残念そうに手を小さく振り、カストールが爽やかな笑みでお礼を口にするのを後に、アキは立ち去るのであった。


           ◇


 屋敷に戻り、迷い家へと続く扉を潜る。扉はすぐに消しておく。生命体が中にいても、一つでも扉が開いていれば、他の扉は消すことができる。そして、常に開いている扉はポセイドン王国に設置した扉なので防犯対策はバッチリだ。海の中にあるポセイドン王国に来れる人間なんかいないから。


「あれ? アキ様、お早いお帰りですね。御学友に家を紹介していたのでは?」


 掃除をしていたケイがアキを見て意外そうな顔となるが、ムスッとしてコブターンの姿を解除すると、トコトコと部屋に入る。


「お嬢ではないですか。どうしたんですか? あ、今は一休みしてるんです。ほら、このビールはですね、昼でもビールを飲む文化を尊重してるんです」


「………」


 酒を飲んでいたシィがほろ酔い加減で言い訳を口にするが、無視してボスンとソファに座る。むふーと不機嫌全開でちっこい手を組む幼女だ。


「おやつを作りますか? カステラにします?」


「それどころじゃー、ないっ!」


 追いかけてきたケイの提案も無視して、ペチンとテーブルを叩く。幼女なので、全然迫力がない。それでも、むふーむふーとペチンペチンとテーブルを叩く幼女に、本当に不機嫌なんだとケイとシィが顔を見合わせる。


「えっと、お嬢。なにがあったのか、おねーさんに話してみませんか? これでも一応シスターなので、懺悔を聞きますよ? 今度は誰を陥れたんですか?」


 清らかなる微笑みで失礼なことを口にするシィである。だが、軽口で返すこともせずに、子猫のようにアキは唸ると息を吸って、再度ペチンとテーブルを叩く。


「大変なことだ! カストールは偽物だった。あいつ、星座だった!」


「星座? どういうことですか?」


「星座スキル『ジェミニ』で作った分身だったんだ」

 

 カストールを鑑定したら………人を鑑定できないのに、鑑定できてしまったのだ。


『星座スキル『ジェミニ』で作られた術者の分身。本体と同じステータスを持ち、スキルを貸与できる。また、殺されなければ消滅することもなく、分身が学んだスキルは術者も取得できる。人間と同等の魔法生命体。ゴーレムではないため、『支配ドミネーター』や『魔法解除ディスペル』は無効』 

 

 鑑定結果は驚くものだった。というか信じたくない表記だった。


「あたちが知っているとおりなら、戦闘時に分身を作るだけだったのに、現実では全然効果が違ったんだ! ぬぐぐ、どうりでスピカはカストールと二人で家に住むのに甘い空気を醸し出さないはずだよ。スピカはカストールが偽物って知ってるんだ! チクショー、これじゃどんなに頑張ってもメインストーリーが進まないはずだよ!」


 即ち、既にアカデミーに主人公は存在していなかったのだった。


「だからアカデミーが破壊されたんだ! きょわー。バグが発生してた!」


 果たして本当に主人公のせいなのか不明であるが、ゲームの大前提は崩壊したのであった。

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― 新着の感想 ―
自分も魔ーモットにやらせてたし他も想定しておくべきだった!? マヨキングも何時ぞやのボーン君みたく油断出来ない存在かもしれない
あ~ちゃんがてんとう虫コスプレして、「あたち、れでーばぐでち」とか言い出しそう。
更新乙 バグなのは幼女自身では!?
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