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乱舞るロンドはエンドを望む  作者: 佐久良 明兎
1章:来訪者とウーパールーパー
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☆開幕イニシエイション!

 幸せな現実となるはずだった、夢を見ていた。

 

 体感としてほんの十数分前まで、目の前にあったはずのそれ。

 今回こそは全てが上手くいくと。

 そう、信じていたのだ。


 けれども。

 最後の最後で、どうしようもない事実を、過去を、解ってしまった。

 問題は最初からだった。ただほんの少し立ち回っただけの、付け焼き刃の対処では、駄目だったのだ。

 今度こそは。

 今度こそは、根本から全てを、取り戻す。




 目を開けて、歯を食いしばると同時。

 しかし現実の自分が置かれている状況に、愕然とする。

 

 慌てて枕元にある携帯電話をひっ掴めば――そもそも、この機械が手元にあること自体が、本来の目論見から既に完全に外れてしまっていることを証明しているのだが、ともあれ――もどかしく開く。

 

 2005年6月9日0時0分。

 

 携帯電話の画面に表示されていた文字に、顔を歪めた。

 無意識のうちに舌打ちして、申し訳程度にかかっていたタオルケットを跳ね飛ばすと、両手を組み合わせて力を込める。

 が。

 

「まだ出来ないよ」

「なんで」


 思ったような効果が得られず、代わりに返されたその声へ苛立ちまぎれに反論すれば、しかしすげない答えが返ってくる。


「自覚してるだろ。連続はさすがにムリだ」

「無理って、どうして」

「一言で言やぁ、エネルギー不足だね。

 今は寝ときな。どうせ何もできやしない。次の夜が来れば多少ましになるだろうから、それまで待つんだね」

「……分かった」


 納得したわけではない。

 けれども、相手がそう言う以上は、確かにどうにもできはしない。

 焦燥感と無力感に胸を焼かれる思いをしながら、倒れるようにしてベッドに沈み込んだ。


 


 ******



 

 見慣れた風景、見慣れた学校、見慣れた友人。

 見慣れた幸せ、の中に溶け込んだ異分子なのだ、と、授業を聞き流しながら一人思う。

 それでも特に問題はない。受験生ではあるものの、授業は演習になっているものが多いし、だいたい既に履修している。

 何度かやり直した夏ではないけれども、一度経験した未来には違いないのだから。


 それにしても。

 大変に中途半端なタイミングであるせいで、あまりに手持ち無沙汰だ。動き出すには早すぎるのに、取り戻すには遅すぎる。

 でも、それだって関係ない。どうせ、夜になったらまた戻るのだから。

 もっと、もっと、前へ。

 




 どうにも皆といる気にならず、適当な口実をつけて一人になり、街をぶらついていると。

 唐突に――本当に唐突に、背後から、衝撃が襲った。

 固形物ではない、何か、凝縮された空気の塊のようなものを投げつけられたみたいな、――そんな感触。

 何が起こったのか分からないまま、身体が制御できなくなり、膝をついた。

 

 意識を失う直前、聞き慣れた声がする。

 

「あーあ。せっかくいいオヤツになると思ったのに」


 それは一体どういう意味かと、噛み付く暇もない。

 


「でもま。面白いから、いっか」

 


 そう言った気がしたが。

 結局、問いただすことはできないまま、崩れた。



 

******



 

「間に合った、のか」

「ひとまず今回はな」


 その声は、倒れた人物には届いていない。

 そして同時、意識を失う間際に何者かが発した言葉も、彼らには届いてはいなかった。


「最悪は防止できたけど。問題はこれからだ」

「分かってる」


 倒れた人物を担ぎ上げ。

 梅雨入り目前の雲の切間から薄ら覗いた、抜けるような青空を仰ぐ。


 

 

「ここからが正念場だ」

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