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虹の橋を渡った子へ

作者: 小兎

亡くなった愛猫への追悼エッセイです。


 2022年5月13日金曜日。

 14歳で愛猫コナンが亡くなりました。

 原因不明の腸の腫れとリンパ節の炎症がわかったのは3月末の事でした。

 昨年の9月頃から吐き戻しが増えてきて予防接種の時に検査をした時には異変はなかった。

 年明け頃から食欲が落ちて、元々あんまり食べる子ではなかったのでそんなものかと思ってた。

 そうこうするうちに下痢をするようになった。

 吐いて下痢は脱水症状になるので危険を感じ病院へ。


 診断は腸の腫れとリンパ節の炎症。

 リンパ腫の可能性もありますがどうしますか? と聞かれた。


 え? ちょっと待って、だってこの前検査した時なんでもなかったじゃん! そんな急に悪くなるの!?


 驚きと怒りでした。


 でも猫は人間の4倍で年をとります。人間にとって半年でも猫にとっては2年体内時計は進んでるのです。


 どうしますか?


 癌検査をして抗癌剤と手術の治療をしますか? との問いかけにわたしはNOを選択しました。


 なぜならコナンは病院に行った後必ず血の混じった胃液を吐き戻すのです。便にも血が混じり、落ち着くまで3日はかかります。当然食べません。吐き続けて全く食事を食べなくなりどんどん痩せて抱き上げると軽くて、肋がわかるのです。

 無理です。抗がん剤の治療も手術も物凄く体力を消耗します。

 治ればいいですけど、多分治る前に命がつきます。無理をさせて治療に苦しんで、術後の痛みに耐えさせるよりは穏やかな余命をおくらせてあげたいと思ったのです。


 ステロイド剤と抗生剤の投薬で食欲が戻りご飯を欲しがって鳴くようになり取り敢えず小康状態の日々が続きます。


 下痢が一時的に軟便にまでなってましたがまた下痢にしかも水下痢になってしまいました。

 下痢止めの薬も追加されました。食欲はあるので食べますが、腸の機能が落ちてるのでしょう、食べたら直ぐに下痢です。

 トイレまで間に合わなくなりました。


 今まで1階のリビングで食べていたご飯も猫トイレのある部屋での食事に変わりました。

 痩せて後ろ足の踏ん張りがきかなくなって階段の一番下の段でよろけます。それでも下に降りてきてたのに2階での食事です。

 可哀想に思いながらも後始末を考えるとトイレの近くにならざるおえません。

 フローリング床なら漏らしたものを取り除いた後、水拭きし、キッチンハイターを薄めたもので何度も拭いて最後に水拭きすればなんとか匂いは取れますがラグや布団にされてしまったらもう捨てるしかないのです。


 独りでの食事は寂しかったんでしょうねまた食欲が落ちてきます。

 食べてるのを見守っていると食べるのですがわたしが側を離れると食べるのを止めてしまいます。


 ロシアンブルーという種類の猫は神経質でビビリで寂しがりやです。

 コナンは特にその傾向が強い子でした。あまり病気らしい病気をしなかった子でしたが、自分に飼い主の気持ちが向いてないとアチコチにおしっこをして回るような子でした。

 トイレ1つにとってもとにかく褒めて褒めて上げないと満足しない子でした。

 夜寝るときは必ず小さな頭をグイグイ押し付けてきてナデナデを要求してきた子です。

 夜中でも早朝でもトイレが済むとわたしを起こして褒めるのを要求して、ドヤ顔をしていました。


 どう? ちゃんと出来たよ? ね? えらい? ね? えらい? 


 そんなふうな表情をしてました。


 えらいね〜 こなえらいね〜 凄いね~ ちゃんと出来たね~


 そう言って褒めながら頭を撫でると満足そうに目を閉じてゴロゴロ喉を鳴らしていました。


 なのに、5月13日朝4時20分。起きて猫部屋に様子を見に行くとコナンが猫トイレの中で亡くなってました。


 うそ、なんで? 昨日寝る時何でも無かったじゃん


 ご飯もちゃんと食べて、カリカリの入ってるお皿に顎乗せて寝てたから移動したらまだ食べるって顔突っ込んでたじゃん。


 もしかしたら夏越せないかもって思ってたけどこんなに急だと思ってなかった。


 こんな事になるんだったら、最後は一緒にいてあげたかった。命が消えるその時まで撫でてあげたかった。

 最後ちゃんとトイレに行ったんだね? えらいね、すごいね、って褒めてもらいたかったのかな。

 寂しがりやなのに、一人ぽっちで逝かせてごめんね、ごめんねコナン。


 だめな飼い主でごめんねコナン。


 思い返すと泣けてきて、泣けてきて。


 コナン、初めて君に会ったのはブリーダーさんのお家でした。たしか4兄弟でしたね、といっても君以外はおんなの子だったけど。

 トコトコと私の側に来て膝の上でスヤスヤ眠られてしまって身動きが取れなくなってしまいました。

 それが縁でうちの子になってくれたんだよね。あの頃初めて飼った猫のバロンちゃんが亡くなって残されたレオンちゃんと私は途方にくれてました。

 レオンちゃんは一人ぽっちになって寂しくてグルーミングしすぎてお腹を赤剥けにしてしまっていました。


 そんな時にうちの子になってくれたのがコナン、君でした。

 心臓疾患で早逝したバロンちゃんと同じロシアンブルーで種類が同じでも性格って違うんだなと思ったのを覚えています。


 名前をつけた時に色々な人から名探偵? って聞かれたけどコナンの名前は未来少年コナンだよって答えてました。

 元気にたくましく大きくなって欲しいという願いを込めて。


 しかし、うちに来てからまもなく尿路結石になっちゃったね。まだ結石になる前だったから大事には至らなかったけど、その後からおしっこ癖が悪くなっちゃったのには困りました。

 わたしのベッドや座布団、玄関マットがうちから消えたのもそのせいだったね。

 こたつの布団にされた時には寒いリビングで家族みんなが震えていたんだよ。

 もうとにかくありとあらゆる布製品は君のおしっこの洗礼を受けたね。

 

 ただふとある日コナンのやらかしたおしっこの始末をしていてこの子もしかしてすごいさびしん坊なんじゃないかって。

 かまってちゃんの行動でやらかしてるんじゃないかと。

 それからちゃんとトイレで出来た時には無茶苦茶褒めまくくるようにしたら粗相が無くなったんだ。

 わたしが気がついてあげるまで8年もかかってしまったけどね。

 それからのコナンは本当に手のかからないいい子でした。


 6年前にテンちゃんという弟分を迎え我が家は賑やかになりました。


 そして3年前レオンちゃんが先に虹の橋を渡りました。


 レオンちゃんはチンチラシルバーの男の子、享年15歳でした。

 おっとりした穏やかで人懐っこくそして我慢強い子でした。

 彼はペルシャ系猫の遺伝子疾患、多発性嚢胞腎を患い肝臓にも嚢胞できてしまい手術をして病巣を取り除きましたが治療の甲斐なく術後2ヶ月半で亡くなってしまいました。


 彼は検査も手術も抗がん剤投薬治療も我慢強く耐え病気と戦って、最後は再発した肝臓嚢胞が破れ出血死でした。

 わたしは仕事で不在で姉が最後を看取ってくれました。

 帰宅した時に見たのは何枚もの血を吸ったペットシーツと生々しい血の匂いでした。


 目を閉じてあげようとしても瞼が降りませんでした。もっと穏やかな最後があったのかもしれません。

 生きていて欲しかった。手術をすれば治ると信じたかった飼い主のエゴで、無理をさせました。頑張らせてしまった。

 最後に仕事に行く前に見たレオン心細そうな表情は今でも忘れられません。


 そんな事もあったのでコナンの治療は彼の負担がなるべく小さい方法を取ったのです。


 正直何が正解なのかはわかりません。今うちにはテンちゃんとレオンちゃんが亡くなった年の冬に拾ったルナちゃんがいます。

 彼らが出来る限り健やかで長生きしてくれるのを祈るばかりです。


 彼らの寿命は人に比べれば短く先立たれ見送るのが常ですが、一緒に暮らした日々はかけがえのないものです。

 今ペットを飼ってる人もこれから飼おうとしている人もその小さな命を慈しんであげてください。お別れの時は悲しくてどうにかなってしまいそうになっても出会わなければよかったなんて事はないです。


 虹の橋を渡って逝ってしまったうちの子に


 ありがとう楽しかったよ。いつかわたしも虹の橋を渡ってそちらに逝ったらまた一緒に暮らそうね、その時までバイバイ。

 





 

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