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チェイン・ストーリー 〜白光の冒険者〜  作者: 桜町ナユタ
第一章 勇者候補の婚約者
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金貨5枚の依頼②

 応接室に着くと、クリスは扉をノックする。昨日にも聞いた声と同じ声が、扉越しから聞こえた。


「入れ」


 その声を聞き、クリスは扉についている取手に手をかけ、人が余裕で通れるくらいまで開けると、レオンに顔を向け空いている左手で手招きをした。

 レオンはクリスに従い、応接室に足を踏み入れた。後ろで扉が閉まる音がする。


「ギルド長、レオンちゃん連れてきたよー」


 明るい声を背に、レオンは応接室を見渡す。見栄えの良い花が活けてある花瓶や色鮮やかな風景画が飾られている。部屋の中央には、2つのソファが1つのテーブルを挟むように設置されており、ソファには向き合う形で2人の人物が腰掛けている。

 1人はギルド長のランドルフ。体格が良すぎるせいか、3人がけのソファの半分くらいが埋まっている。

 

 それじゃあ、おっさんの前に座っているのが今回の依頼者か。


 さて、どんな物好きだろうかと思いながらレオンは依頼者に目を向けた。そして目を見張った。



 そこには人の目を惹く美女の姿があった。アルディア学園の制服と貴族階級の者だけが身に付けられる白のマントを身に纏い、姿勢正しくソファに腰掛けている。

 入室していた時から向けられていたのか、現実的とは思えないほど端正な顔立ちの中から、夜を連想させるような瞳がまっすぐとこちらを射抜く。

 レオンは目を見開くと、同時に頭の中に思い浮かんだ。


“あの、すいませんが少しよろしいでしょうか?”


 凛とした声が脳裏に流れた。


 そこには昨日、ギルドの掲示板前で出会った女性が座っていた。



『…これはまた、すごい偶然じゃな』


 クラウも目の前の光景に驚いたのだろう、聞こえてきた声が上ずっていた。

 そんなレオンとクラウの内心など知る由もないランドルフは、レオンを見て珍しいものを見たかのような表情が浮かぶ。


「お、時間通りの到着とは珍しいな」


 明日は雪でも降るのか、と冗談をつぶやくランドルフ。


 どうやら、俺は時間を守らないやつと、周りから思われているらしい。


 ランドルフにも一言物申したいが、今は依頼を優先させるべきだと思いレオンは、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。

 

「クリス、こいつの案内ご苦労。あと紅茶のお代わりとこいつの分を用意してくれ」


「はーい」


 ランドルフの指示にクリスは、応接室から出て行く。音を立てて扉が閉まると、ランドルフは首を動かしレオンに自分の隣に座るように促す。

 1人で3人がけのソファの2人分のスペースを埋めているランドルフの隣に座ることに、わずかながら、いやかなりの抵抗があったが、自分だけ立っているわけには行かず、レオンは促された場所に移動する。

 レオンがソファに腰掛けると、ランドルフは口を開く。


「さて、人が揃ったし依頼についての話を始めたいが…」


 ランドルフはレオンとセフィーナを交互に見る。


「とりあえずは、お互いに自己紹介でもしてもらうか」


 そして、レオンに視線を向けると、あごで依頼主を指すように動かしている。

 

 どうやら、俺から挨拶をしろとのことらしい。


 改めて依頼主である少女を見ると、冷たいと印象を与える深く黒い瞳がレオンを刺す。


「あなたの依頼を受けることとなりました、レオンハルトと申します。よろしくお願いします」


 レオンは淀みなく言葉を吐き、慣れたように一礼をする。

 レオン自身も堅苦しいは苦手であるが、相手は貴族であり、下手したら問題になる事もある。

 それに、今は背に腹はかえられない状況である。ここで依頼を受けることができなければ、家賃が払えないのだ。


『お主がその態度を取ると気持ち悪いな』


「テメェがその態度を取ると気持ち悪いな」


 息ぴったりのペンダントとギルド長のつぶやきに、レオンは口元が動きそうになるがなんとか耐えた。

 

 こいつら後で覚えておけよ…


 仕返しを誓うレオンを尻目に、ランドルフは少女に挨拶を促す。


「次は、嬢ちゃん頼む」


 ランドルフの言葉を受け、少女はまっすぐとレオンを見ながら口を開いた。


「セフィーナ・シャルロット・ド・ローグリアです。よろしくお願いします」


 セフィーナは、優雅に一礼をする。それは慣れているのかレオンのものよりも洗練され、また気品のあるものだった。

 セフィーナが顔を上げるのと同時に、扉がノックされた。

 ランドルフは入室の許可をすると、先程出て行ったクリスが、お盆に紅茶の入ったカップを持ち入ってきたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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