16話
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「姉ちゃんありがとう。 お陰で、あの問題が何とかなりそうだよ、ホント、感謝してる」
「いいって。 わたしの弟にまで迫った挙句、その彼女にまで仕打ち染みた事を、複数の人間を使ってまで行使したのには、さすがに許せない、天誅だ」
「姉ちゃん、今の時代に天誅って....」
「それでも、ありがとうございました。お姉ちゃんのお陰で、私も月曜日から気持ちを切り替えて、出社が出来ます」
「おいまだ天誅が下った訳では無いぞ。 朝一に出社しても、まだこれからなんだからな、ま、後は恵さんに任せておけば、良い様にしてくれると思うぞ」
「頼もしや~」
帰宅中の車中で、談義をしていると、長田家にすぐに到着した。
「まだ10時前か。 以外に時間が掛かったな」
「由香の実家の滞在時間が意外に多かったからな、...と、私はじきに用事で出かけるから、後は二人部屋でイチャコラしてな」
「イチャコラって、まるでラブラブみたいじゃないか」
「みたいじゃなくて、そのままだからな、お前たちは。おっと、準備準備、じゃな」
「はい、ありがとうございました」
「いいって」
そう言って、先に車を降り、足早に家に入っていく有美。その後を、二人で家に入って行く、すると、玄関に居た母親の香が。
「あ~ら、聞いたわよ~、あなた達、きのうの夜から正式にお付き合いし始めたんだってね。良かったわぁ~、コレで孫の顔を拝める事が決定したわ~。ありがとうね、由香ちゃん」
今、最も言ってはならないワードの一つであるその言葉に、母親が ど真ん中ストライクで決めてきた。
孫 → 子供 → 赤ちゃん、これは昨日、由香が放心状態から復活しかけている時、正気に戻る前の朦朧とした意識の状態で放った言葉だった。
「あ、はい。それじゃあおばさん、お邪魔します」
何とか平静を保ったまま、大輔の部屋にまで来て、ドアを閉めた直後、由香がへたり込んだ。
「だ、大丈夫か、由香!」
やっと二人きりになれた事と、今さっきの香から言われた 過敏ワードに反応してしまい、体から力が抜けたのだった。
慌てて由香を抱え、そのまま“プリ抱き(プリンセス抱っこ)”で、布団に寝かした。
放そうとした時、由香の両腕が、大輔の首に巻き付き、引き寄せられると、暫く.....、そう言う事になった。
そして、ゆっくりとお互いの顔が離れると、由香の瞳が揺らぎながら、言い辛そうに、言葉を放つ。
「大輔。わたしね、あなたに謝らなければならない事があるの」
「どう言う事?」
そう返す大輔に、一大決心をした様な、真剣な面持ちで、由香が話し始めた。
「私達、大輔が大学に入学してからの4年と、私が大学を卒業して、今の会社に入るまでの合計5年間、あなたの行動を、頻繁に教えてもらっていたの」
「どう言う事かな?しかも誰に?」
「...........、えっと.....」
「ま、姉ちゃんだろうな、じゃなきゃ、お袋だな、その辺だろ?」
「う、うん。お姉ちゃんだよ」
「そっか.......」
由香から目線を外し、思考を巡らせ、どういった経緯でそう言った事を行っていたのか、考えてみる。
だが、意図が分からない。 理由も分からない。 なので、率直に、由香に聞いてみる。
「オレの事なんかの情報を頻繁に知って、何の得があるの?」
「そ....、それは....。その訳は.......」
「いいから、怒らないから言ってみな」
もう一度由香の瞳に焦点を合わせ、鼻で鼻を押し付けて、促した。
「あのね、実を言うと、高校の時から大輔の事が気になって気になって....」
気まずさと羞恥さで、自分の口から出た言葉に、目線が逸れ、頬が染まる由香。
「オレなんて気にしても仕方ないのに.....、でも、オレが大学に入ってからでも、お互いの家近いし、それに、俺たち時々会ってただろ?なのに何でわざわざ、オレの事を知りたいんだ?」
「だって、だって、大輔が、ほかの女に取られたらって思うと、凄くイヤだったから、逐一その方面の事が知りたくて、お姉ちゃんにお願いしたの」
由香のこの言葉には、色々な意味での感情が沸いたが、高校時代からの唯一な女子の友人と言う事に、怒りの感情は全く湧かなかった。
「そう言う事だったんだな」
大輔は大学在学中に、時々有美から『彼女出来た?』という事を聞かれていた。今になってその事を思い出すと、由香が関わっていた事に合点がいった。
そもそも大輔自体は在学中、二桁の告白を受けたが、全て断っていた。理由はやはり、中学の頃の、恋愛的トラウマと、過去に母親から言われた“あの言葉”が、自身の容姿に関わるトラウマをぶら下げられたのだった。なので、自分の容姿に自信が無いと思い込んでいた大輔は、女子からの告白を断り続けていたのだった。
そのため、全く残念な男子だったと言える。
それでも時々由香とは、高卒以来でも時々会っていたので、大輔には唯一の女子の友人と言うポジションに由香が居てくれたのだ。
それがまさか、恋愛と言う感情を含んでいたとは、当時の大輔には、到底知る由も無かったのであった。
「改めて聞くけど、由香、オレの容姿って、イケメンの部類に入るのか?」
自分でこの様な事を言うのは躊躇われるが、身内以外で自分の容姿を判断して欲しかった為に、出た言葉だった。
「そう単刀直入に言われると、躊躇しちゃうけれど、世間的には、凄くイケメンだと思う。しかも、かなりの...。じゃなきゃ、色んな女子からの告りって無いよ」
「他の女子は別にいいんだ。それじゃ、由香はオレの容姿だけを見て、好意を持ってくれたんでは無いんだよな」
「そ、それが...、ゴメンね。最初廊下で出会った時、“この人メッチャイケメンだ”と思ってしまったのは事実なんだ。でも、私の男センサーが、イケメンの度合いが高い程、自惚れが酷いと言う、今まで知って来たイケメンが、結構面倒くさい輩ばっかりだったので、大輔の事もそう思い込んでいたんだ」
「今までの出会いが、結構残念だったんだな」
「その残念な中、大輔は学内で時々会っても、ちゃんと挨拶してきて、しかも今までの男子と違い、下心ってのが無く、告りもして来なかったんだよ。それまでの男子って、少し知り合いになると、下心満載で告って来た人ばっかで、ウンザリしていたんだ。だけど、大輔は違った。卒業するまで」
「そうだったんだ。じゃあ、その時から、オレの事は気にしてくれていたんだな」
「って言うか、大輔、高校卒業しちゃったから、もう会えないかと思ったら、無性に会いたくなっちゃって、何で在学中に告らなかったんだろうって、後悔したわ」
「でも、それから時々と言うか、時によっては頻繁に出会っていたよな、しかも二人で何度でもファーストフードにも行ったし」
「それなんだけど.......」
由香が今まで大輔に対して、不思議に思っていた事を、カレカノになった立場から安心したのか、問いかけてみた。
「ねえ、自惚れじゃなく聞いて欲しんだけど」
「なんだろ、コワいな」
「ちょっと、怯まないでよ。 で、あのね、大輔って今まで散々女子に告られてきたのに、最後は私を選んでくれたのって、どうしてかなぁ...って思って」
「そんなの簡単だよ。由香の事が好きだからに決まってるからだ」
「う~ん、それはさきっも聞いたよ、そうじゃ無くって、私を好きになってくれた理由って言うか、選んでくれた訳って言うか、う~~ん、うまく言えないや」
「だから、そんなの簡単だって。他の女子と違い、由香は“ガツガツして無かった女の子”だったからな、しかも正式に付き合ってないのに、急かす事も無く、何年も一緒に居てくれて、妙に居心地が良かったって事が、他の女子とは決定的に違う所だったんだ」
「じゃあ、その時に告ってくれても良かったんじゃなかったの?」
「はは、そう言うなよ、あの中学の時の“恋愛ごっこ”が無かったら、多分オレ、ほかの女子と付き合っていた事になっていたかも、と思う」
「そんなの、やだ!」
由香は、自分以外の女が、大輔の隣に居る情景を瞬時に妄想し、即答で拒否した。
大輔の隣に居るのは、終身自分なのだと言う、絶対で決定な事項だった。
「だけど、結果的には由香とこうして恋人になれた訳だろ?」
「“結果的”何て言わないで。私たちは最初からこうなる事が決まっていたんだよ」
「そうだな、でなきゃ、最初のあの出会いだって、偶然では無く、必然だった事だ」
「うん、そう思っていて欲しいな」
「分かった」
大輔はゆっくりと由香から離れ、手を曳いて由香も起き上がらせた。 すると、隣の部屋から一階に降りていく音がした。
「もう10時半か。そう言えば、姉ちゃんが用事で出かけるって言ってたな」
「いま出て行ったのね」
「どこいくんだろ? そういえば、姉ちゃんって、いつ頃からか、行き先も言わずに出かける事が多くなったな」
「まさか、デート?とか...」
「ぜ~んぜんその兆しは見せないんだ。でも実際そこんところ、どうなんだろ?もう27だし」
「姉弟なんだし、そこんところ知っておいても良いと思うけど」
「何か、隙がないんだよな~姉ちゃんは。くノ一の忍者みたいに、行方をくらまして、今日も多分、出て行ったキリ、明日になれば帰って来るんだと思うけど、行動の経緯が全く分からないんだ」
「ある意味すごいね」
その後もこういった会話が続き、時刻は11時半過ぎになった。
いつまで喋っても飽きない二人は、会話が尽きない。 由香は心配事が半分になった事もあって、気分が明るくなっている、そんな由香は........。
(奇麗だ)
「大輔、おなか空いた~」
「オレもだ。あ、もうお昼じゃないか、時間はやっ! 何かあるか、お袋に聞いてくる、ちょっと待ってろ」
「うん」
大輔は一階のキッチン行ったのだが、じきに戻って来た。
「由香、大変だ!」
血相を変えて戻って来た大輔の形相に、由香は驚いて、慌ててその理由を問い正した。
「一体どうしたの?おじさんかおばさんに何かあったの?」
「い、いや」
「話して、って言うか、私見てくる」
そう言って、由香が部屋から出て行こうとしたが、大輔がその手を引き、自分の体に引き寄せた。
「だ、いすけ?」
「由香.......」
そのまま大輔に抱きしめられた。




