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中編

思いついたまま書いてます

ベッドから地面に落下をして自分に前世があったことを思い出してしまった私、リリアーナ・クロヴィツア。

前世の記憶を持ったまま、違う誰かになっているのは明らかに転生だよね?と思い、絶望してしまった。

だって、私がもし、悪役令嬢だったけど、実はヒロインでしたなんて展開の物語の主人公だったら、明らかに間違いだ。キャストミス。

私には荷が重すぎて無理です。

悪役令嬢じゃなくて、実は本物のヒロインでしたってパターンも無理。

私はアンチヒロインのためヒロインの考え方がまずできない。


絶望感が私を包む中で私は決意した。

(家出をしよう!)

その考えに至った。前世でいう義務教育がまだ必要な年齢ではあったけど、何も持たずに身ひとつで公爵家を出ていった。


何も飲まず食わずのまま、身体に傷を作りながらも歩き続け。いい匂いがしている家の前で倒れていたところを助けてくれたのがシルフィさんだった。

そのシルフィさんのところで居候させてもらっていたんだけど、シルフィさんのある言葉に私は再び家出をすることを決意した。

私の髪の色は生まれた時から銀髪だった。金髪や銀髪、たまにダークブラウン系の髪色は貴族の証だと言われたからだ。

私はもうすぐ15歳になる。社交界デビューなんてしたら、したくもない結婚を意識させられてしまう。

しかも私は元公爵家令嬢。王族に嫁ぐ筆頭令嬢としての名前が挙がってしまうことは避けられなかった。

(王妃教育やら他の王妃候補者たちとの足の引っ張り合いだのとか嫌に決まってるでしょ!!)

そう思って家出をしたのに。私はある町に来るまで気づかなかった。

私が居たところはクロヴィツア公爵領内だということに。

公爵領から出ないと本当の家出にはならないのでは?と思ったことに。


私は強く願った。クロヴィツア公爵領から出たいと。そしたらどこからか突風が吹いてきて。私は公爵領から出ることができたのだが……。



「お前、どこから来たんだ?」

「………………」

突風に乗りながら移動していたのにある船に乗っていた人に発見されて捕まってしまった。

私は大ピンチに陥っていた。

目の前にいるのは金髪碧眼なのに肌の色は褐色であるイケメンであった。

(肌の色は褐色だけど、金髪碧眼ってことは王族か貴族の人間!?)

ヤバい逃げなきゃ!その考えしかなかったのだが……。

(下手に嘘をつくより、正直に話してみようかな)

そんな考えにもなった。あとでバレて「嘘つき」と言われるくらいなら、言ってみようと思った。

「実は……わた、わたくしは……」

(自分のことわたくしって呼ぶの苦手なんだよなぁ)

そんなことを思いつつ、自分の名前と家出をしてきたことを正直に話した。

(さすがに前世のことを思い出したとは言えないけど)


「ずいぶん勝手だな。お前」

話を聞き終えた後に言ったイケメンの言葉がそれだった。

「結婚するのがイヤだから家出したって。公爵家の娘ならまずしない考え方だぞ」

その言葉にぐうの音も出なかった。

貴族の娘なら、家のために政略結婚は当たり前。という考え方が根強く残るのは仕方ないかもしれないが。

(私はもう貴族の娘はできないから)

前世を思い出した時点で貴族の娘でいられる訳もないし。

(それを言うつもりもないけど)

私は口を尖らせて目の前のイケメンを睨んだ。


「けど。なかなか面白そうなヤツだな。お前」

「…………は?」

(面白そう?どこが?)

私は今度はポカンとした表情で目の前のイケメンを見た。

「お前、料理とかできるか?」

「え?ま、まあ……」

「掃除や洗濯は?」

「できます、けど?」

私の言葉にイケメンは笑って言った。


「お前を採用する!」

「異議あり!どうしてさっきの会話から採用されるに至ったのかがわかりません!!」

私は手を挙げて言った。

(面接されてたの!?私)

「家出してきて行く宛あるのか?」

「それは……ありません」

「なら、この船がお前を拾ってやるよ」

(いや、言い方……)

拾われたというより見つかって捕まったんだけど。


「それにお前、面白そうだ」

「いやっ、面白くはないはずですけど!?」

私がそう言うと目の前のイケメンは楽しそうに笑った。

「普通、自分のことを正直に話す人間なんていない。お前は初対面の人間に自分のことを話しすぎだ」

「いや、だって。あとでバレて嘘つきレッテルを背中に貼られるよりは言ったほうがいいかと思っただけです」

別に深い意味はない。目の前のイケメンがもし王族か貴族だとしても。嘘をつきたくない。

「ま、俺たちなら口外はしないけど。軽々しく公爵令嬢です。とバカ正直にこれからは言うなよ?」

「公爵令嬢の名前は棄てるつもりなので」

「それは無理だ」

「どうして!?」

「お前は家出をしてきただけだ。公爵令嬢の名前を棄てるつもりがあったのなら、家出じゃなく親子の縁を切るべきだ」

「!!」

私は言われて気がついた。

(そうだ。私がしたことは逃げただけだ)

「結局、公爵令嬢の名前を棄てる覚悟、親子の縁を切る覚悟まではしてないんだろ」

「………………」

その言葉は胸に重くのし掛かった。

(私がやったことは……。迷惑をかけただけ)


「さて。そこでお前に選択肢をやろう」

「……はい?」

暗く落ち込みそうになった私に目の前のイケメンは明るく言った。


「選択肢は2つだ。ひとつは公爵令嬢に戻って王族か他の貴族と結婚すること」

「………………」

「そしてもうひとつは。公爵令嬢に戻って俺と結婚することだ」

「……はぁ!?!?」

(何がどうしてそうなるの!?)

「俺的には後者を勧めるけどな」

「いや、だって。ほぼ初対面ですよ!?」

初対面の人に自分のぶっちゃけ話をした人間が言うセリフではないというのはとりあえずどこかに置いておこう。

「初対面だが、お前が気に入ったんだから仕方ない」

「い、いやいやいや」

私と結婚って本気じゃないですよね!?

「話、聞いてました?」

「ああ。ばっちり。結婚したくないから家出してきたんだろう?」

「それでなんで結婚を提案するんですか!?」

私のその言葉にイケメンは考える素振りをして。

「公爵令嬢を棄てたと言っていたわりには親子の縁は切っていないならいつか見つかったら公爵令嬢に戻るかもしれない」

「………………」

(絶対戻るつもりはないけど。そうなる可能性もある)

「もし見つかって公爵令嬢に戻って俺以外の誰かと結婚されたら嫌だから」

(この場合、どう反応するのが正しいの!?)

イケメンに口説かれたことなどあるはずがない私は大いに戸惑った。

(口説かれている……と思ってもいいのかな?)

簡単に結婚と言っているようにしか思えないけど。


「あの。よく考えて言ったほうが……」

「時間をかけて考えていたらお前、俺の前からいなくなるだろ?」

イケメンの言葉に私は言葉が紡げなかった。

(バレている)

そんなことを考えているとイケメンは一気に距離を縮めてきた。


「……で?どうする?」


イケメンは私が逃げないように手をがっちり掴んで聞いてきた。

私は真っ直ぐに相手のほうを見て言った。

「お断りします」

そう言い切った。私がそう言うとイケメンは笑い出した。

(急に笑い出すなんて失礼な人ね)

私はムッとした気持ちになりながら、イケメンを睨んだ。


笑うのに気が済んだのかイケメンは私のほうを見てこう言った。

「はい。以外は却下だから」

「………………」

(却下?つまり。お断りします。は受け付けないと?)

「結婚したくないから逃げてきたんですよ?」

「ああ、そうだな」

「それなのに私に結婚を申し込むっておかしくないですか?」

「けど。いつかはするだろ?」

「……そんな予定はないですが」

「へぇ」

何か含みがあるような返事に私の背筋がゾワァと寒気が走った。

(イヤな予感がする)

私を見ているイケメンの目はまるで狩りをする前の獣のようにも思えてきた。


「なら、俺と結婚したくなるようにするしかないよな」

「へ?」

笑いながらイケメンは言ってきた。

そしてポカンとしている私の耳元やな口を寄せて言い放った。

「欲しいものは絶対に手に入れる主義だから。早めに俺を受け入れたほうがいいよ」

(いやいやいやっ!無理ですって!!)


「私、貴方がどこの誰かも知らないわ!!そんな人に結婚を申し込まれても嬉しくない!!」

イケメンを突き飛ばして逃げようと思ったのにイケメンはびくともせずに笑いながら私を抱き締めてきた。

「悪い。まだ自己紹介してなかったよな。俺は……」

「いや!言わなくていい!聞きたくない!」

聞いたらいけないような気がして両手で耳を塞ごうとするけど、イケメンに阻止された。


「俺だけお前の名前を知っているのはさすがに不公平だし、お前には名前で呼ばれたいから」

そう言って彼は告げた。

読んでくれてありがとうございました。

次でラストです。

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