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カフェぱんどらの逝けない面々  作者: 来栖もよもよ


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モグラ叩き

「マスター、本当にごめんなさい!」

「いいえ、だってひろみさん悪くないじゃないじゃないの」

「そうですよ」


 坂本さんと遭遇した数日後、ひろみさんが夕方やって来て早々、マスターに頭を下げた。

 何やらあの後、坂本さんがひろみさんに電話を掛けて来たらしい。「運命的な再会をした」「彼は私を誤解している。何とかして誤解を解き、友人としてからでも云々」というような話をされ、何とかひろみさんに坂東さんへの繋ぎをして欲しい、ダメならどこで会えるのかだけでも教えて欲しい、などと懇願して来たと言う。


「勿論、私は断ったわ。マスターは男性しか恋愛対象じゃないし、いくら貴女が美人だろうと関係ないんだって説明したんだけど」


 ひろみさんにはマスターのトラウマの説明はしてないし、マスターも男性俳優や歌手などの名前を上げて「んーいい男よねえ♪ 素敵だわあ」などと言ってゲイアプローチは欠かしていない。

 ひろみさんを人間的に信頼してない訳ではないのだが、女性というのは何がきっかけで病み出すか予想が出来ない、というのが彼の経験から来る持論なのである。私は早々にジバティーさん達から暴露されてしまったので隠しようがなかった、というだけのことで、根本的に女性への不信感は強い。魔性の美貌を持つというのはそういうことなのだろう。


「私が彼をまっとうな道に戻すとか、彼の子孫を残さないのは大罪だ、それに私なら妻としても並んでいて釣り合う、とか怖いこと言い出すし。真理子あんた竜也さんは、と突っ込みそうになったわ」


 勿論、ひろみさんは二股されていた事実を彼女に伝えたこともないし、坂本さんもひろみさんに告白してはいないとのこと。しかし、私は友達が一人しかいないので良く分からないが、友達の恋人を奪っているのに平気で電話して別の男の情報を仕入れようとする精神構造が理解出来ない。


 で、その場は全部突っぱねたそうなのだが、翌日快気祝いをしてなかったしご飯でもご馳走するわ、という話になり、まあご馳走して貰えるなら迷惑料に、と思って近所のビストロに行ったそうだ。


「で、私がトイレに言っている間に、どうやら真理子が私のスマホを見ていたかも知れないの。置いていた位置が変わってたし、着信履歴やアドレス帳を見ていたデータがあって……」


 小春ちゃんや坂東さんとしての登録も当然ないし、ぱんどらの電話番号はP、としか名前の登録をしてないんだけど、他がちゃんと氏名が入ってる状態の登録だから、もしかしてそこから辿ってマスターの店がバレるのでは、と思って謝りに来たらしい。


「今どきの女子って友人の個人情報も悪びれずに入手するのねえ、怖いわあ……でも、お店の連絡先なんてシティーページにも載ってるし、別に隠している訳じゃないからしょうがないわね。しっかしあの人、迷惑だって断言したのに、しつっこいわねえ」


 ひろみさんに先日の経緯を話すと声を上げて笑った。


「真理子、何かマスターから声を掛けて来ただの、私と会えて嬉しそうに見えた、とか言ってたわよ。どんなフィルターかかってたのかしら」

「美人さんというのは、自分が袖にされているという状況が許せないのではないでしょうか。凡人には分かりませんが」


 なまじ自分に自信がある人というのは押しが強い。しかし中身を知らないと怖くて好きにもなれない私からすれば、一言二言話しただけの相手にここまで執着するというのが異常としか思えない。それだけマスターが魔性の存在だということなのか。マスターもいい迷惑である。


「まあお店に来たところで、お客さんとして来るだけなら構わないわ。プライベートな話は一切するつもりないし。ひろみさんも被害者なんだから、気にしない気にしない」

「私も、もう別れたとは言え付き合ってるの知ってて二股掛けられてたから、せめて最後にご飯ぐらい奢って貰わないとなー、みたいな腹立たしい気持ちが残ってたので……本当に軽率でした。万が一偶然装って現れても、適当にあしらうか、こっぴどく振ってやって下さい。私も後をつけられたら怖いので、暫く店には近づかないでおきますね」

「大丈夫よ。図々しく店に現れても、放置するから。でもひろみさんもまだギプス外れてないし、またトラブルに巻き込まれるとアレだから、坂本さんの問題が解決するまでは余り家から出ない方がいいかも知れないわ」

「ですね。就職情報誌でも見ながら大人しくしてます」


 何度も頭を下げながらひろみさんは帰って行った。


『なんやなんや、また事件か小春』

『その自称美人って言う人、めっちゃ見てみたいねー』

『ハハハッ、杏さんだって可愛いですよ。でも映画やドラマで美人が出て来ると大抵トラブルメーカーですからちょっと怖いですね』

『本来怖いのはジバティーな私達ヨ』


 ジバティーさん達のそらそうだ、わははは、などという陽気な笑い声に、本当にこの人達は未練があって残ってるのかな、と私は不思議で仕方がなかった。ただ、だからこそマスターがゾワゾワする程度で収まっているのだとも思う。精神的に気楽でもある。


 マスターも強がってはいても、基本的に女性への恐怖心は根底にあるので、強く迫られた時に怯えて反応が遅れる可能性もある。マスターにまた何かあれば、今度こそ一生家に引きこもることが確定するかも知れないので、私がフォローするしかない。


(私は、平凡な日常を求めて奄美から出て来たんだけどなあ……)


 最近ではトラブルがモグラ叩き状態で、一つが引っ込めばまた別の何かが現れる。おかしいなあ……と私は少しため息をついた。





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