後悔した時は家で1人騒ぎ立てる俺
「あああぁぁぁぁ!!! もったいねぇぇぇぇぇ!!!!!」
出張から帰宅後、俺は部屋の中で一人叫んでいた。
元々は出張から帰宅後も仕事する予定だったが、あんなことがあった後なので、2人とも有給を取ることにしたのだ。
だからその流れで水希先輩を昼食にでも誘う時間は十分あったわけで。
なんなら休憩していく時間だってあったわけで。
それなのに俺は緊張で何も誘えなかったわけで。
そりゃ叫びたくもなるってもんよ。
「ちくしょおぉぉぉ!! こんな俺だから彼女ができねえのかぁぁぁ!?」
しばらく騒ぎ散らかしたが、途中でむせて我に返った。
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一方その頃、水希の家では……。
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「あああぁぁぁ〜〜〜〜!!!
なんでランチとか誘わなかったの私ぃぃぃ〜〜〜!!!!!」
せっかく2人きりで親密な関係になれる大大大チャンスだったのに、自分から誘う気恥ずかしさが勝ってしまい、結局こうして1人で帰宅した。
「ランチは別に良いんだけど、せめてカズマくんを家に誘えたら……」
って、何考えてるの私!?
自分の口から大胆発言が溢れていたと自覚し、急激に顔が熱くなる。
そもそもこんな状態で2人きりなんて無理だ。それこそ恥ずかしさで固まってしまう確信がある。
「はぁ……お腹空いたわね」
気晴らしにコンビニにでも向かいますか。
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そして、コンビニにて。
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弁当コーナーを眺めながら、俺は大きなため息をついていた。
1人で家にいると余計なことを考えてしまうため、気晴らしにコンビニに来た訳だが、
「水希先輩とどんな顔して会えばいいんだ……?」
今朝のことを思い出すといまだに顔が熱くなる。
「私がどうかした……?」
「っ!?」
首がちぎれるほどの勢いで背後を振り返ると、そこには私服の水希先輩が立っていた。
「せせ、先輩!? なんで……?」
「なんでもなにも、急に有給取ったから暇なのよ。カズマくんも同じでしょ?」
「いや、まあ、そうですけど……」
「それなら一緒にお昼食べない? そろそろアレの時期だから、ちょっとした雑談も兼ねて、ね?」
水希先輩は不自然なほど自然な態度だ。
いや、自然な態度で接してくれているのだ。
「いいですね」と、弁当を買って2人でオフィスに向かった。
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「あれ? 2人とも今日お休みですよね?」
「そうよ。だからこれは遊びに来ただけ♪」
首を傾げる柚季に返事しながら、ラフな雰囲気でオフィスを歩く水希先輩。
ギャップ萌えというのか、こうした姿を見るとグッとくるものがある。
「おいカズマ。鼻の下伸びてるぞ」
「伸びてねえわ!」
すかさずアリスから口撃されたが、無事受け流すことに成功……したよな?
「ちょっとカズマくんと雑談したいから、会議室使うわね」
「今日は誰も使う予定ないので大丈夫です!」
すばやく共有カレンダーで会議室の使用予定を確認してくれた柚季に礼を言い、水希先輩と俺は会議室に入って弁当を広げた。
「さて、カズマくん」
真剣な風を装って話しかけて来るが、自分で笑いを堪え切れていないので口元が笑っている。
はい、かわいい。
ーーって違う違う! 一度冷静になれ!
せっかく水希先輩が普段通り接してくれているんだ。出張のことは忘れろ。そう、ホテルであったことなんて忘れるんだ。
ホテル…………。
ダメだダメだ!
考えないようにするとどんどん鮮明に思い出してしまうので、首をブンブン振って邪念を退散させる。
「カズマくん? 大丈夫……?」
「取り乱しました。もう大丈夫です」
平静を装って、水希先輩と雑談を始めた。
「そろそろアレが始まるけど、今回は美雪ちゃんにメイン担当をお任せしようと思うの。カズマくんから見て、どうかな?」
「いいんじゃないですか? 1回やってみた方が今後に役立ちますし、ミスっても俺がなんとかしますよ」
アレと言っているのは、タクオタで半年に1回開催している公式大会のことだ。
その名も、Chronos Championship。通称はCH2。
全プレイヤーが参加できる定常のランキング戦とは異なり、この大会は上位32人、つまりレジェンドランク以上のプレイヤーだけが参加できる特別なトーナメント戦だ。
さらにゲーム内からリアルタイムで観戦もできるため、毎回大いに盛り上がりを見せている。
現在はwakaba-MkⅡこと若葉が4連覇中のため、5連覇するかどうかにも注目が集まっていた。
「カズマくんは出れそう?」
「実は今ギリギリのラインなんですよ。もう一踏ん張りして滑り込みたいですね」
そう。実は俺、プレイヤー名:kAzは現在34位。
つまり出場枠の32人まであと一歩のところまで来ているのだ。
以前まで50位程度をウロウロしていたが、若葉との対戦後、たまにアドバイスなどももらうようになり、おかげでジワジワと順位を伸ばしていた。
ちなみにタクオタでは、運営メンバーがこの大会に出ることは禁止していない。
無論、リリース当初は大バッシングされた。
不正し放題じゃないか、と。
しかし、回を重ねるたび、さらに観戦機能により衆人環視の中で行われる大会を見ていく中で、プレイヤーたちも理解していった。
カードゲームであり、先攻・後攻の概念も無く、初手の引きという運要素もないタクオタにとって、そもそも運営が不正できる余地など無いのだ。
対戦中に相手が選択したカードを覗き見るようなことも疑われたが、それもあり得ない。
ゲームの仕様上、オーダーフェイズで選択したカードデータがサーバーに送られるのはオーダーフェイズ終了時、つまり互いにカード選択が完了してからなのだ。
よって、カード選択中はそもそも覗き見るデータが無いことを公式に公開したことで、それ以上疑う声は上がらなくなった。
そんな経緯から、運営メンバーでありながら、俺も堂々と大会の参加を目指せるのだ。
「ならちょうどいいわね。カズマくんが大会に参加してる間、運営業務は美雪ちゃんに頑張ってもらいましょう」
「そうしてくれると助かります」
そう言った俺に、水希先輩はニヤリという表情を向けた。
「出るからには、優勝目指して頑張ってね。応援してるわ♪」
「まだ出場も確定してないですよ。でも、頑張ります」
お互い弁当も食べ終え、雑談も無事終了した。
さて、大会出場に向けて、もうひと頑張りしますか!
◯ あとがき ◯
こんにちは、甘妻水希です。
読んでくれてありがとう♪
……あんなことがあった後だけど、カズマくんと気まずくならなくて良かったわ。
それに、大会も頑張ってほしいわね。
また忙しくなるけど、カズマくんの勇姿が見られるのは楽しみ♪
また私たちに会いに来てね。もちろん、ブックマークも忘れちゃダメよ♪
それと私たちのコト、ぜひ評価してね。高評価を期待してるわ♪
それじゃあ、また次のお話で会いましょうね♪




