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飲酒中のゲームはプレミしがち

「カズマ先輩ズルいです。私に隠れて水希先輩とイチャイチャするなんて……」


「一緒にゲームしてただけだ! イチャイチャはしてねえ!」


「じゃあ私とも一緒にゲームしてくれますよね!? 今夜! 夜通し!」


「夜通しはやめないか……? 明日も普通に仕事だぞ」


「むーっ」と口を膨らませて駄々を捏ね始める。


「私だってしたいもん! 夜通しプレイしたいもん!」


おいやめろ、変な言い方すんじゃねえ。


視界の端で水希先輩が口を押さえて笑ってるだろ。


「しょうがねえな、今夜付き合うよ」


「やったー!! カズマ先輩だいすき♪」


「やめろ、くっつくな!」


抱きついてきた柚季を引き剥がし、2人で仕事に戻った。


「よぉーし、今日は残業せず頑張るぞー!!」


柚季は気合十分といった様子でテキパキと作業を進めていく。


……こんなヤツだが、仕事は早いんだよな。


俺も負けじと手を動かし始めた。


◆ ◆ ◆


「さあ、先輩。定時ですよ! 早速やりましょう!!!」


「少しくらい待てよ!」


柚季は定時ジャストに打刻し、すぐにゲームを起動してスタンバイする。


一方、俺は今まさに仕事が終わり勤怠システムに打刻するところだ。


「私は先に帰るから、後は2人で楽しんでね」


「「お疲れ様です!」」


水希先輩も今日は定時退勤したようで、俺たちを残してオフィスを後にした。


「ここからは2人きりですね、カズマ先輩♪」


「まあ、そうだな」と適当に返事しつつ打刻しようとしたその時、社内チャットに通知が来る。


嫌な予感を感じつつも、気づいてしまった以上は未読無視するわけにもいかない。


渋々チャットを開いたが、どうやら予感が的中してしまったようだ。


「……すまん、ゲーム開始は10分待ってくれ。クソ野郎が仕事投げてきやがった」


「また岩谷部長ですか!?」


岩谷部長は俺たちゲーム部と別の部にいる管理職で、社内では有名な人物だ。当然、悪い意味で。


つい先日も俺に仕事を丸投げしてきやがったクソ野郎なので、こんなヤツを管理職と呼んで良いのかは甚だ疑問だ。


「やりたくは無えが仕方ねえ。すまんな、待たせちまって」


「それなら私、お酒とおつまみ買ってきますね! 嫌な仕事の後は飲みながら遊びましょう!」


「悪いな」


「いえいえ」と柚季が足早にオフィスを後にする。


柚季は普段の態度がアレだが、本当に気の利くヤツなのだ。


こういうところに何度も助けられている。


「さっさと終わらせてやるぞ畜生」


独り言を呟きつつ、すぐさま仕事に取り掛かった。


◆ ◆ ◆


「先輩、準備はいいですか?」


「もちろんだ」


「それじゃあ……」


「「乾杯!」」


結局10分では終わらず、20分かかってしまったが無事仕事を終わらせることができた。


ごくごくとハイペースで缶ビールを空けた柚季は早くも2本目の酒を飲み始める。


「ぷはぁ〜〜〜っ、美味しい〜〜〜♪」


しかし、ホント旨そうに飲むよな。この飲みっぷりを見てると俺も思わずペースが上がってしまう。


「さて、カズマ先輩。やりましょう!」


柚季は個包装の茎わかめを食べつつタクオタを起動する。


「今日も先輩の厳しさを教えてやろう」


こうして2人で酒やおつまみ片手に勝負を重ねていくのだった。





「あ〜っ! クソ、俺のプレミか……」


「えへへ〜、先輩酔ってるんじゃないですか〜?」


「そういうお前もプレミが増えてるからな」


さすがに酔いが回ってきた頭では互いにプレイミス(プレミ)が目立つようになってきた。


とはいっても構わず続けるのだが。





「ねえ、カズマ先輩。私って魅力ないですかね?」


突然何を言い出すんだと顔を上げると、顔をほんのり赤らめながらも柚季の目は真剣だった。


「私は先輩とゲームするの楽しいですけど、こんな後輩の相手ばかりじゃ疲れちゃいますよね」


酒が入るとネガティブになるタイプなのか、それとも本音が溢れているのか。


どちらにせよ、俺のやることは一つ。


「お前は十分魅力的だよ」


俺も本音をぶつけた。


「かわいい後輩からゲームに誘われてんだ。嬉しいに決まってんだろ」


柚季の瞳が潤いを増していく。


「で、でも、私が……その、えっちな誘いとかしても、いつもスルーされるじゃないですか」


「それは……だな」


はぁ〜っと観念したようなため息をつき、覚悟を決めて話し始める。


「一線は越えないように我慢してんだよ! 俺だってギリギリなんだから、そういう風に誘ってくんじゃねえぞ!」


「〜〜〜〜〜っ!」


俺から意識されているとわかった柚季はより一層顔を赤くしていく。


「………………せんぱいのえっち」


「なんでだよ! 我慢してるっつー話だろ!」


「私のこと弄んで楽しいんですか!?」


「それは俺のセリフだ!」


「隙アリー!」


「んあっ?」とスマホを見るとLOSEの文字が表示されている。


タクオタは長時間操作しないと敗北になる仕様だが、俺と違って柚季はあらかじめ操作を完了させていたらしい。


「こ、コイツ……!!」


「へへ〜ん、私は抜かりない女なんですよ♪」


「よしわかった、本気のデッキでボコボコにしてやる」


「優しくしてくださいね……♡」


その後もギャーギャー言いながら勝負を続け、気づけば明け方になっていた。


「さすがに……疲れたな」


「まだ始業まで一眠りできますよ。全然大丈夫じゃないですか♪」


「俺は大丈夫じゃねえ……」


4つしか年が離れてないのに、なんだこの体力差は。


早くも衰えを感じる。


「それでは、帰って一眠りしましょう! あ、もしかして一緒に寝たいとか」


「思ってねえ! ほら、帰るぞ」


「え〜」と言いつつ、柚季の顔は照れたような赤みを帯びていた。


……自分から誘っておいて照れんなよ。


意識しないよう努めて、2人でオフィスを後にした。


頭も体も疲れてるが、こんな朝帰りもたまには悪くないな。

お読みいただきありがとうございます!


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