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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
2章 アカデミーに悪役令息は通う

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52話 連鎖クエストでも分かりにくいのってあるよね

「うわ~ん! なんで! どーして! お店を引っ越しするなよ! 困るでしょ、あたちが困るでしょ! 儲けるチャンスなんか見逃して貧乏なお店を経営していてよ!」


 カストールとスピカに慰められて、なにをやっても失敗する可哀想な悪役令息という、ある意味、ゲームと同じような立ち位置でいて、全く違う立ち位置となった悪役令息ルックスYは屋敷に戻ると、幼女の姿に戻って、悔しがっていた。


 ちっこい身体を寝そべらせて、ペチンペチンとソファを叩いて悔しがるアキである。もはや幼女は涙を流して駄々っ子モードだ。


『あ~ちゃんも。あ~ちゃんもペチンペチンしゅる! あ~ちゃんペチンペチンとくいだから! ペチンペチンマスターだから!』


 そして、そんな面白そうなことを見逃すことはないあ~ちゃんがお強請りしてくるので、タッチして入れ替わる。


「あ~ちゃん、ペチンペチンとくい! わ~んわ~ん、ペチンペチン、ペチンペチン」


 ちっこいお手々を振り回し、あ~ちゃんはとても嬉しそうにソファを叩くので、アキは幼女教育にとても悪いことが判明した。シーウィードたちが拍手して褒め称えるので、あの人魚たちもあ~ちゃんに近づけないほうが良いかもしれない。


 しばらくペチンペチンマスターが活躍したあと満足してあ~ちゃんはおひるねしゅるねと、アキに主導権が戻したので冷静に考え込む。


「寂れた穴場の店は必須なんだ。早急にあの店を買い取り、お店を開くしかない。そうしないと後々困る事になっちゃう」


 アスクレピオス領都に向かった店主を探すのは無理だろうし、そもそも王都では儲からなかったから、引っ越したのだ。戻ってきてくれるとは思えない。


 でも、あの店は色々なイベントで必要になるんだよ。少なくても共通ルートで使うときがあるから絶対に必要だ。


 なら、どうするか? 答えは一つだ。


 アキたちが店をやるしかないのである。


「でもアキ様、お金ないですよ? えっと屋敷の維持費を使い込みますか? 食事が一品減っても大丈夫です。その代わり、オヤツは許してください」


「我らの持つ資金もお使いください、姫。我らの持つ資金は全て貴方様のものです。でも、姫様のドレス代は別でお願いします」


「まぁ、あんまり使わないでいるから、俺の給金をつかっても良いですぜ、お嬢。その前に幸運が訪れる壺を買ってきて良いですかね?」


「あ、誰か酒代貸してくれませんか? 王都ではまだただ酒飲めないんですよぉ」


 ケイたちの忠義溢れる言葉に泣けてくるほど嬉しい。約1名のセリフは完全に聞かなかったことにして、それでもその言葉を受け取るわけには行かない。


「あたちが全財産をおとーさまたちに譲ったから、皆からお金をもらうなんておかしいよ。これは予想できなかったあたちのせいだし、店を買えるくらいのお金はあるから大丈夫。部下とお金のやりとりをするのは絶対に厳禁だしね」


 絶対にトラブルになるし、コンプライアンスにも引っかかるよと、前世の考えを口にして優しく微笑む。


「でも、それならお金はどうするんですか?」


「だいじょーぶ、すこしばかりお金は用意できるからね。金目の物ならあるからさ」


 ハコブの屋敷から運んできた木箱を見て、むふふといたずらそうに微笑む幼女であった。


           ◇


 王都には様々な店があるし、同じような品揃えの店も数多くある。それは王都の人口の多さと、豊かさの証しだ。


 その中で大通りから一本外れた場所にある雑貨屋『セツロ』は人の動線から外れた場所にある雑貨屋であるのに、結構繁盛していた。大通りの大店と遜色ない大きな建物で、大きな硝子張りの窓がついており、建物自体もしっかりとした煉瓦製だ。


 客は意外なことに大通りの店とそう違いはなく、大勢が訪れて繁盛している。剣や鎧、ポーションから魔道具まで幅広く多くの品物を揃えており、商品も安いのが理由だ。


『でも、大通りよりも安いまきゅ? 損して得取れってやつまきゅね』


『それはどうかな、この店にはひみちゅがあるんだよ。得して得している店なんだ』


『大儲けできるコツまきゅね。ぜひその方法を教えてほしいまきゅ』


『さて、それをあたちたちに教えてくれるかは、運次第かもね』


 店の前に立つのは超幼魔生物アーモットだった。いつもの幻影魔法を使い、他人が見ても革鎧に古びたマントに数打ちの剣を腰に下げた平凡な冒険者に見えている。メガネをしているのが少し印象に残る程度だろうか。今回、金策をするのに、アキはこの姿で訪れていた。気づいたんだけど、『幻身』って見かけを変えるから、ローブとかで身体を覆わなくてもバレないんだよね。だから、貧相な青年の姿をとったのだ。


「いらっしゃいませ〜。セツロへようこそ、お客様」


 笑顔で出迎えてくれる店員。その笑顔には怪しさはなく、店内もガラス窓を大きく取って中が明るくなるように作られており、雰囲気の良い店だ。


「お客様、本日はどのような御品をお買いになられたいのでしょうか? お客様のご要望にあった物をご用意致します。失礼でなかったらご予算をお聞きできれば、なお、良い品物をお勧めできるかと思います」


 さり気なくアーモットの身なりを確認しながらも、その態度に変わりはない。優良店で人気があるのもわかるサービスっぷりだ。


(ま、見かけだけだけどね。それでも上手くいっていることは確かだ)


「んんっ、とりあえずは売るものがあるのだが、店長を呼んでほしい。ハコブの物で例のお方に渡すものだと伝えれば良い」


 いかにも重要そうに、こっそりと小声で伝えるアキ。対して店員の笑みは深くなり、改めてお辞儀をしてくる。


「かしこまりました。すぐに店長をお呼びしますので、こちらにどうぞ」


 多くのお客がいる中を店員に案内されて進むアーモット。注目されると思いきや、その姿格好でなにか依頼を受けた冒険者かなにかだろうと、皆の注意は消えてなくなる。


 そうして、スタッフ用の通路をしばらく歩くと、ろうそくの明かりのみが光源の部屋に到着した。ソファとテーブルだけで、他にはなにもない殺風景な部屋だ。秘密の会談に相応しい怪しい部屋だった。


 少々お待ち下さいと店員がさり、待っている間に召使いがお茶を置いてくれるが、飲むことはしない。飲むことはしないから、マモは手を出さないように。


「おまたせしました。ハコブ様の手の者とか。部下は司書の方しかいなかったと認識しておりましたが、どなた様でしょうか? 申し訳ございませんが、貴方様のことをわたくしは存じませんでして。それにハコブ様は殺されたと聞いておりますが?」


 柔和な笑みを見せながら、ぶくぶくと膨らんだ身体の中年の男性が入ってくる。脂肪で埋まりそうな目は細く鋭く狡猾そうで、笑みを作る顔を台無しにしていた。その後ろからもぞろぞろと護衛たちが入ってきて、アキを包囲するような立ち位置となる。明らかに疑っていたが、予想通りなので、アキは全く動じなかった。


「つまらないパフォーマンスは止めるんだな、セツロ。あのハコブ様がアカデミーの連中などに簡単に殺されるわけがないだろう。万一のために自分そっくりなキメラモンスターを用意していたのだ。殺されたのはそっちで、今は王都の隠れ場所に潜んでおられる」


 肩を竦めて、堂々と話すアキ。この太った男はこの店の主人であるセツロだ。セツロはプトレマイオスに運ぶ物資の経由役で、ハコブからの横領品も扱っていた。ハコブを見つけるためのサブクエストの一つで、クリアしてもクリアしなくても大丈夫な敵だ。何周もしないとクリアもできないクエストと言い換えたほうがいいかもしれない。こいつのクエストは探索時に効率的な調査をしないと、直ぐに勘付かれていなくなるんだよ。俺もクリアしたのは5周目だった。


 それを簡単にできるのは、ゲームの知識がソースだからだ。ゲームチートって、一番厄介なのはこういった敵の情報だよな。


「む………左様ですか。たしかにハコブ様ならば可能と言えるでしょうか? しかし、その証拠を見せてもらえませんとこちらとしても困ります」


「わかっている。あのお方と合流するために、『迷い家』に置いておいた魔道具を使用する必要がある。それを受け取りに来た。さっさと『迷い家の鍵』を出せ。こちらは合言葉も聞いている」


「合言葉も………良いでしょう、ハコブ様ならば死んでも合言葉を自白することはありますまい。それならばこの場で鍵を使用して頂く。申し訳ありませんが、信じ切ることができないこちらの立場も考えてください」


 アキが苛立ちを隠すかのように、吐き捨てるようにいうと、慌ててセツロはポケットから小さな鍵を取り出した。見た目は南京錠でも開けるためにあるような武骨な銅の鍵だが、鍵全体に古代語が刻まれており、不気味なるオーラを纏わせている。


「どうぞ。鍵に触りながら合言葉を口にしてください」


 鍵を奪われないようにか、緊張した面持ちでアキを見てくるセツロだが、合言葉など楽勝である。眼鏡の位置を直すように触りながら鍵を見て、人差し指でそっと触り、おもむろに口を開く。


『迷い家の鍵:子機5』

『設定中の起動パスワード:月が明るさを取り戻し、南南西に星は光、北北東に影あり。中心には虚ろう扉』


 『鑑定の眼鏡』の映す文字通りに。


「月が明るさを取り戻し、南南西に星は光、北北東に影あり。中心には虚ろう扉」


 その言葉を言い終わると鍵が光り、壁に光でできた扉が現れる。アキたちが見ている中で光の扉は開くと、霧に覆われた世界が垣間見えるのであった。


「これで証は充分か? では行くぞ。人手が欲しいから、この場にいるお前の護衛たちも全員連れてこい」


 扉が現れて本当にハコブの手の者と安心したセツロが気を緩めた瞬間に、自然な様子で鍵を取り上げるとアキは中に入る。セツロも目線で部下たちに合図をすると、ぞろぞろと素直についてきた。


 中は霧に覆われて陽射しが遮られて、ぼんやりとしか明るくない場所だった。目の前には蔦に覆われた幽霊屋敷のような洋館が建っている。


「ゲーム通りだな。よし、中に入るぞ」


 ためらうことなく洋館の扉を開けて中に入るアキ。外側はボロボロの屋敷に見えて、中は普通の内装だ。広々としたホールで、絨毯が敷かれており、奥に階段があり、絵画が飾られていた。壁の隅には多くの木箱が置いてあり、無造作に様々な品物が入っている。


「あの、申し訳ありません、ハコブ様の部下の方。その鍵をお返し願いますか? それとお名前をお聞きするのを忘れていたのですが」


 追いかけてきたセツロがヘラリと笑いながら尋ねてくるので、アキはフッと笑いながら鍵を見せつけるように摘む。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。とりあえずあれだ、あのお方あのお方詐欺には気をつけた方がいいでしゅよ。ちゃんと上司の名前はなんですかと確認しないとね」


 漫画とかでよくあるパターン。敵は『あのお方』と言って名前を出さないんだ。いつも不満に思ってたんだ。はよ、名前を教えてよと。


「あのお方あのお方詐欺?」

 

 そう。あのお方って、実はこっちにとっても使える名称だと気づいたんだ。


「そう取引先の名前を確認しないから引っかかるんだ。まぁ、自己紹介はしておくよ」


 チャリンと鍵を鳴らして、幻影を解除しマモから飛び降りると、いたずらそうに笑ってあげる。


「あたちの名前はハコブを殺した者、それでお前らには充分だろ?」


 そうして小鳥の鳴き声のような可愛らしい声で幼女は自己紹介をするのであった。

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― 新着の感想 ―
シナリオブレイカーあっちゃん
幸運が訪れる壺が買える金は持ってなくてよかった。ひゅー、危ないところだったぜ。
"超幼魔生物アーモット" ← どういう思考回路していたら、こんなモノが発想できるのかとアキの正気を疑っていましたが、ちゃんと役に立っていますね。 考えてみれば、アキは配られたカードで精一杯やりくりして…
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