6話
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約20分走ると、二人を乗せた車は、大型ショッピングモールの駐車場に着いた。開店してから10分程しか経ってない店舗は、まだ人が少ない。
駐車スペースに車を止め、降りてからすぐに店内に入ろうとすると、由香は助手席のドアガラスで、前髪を弄っていた。 それを待っていると、セット出来たのか、車を挟んで目線が合ったので。
「じゃ、行こうか」
そう言うと。
「うん」
と言う、元気な返事が返って来た。
(やっぱ、やさしいな大輔)
△
モール内に入り、一番先に行きたいのが衣料コーナーだと、来る道中に言っていたので、レディースコーナーに行く。
由香の欲しい物は、会社へ着ていくスーツの下に着る、ブラウスだ。
左右の店舗を抜け、目的のコーナーに向かう途中、何度か。
「わあ! あのカップル凄い」
とか。
「凄くお似合いのカップルだ」
とか。
「いいな~。あんな彼氏欲しい」
「あの男の彼女、可愛い過ぎだ!」
とかいう声が、道中で何度か聞こえた様だが、当の二人は、黙々と目的のコーナーにまっしぐらなので、耳に入って来なかった。と、思う。
△
「ねえ大輔、このデザインの、可愛くない?」
「え?どれどれ....」
そんな事を言われても、衣類センスが皆無と言って良いほど、大輔はガッカリ王子である。
「う~~ん......、分かんない」
思っていた通りの答えが返って来たが、それでも、由香は 改めて ガッカリした。
(ホントに大輔って、容姿はめっきり良いのに、内容の所々がガッカリなんだよな~)
「もういい。 私、自分で選ぶから」
こんな感じで、モール内でのショッピングが続いた。
△
「ねえ大輔。 お腹空かない?」
時刻は大体11時半前。 開店からずっとあっちこっちと、由香に引きずられる様に、歩き回ったので、二人とも空腹になっていた。
「確かに腹減ったな~。由香って、ほっとくと、時間忘れてオレを引きずり回しそうだもんな....」
「そんな事....ない....かも..」
「ま、いいか。 とにかく腹ごしらえだ~」
二人、そそくさと、フードコートに向かう。 その途中で、お互いが何を食べたいか、話し合いながら移動するのだが、中々意見が合わない。
「俺、ちゃんぽんがいいな」
「えぇ!やだ~!わたし麺なら、パスタがいい」
こんな些細な事案で、意見が分かれる。
「だったら、寿司はどうだ?」
「あ!」
「確かこのモールって、回転ずしがあったぞ」
「行く~!! お寿司すきぃ!」
「じゃ、決定な」
「うん!」
何と、日本人の年代を超えた好食物で、この寿司と言う言葉に、キラリ感があるのは、この二人だけでは無いと思う。
「結構遠かったね」
「ココって、デカいからな~」
そう言って暫く移動していると。
「やっと着いたぁ」
店舗が意外に遠かったみたいだ。すると.....。
「え?!」
「「えぇ!!??」」
「何であなた達が、カップルで居るの?....、もしかして、あなた達付き合い始めたの?」
「ちが....」
「おい!大輔、言ってくれよ、親友だろ?俺たち」
まさかの幸宏と美菜との鉢合わせである。
「なぁに? 由香、水臭い。 私たちの仲じゃない、なのにコレは無いよ~」
「だから、違うって美菜。大輔も言ってよ」
「お、おう」
「なんだ大輔、付き合ってるんじゃないのに、由香とデートか?」
「だから違うって」
「でもコレ、傍から見ると、全くカップルよ、由香、大輔さん。訳を話しなさい由香」
この状況を何とかしなくてはならないと思った大輔は、取りあえず、話を逸らす。
「とにかく、昼食べないか?」
「「あ!」」
「そうだな、食べながら、尋問だな、美菜」
「そうね。じゃ、さっさと座りましょ」
と言う訳で、回転ずしの店舗に入り、四人掛けテーブルを確保して、レーン側にいる女性陣に注文をし出す。
どうやら尋問は避けられない様だ。
「まさかこんな所で会うとはな、幸宏たちは何が目的なんだ?」
「おっと!その手は食わないぞ。話を逸らすな」
「ヤッパな....」
その後、美味しいはずの“すし”が、幸宏と美菜の質問の攻撃で、無味の食物になってしまったのを、大輔と由香は思い知るのだった。
(寿司って、味か無い時もあるんだな....)
「何だかな~、何かはっきりしないな~。お前たちってホントに付き合って無いのか?」
「「うん」」
「もうヤダ! 付き合っても無いのに、息ぴったりなんだから....」
「ホントのホントに、的を得ない話だな」
食べながら、色々な話をする。
「.....で、ホントに大輔さんの方から、何となく今日どっか行こうって言い出したのね?」
「そうだが」
これ以上尋問しても、事の進展が無いと理不尽的納得をした幸宏と美菜は、それ以上追及はしなかった。
「腹いっぱいだ~」
「オレもだ」
結構皿を山の様に積んでしまったテーブルに向かって、満腹度を公表した男子二人。 それを見た女子二人は。
「ホントにもう、食べ過ぎよ。 午後の事も考えなさい、二人とも!」
美菜の言葉に、言い返す男子。
「でも、女子達だって、後半は殆どスイーツだったよな~、な、大輔」
「由香がすし食べてるとこ、見て無いぞ~」
コレに少し頬を膨らませて、由香が反論する。
「大輔が見てないだけで、食べてましたぁ~」
ここで大輔が気が付いた。
「由香、もしかして、スイーツが食べたくて、回転ずしにOK出したのか?」
「........」
「どうやら図星だったみたいだな」
「大輔さん、もう勘弁してやって。由香泣きそうよ」
シュンとする由香を見て、気が咎める大輔。....しかし....。
「嘘で~す」
由香から べ~ が出て、クシャ顔をしたので、大輔は コノヤロー顔になり、人差し指で頭をコツンと叩いた。
「えへへ~」
と、由香がフニャけると、正面席の二人が。
「ホントに付き合って無いんだよな?」
「この際、付き合っちゃえば?」
と、また聞いてきたが、大輔と由香は、お互い顔を見合わせて、大笑いしてしまった。
高校3年の後半の時、由香も結構馴れ馴れしくなってきたが、大学の4年間と、社会人になってからのプラス1年の合計5年間は、時々にしか会わなかったのに、同じ会社に入社してからは、こんな短時間で一気に高校時代に戻った様な感じになり、何処か何となくだが、大人っぽくなった由香の容姿に、大輔は心の中に何かしらの感情が芽生え始めた感じがした。
「でも実際こうやって4年ぶりに由香に会って、何だか以前の“女の子”と言う感覚よりも、うまく言えないけど、社会人になって、“女性”って言う言葉が相応しくなって来た様に思うな」
この大輔の言葉に、他の三人が、呆気にとられた。
特に、当の由香が、ポカ~ン、では無く、ポッカ~ン、と言う状態だ。
「大輔さん、それ告白前兆のつもり?」
「?」
「なに呆気に取られているの?、自分で言った事でしょ?」
「オレって今、なに言った?」
自分の口から出た言動に、いまいち理解が出来ていない大輔。
「なにって、由香の事を“女ぽく”なったって、しっかりと言ってたぞ」
「あ、言ったな、言っちゃったな、オレ、今」
「大丈夫か? 大輔」
「多分....」
全員が黙り込んでしまったところで。
「あれ~? こんな所にダッサイ残念イケメンがいる~」
「あ~らら、ホントだ。残念ボーイだ、何でこんな所に?....、しかも、女連れ?....、って言うか、そっちは新入社員の長田さんじゃないの」
「あれれ~、ホントだ。 社内の男どもを良いようにフリまくって、お高く留まっている、あの な・が・た・さん、と一緒だ。ダサ男と高飛車女が、一緒に居る~、コレは良い所見つけた。 写メ撮っとこ」
この人物二人は、社内の 谷川 奈緒 の取り巻きの例の二人だった。
こんなところで、面倒くさい人物と、まさかの鉢合わせてしまったと、大輔は思った。




