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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
2章 アカデミーに悪役令息は通う

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53話 マイルームって異次元にあるのかな

「幼女だとっ!? な、何者だ、ハコブ様を殺したなどと、冗談がすぎるぞ!」


「知らないかな、どんなに嘘臭くても………なんだっけ、真実だとかなんとか有名な名探偵の格言を」


 いまいち決まらないセリフで幼女は驚いているセツロたちへと言葉を返しながら、鍵をチャリンと鳴らす。


「油断したね。マスターキーを他人に見せたら駄目だよ。そうじゃないと書き換えられて、子鍵は使えなくなる。こういうふうにさ」


『リセット』


 その魔法の言葉は、見た目はなにも変わらなかった。だが、鑑定メガネをかけたアキの瞳には映っていた。


『迷い家の鍵:子鍵0』


 このアイテムは亜空間に存在するマイルームとも言うべき屋敷に入れる鍵だ。使用拠点を前もって決めておき、そこで鍵を使うと屋敷に入れる扉が開く。


 この鍵は子鍵を5個まで作れて、鍵ごとに使用拠点を作れる。即ち、6個の拠点を屋敷を経由して自由に移動できるアイテムなのだ。しかも侵入不可の安全な屋敷付き。


 セツロはこの鍵を偶然手に入れて、貿易をすることにした。普通に使っていても、多大な利益が出るのに、欲張ったセツロは密輸をすることで、より多くの利益を手にすることを選んだんだ。


 正直アホではないかと思うが、強欲な人間というものはそのようなものなのだろう。プトレマイオスの物資の運搬、拉致した人間を売買したり、危険な魔物を運搬していたりした。違法だからこそ大儲けができて、大通りから外れた店でも繁盛していたわけだ。悪人の外面は寄付やボランティアを活発にして善人を演じているパターンである。


「………よくわからないが、なぜ幼女なのかも理解不能であるが、良い度胸だ。たった一人で来るとはな。貴様は捕まえてプトレマイオスへ人体実験の素体として売ってやる。子機をすべてリセットしおって、思い知らせてやるぞ」

 

「おー、ほとんどゲーム通りの言葉だね。拍手しちゃうよ、パチパチパチパチ」


 猪のように凶暴なる憤怒の顔となったセツロが護衛たちに合図してアキを囲む。その様子を平然と見ながら、ふふっと、幼艶に笑う。妖艶じゃないよ、幼女だから幼艶だ。紳士諸君なら大喜びだ。


「本来は騎士団に報告して捕縛ルートもあるんだよ。このゲームは戦闘を回避できるパターンが多いから」


 セツロがワンドを取り出して、護衛たちが剣を抜くのを見ながら、パンと手を打つ。


「ゲームではその選択肢でも良かった。国からの報酬はあるし、この鍵を手に入れることができる時は既にポータルテレポートを使える魔道具か、魔法を使えたからね。この2つの魔法が使えるなら、この鍵はあまり意味がない。でも、現実だとこの鍵は絶対の安全地帯となるから重要度が変わるんだ」


「先ほどから意味の分からないことをブツブツと。おままごとならおしまいだっ、お前の裏に誰がいるか吐いてもらうぞ」


 人の話を聞かないセツロへと哀れみの視線を向けるとアキは飛翔して再びマモの上に乗る。


『悪逆非道が発動しました』


「お前らは死刑ということでしゅ。あたちのために死んでくりぇ」


「かかれっ!」


 アキが肝心な決め台詞で噛み噛みとなり、セツロは堪忍袋が切れて、護衛たちに叫ぶ。


 だが遅いんだ。既に準備はオーケーだ。


「マモ、やれ!」


「まきゅー!」


金剛岩牙ダイヤモンドタスク


 アキの言葉に、既に魔法の準備を整えていたマモが手を地面に付ける。マモの身体から魔力が噴き出して、地面に魔法陣を描くと、周囲の地面から煌めくダイヤモンドの槍が敷き詰められるように突き出てくる。


「な、が」


 一瞬で広がって突き出てくる金剛の槍を前に、セツロたちは驚愕の表情で身体中を槍衾で刺されて全員息絶えるのであった。戦闘時間わずか数秒である。


 血を噴き出して驚きの表情で死んだセツロたち、魔法の効果時間が切れて、金剛の槍は淡雪のように溶けて消えると、死体が地面に屑折れるのであった。


「固有スキル『金剛属性』を持ったマモの魔法の味をよく知ったまきゅ?」


 ひげをゆらゆらと揺らして、マモが得意げに笑う。マーモットが胸を張る姿はとってもラブリー。


「たしか土術の威力を大幅に上げるんだっけ。本来は岩牙なのに金剛化するとはたしかに強力だよ。それにいかにも魔法を使いそうなあたちたちを囲む敵も愚かだね」


「自身を中心にして発動する味方を巻き込む系統の範囲魔法は使い勝手が悪い代わりに強力だまきゅからね」


 今のは範囲魔法階位6『金剛岩牙』だ。これは術者を中心に周囲の敵を攻撃する魔法だが、そもそも魔法使いが敵に囲まれる事自体稀だ。それは前衛を通過されたことを示す。この魔法を使おうとすると周りの味方も巻き込むから、誰も味方がいない時か、味方は肩車するしかない。このように使うシチュエーションが少ない魔法は強力なのだ。しかも階位6からは威力の次元が変わるから、悪徳商人如き相手にもならない。


『クエスト:マイルームって異次元にあるのかなを潰しました。経験点五千取得』


「さて、この屋敷にある宝物は屋敷を含めて全部ボッシューだ。どれくらいあるか楽しみだね!」


「そうまきゅね! もちろんマモには金一封を………待つまきゅ!」


 鋭い声でマモが制止すると、ぼんやりしたようにぼーっと立ち尽くす。でもあれはぼーっとしているのではない。マーモットはああやって危険な物音とかを聞き分けているんだ。


「ご主人、新たにこの空間に入ってきた者がいるまきゅ。数は一人!」


「む、まだ生き残りの護衛がいたのか。全員連れてこいって言ったのに」


「護衛にしては、どうも動きが変まきゅよ。隠れながら近づいているまきゅ」


「隠れながらだって? ………ちょっと確認するか」


 幼女とマーモットは素早くてこてこと扉前に行くと、そっと外を覗く。なるほど、何者かが慎重に草むらに隠れながら移動しているのが見えた。


「扉閉めなかったまきゅ? 迂闊すぎるまきゅよ」


「この空間は生きている生命体がいると扉を閉められない仕様なんでしゅよ。だから蚊とかゴキブリとかも入れないように気をつけないとね。まぁ、食べ物がなにもないから、すぐに全滅するけどさ」


 軽口を叩きながらも相手がどんな奴かを確認し………深くため息をついちゃう幼女。


「危なかった………一歩あたちたちが早かったようでしゅ、あいつは鍵狙いだ」


「なんでわかるまきゅ?」


「なんでって、それは………」


 マモの質問に思わず口ごもる。


 隠れながら近づく相手。わずかに体がボヤケているので、ステルス系統のスキルを使っているのだろうが、最大レベル10の幻術を持つアキと土術レベル6のマモには通用しない。魔法抵抗は戦闘系統のレベルを成功率に使われるから、アキとマモはかなりの抵抗力を持つんだ。


 口ごもった理由はというとだ。黒尽くめの服装に黒いコート。顔は口元だけを覗かせる仮面をつけて、腰には日本刀を下げている。中肉中背で雰囲気から少年っぽい。


「あいつ転生者だ………」


 ああいう服装をするのは転生者しかいねーよ。うん、わかるわかる。そういうのってやってみたいよね。あいつの名前は痛々しくて見てられないから『厨二病』にしておこうかな。


 深くため息をつき、肩を落としちゃった幼女である。やっぱり転生者はまだいたかぁ。いるんじゃないかなぁとは思ってたよ。


「転生者って、マヨネーズ王?」


「………マヨネーズ王かもしれないが、雰囲気が違う、たぶん別人だ。しかもクリア済みだな」


「なんでわかるまきゅ?」


「ここに入学式が始まってすぐ来るなんておかしい。セツロに勝てる自信があるんだ。ということは、だ。たぶん最強ビルド構成で育ててるに違いない。自動スキル取得じゃ、絶対にセツロを倒せる強さを持っているはずがないからね。手動でスキルを取得できるなんて、なんてチートなんだよ、ずるい、チート禁止!」


 恐れていたことだ。アキと同じくクリア済みのプレイヤー。何周クリアしたかは分からないけど、手動でスキルを取得できるのは大きい。強敵になるだろう。

 

 チートだ、ズルいよとぷんすこ怒る幼女は、好奇心に負けてカードマスターになったことを棚に上げていた。


「それじゃここで殺すまきゅ? 放置していれば最強になるまきゅよね?」


「う~~~ん、それはなぁ、相手は善人かもしれないだろ? 少なくとも悪人に手を貸すタイプじゃないなら殺すのはなぁ」


 殺せ殺せと常に口癖のように呟く幼女だが、さすがに転生者に対しては良心が働いた。同じ地球人で、悪人でなければ殺す理由はちょっぴりしかない。


「最強ビルドで裏で動くキャラなんて面白いに決まってるからなぁ。あたちは弱々しい幼女なのにズルい。あたちは弱々しい幼女なのに」


 死体だらけの屋敷で悔しがる弱々しい幼女、その名はアキ・アスクレピオス。


「ならスルーして逃げるまきゅ?」


「目的がわからないんだよなぁ。マヨネーズ王みたいに主人公ポジションを奪おうとする分かりやすい奴ならともかくとして、強さを求めるだけなのか、影に動く謎の実力者を楽しみたいのか、はたまたお金持ちになりたいとか、権力者につきたいとか。情報が全く足りない」


 考え込むアキを他所に、着実に近づいてくる厨二病。レベル3くらいなら、誤魔化せるんだろうけど、バレバレだと草むらから草むらへと移動する姿がちょっと間抜けでもある。


 あまり時間はない。アキは目をつむり高速で思考を回すと、目を開く。


「よし、情報が足りないなら集めるまでだ。マモ、お願いがあるんだけど」


「それ、お願いという名の強制まきゅよね………」


 つぶらな瞳をジト目に変えるマモだけど、たしかにそう言い換えることもできるかもね。


          ◇


 草むらから草むらへと慎重に厨二病は隠れながら移動をして、屋敷に辿り着く。ふぅと息を吐き、そっと扉を開けて中を覗き込み………嘆息するとゆっくりと扉を全開にする。


「やれやれ、これも僕が動いたからか………。僕のせいか、はたまたマヨネーズ王のせいか………難しいところだね」

 

 ホールには死体が転がり、血溜まりができている。死臭が広がる中で、うずくまっているものがあった。


「魔物を運ぶのに失敗したか………。セツロがここで死んでしまうのは予想外だったよ。少しの行動で結果が変わる。バタフライ効果と言うやつかな」


 うずくまっているものが立ち上がる。それは闇色の毛皮を持つネズミのような魔物であった。だが二本足で威嚇するように立ち上がる姿は3メートルはある。


「まきゅー」


 鳴き声をあげて、牙を剥くその姿は凶暴なる魔物であった。


  マーモットは中ボスとなった。

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― 新着の感想 ―
デカイマーモットとか倒せる気がしませんね……無限にモフモフしたい……
マーモットが時間を稼いでる最中に急いで回収しないと!
やはり他にも転生者がいましたか。 よほどのバカじゃなければ気づくと思うけど、経済チートやらかしたマヨネーズ王は、自分は転生者だと世界中に暴露してしまったわけですね。 アキは同じ境遇の転生者が複数存在す…
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