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10話


                 10


「ねえ大輔、お姉さんの言う通り、私たちって他から見たら、付き合っている様に見えるのかしらね」

 大輔が少し頭を傾げて若干の間を置いてから。


「そうみたいだな。 幸宏と言い、姉ちゃんと言い、俺たちってカップルみたいに見えるんだ」

「何か意識しちゃうよぉ」


「で、とにかくオレ、モールで言った事は本当のオレの気持ちだからな」

 若干だが、由香の顔が赤くなる。

「それって、私の事が好きって言った事?」

「そうなんだが。出来れば、その返事を聞かせてくれないかな」


「その前に。ちょっと聞いていい?」


 また頭を傾げる大輔。

「なにを?」

「その返事って言うのは、女性として? それとも....」


「何か分からない、ハッキリと言った事は言えないけど、友人としてよりも、女としての感情の方が多いのは、正直いまのオレの気持ちだ、だから.......」

「だから?.....」

「由香、ずるいぞ!。俺だけ言わせて、聞いてるのはオレ何だぞ」

「あ!バレた、ごまかしてたのにぃ~.....あはは.....」

「「ははは..........」」


 由香が笑い出して、大輔も返事が曖昧なまま、この話は終わってしまったのであった。


「ま、俺たち、じっくり行こうか?」

「うん。そ、だね」

「じゃ家まで送って行くから」

「ありがと、お願いね」


 そんな感じで由香を家まで送って行く大輔であった。




           ◇ ◇



 月曜日が来た。



 週初めの朝礼が終わり、各々が席付き、立ち上げて置いたPCで、この週の作業が始まった。


 大輔も手慣れた操作で、業務を坦々とこなしていく。 そんなときに、あちこちから、時々だが、目線を感じる。

 午前中だけで、相当な目線に気が付いた大輔は、その原因が先週末のモールでの出来事だったのは、すぐに気が付いた。

 おそらくあのDQN嬢たちが、何かしらやってくれたんだろうと言うのは、明白だと思った。


 そして、昼休憩。 やはりと言うか、その内容を知ることになる。 それも、友人の幸宏からだった。


「大輔、今日朝から周り視線には気が付いていると思うが、その理由がコレだ」

 そう言うと、幸宏がスマホを見せてくれた。

 そこには、週末にDQN嬢たち達と出くわして、色んな写真・動画を撮られていた事による、SNSの内の二つのアプリへの投稿だった。


 その二つのアプリとも、人気があり、一度そこに乗り、炎上し始めると、とどめを知らない程に燃え上がる、そんな内容も過去にはあったモノだった。

 幸いにも、大輔と由香の事は、炎上こそしなかったが、社内のウワサにとして広げる内容としては、十分だった。

 コレによって、大体の社員からは、今までの事もあり、増々好奇な目で見られたりする様になった。


「あ~あ、こりゃもうどうする事も出来ないな。 人の噂も七十五日と言う先人の言葉を信じるしかないな」

「しかもオレまで写真の片隅に映ってるし。あのDQN達って、こんな事して何が楽しいんだろうな、全く」

「悪いな、巻き込んじゃったみたいで。それにしても、今研修に行っている由香と美菜の事も心配だな」

「全くだ。二人、帰ってきたら今この事態になっていて、驚くだろうよ。.....って言うか、もう知ってたりして」

「多分な」


 そして、思った通り、大輔の昼食が終わり、お茶を飲んでいる頃に、由香からメッセージが届いた。

 内容は、今会社で広がっている噂の内容だという事だった。


「幸宏、由香から連絡が来た。すでに研修会に出ている社員たちも、知っている様で、質問されているという事らしい」

「うわ!あっちも大変みたいだな。由香もだが、美菜、大丈夫かな?」

「ゴメンな、美菜にも迷惑かけてるな、本当にスマン」

「ま、オレも本当にここまでするとは思っていなかった。 あのDQN嬢たち、どんだけ性悪なんだ、ったく」

 

 その時、幸宏のスマホと、大輔のスマホがほぼ同時に鳴った。


 大輔の側は由香から、幸宏の携帯には美菜からだった。

 おたがいが一度肩をすくめ、溜息をしてから、お互いに電話に出た。



         □ □ □


 その週の金曜日。 

 この日は新入社員が研修を終えて、午後から社内に帰って来る。


 あの月曜日から、大輔たちは周りからの目線が気になりながら、一日づつを密かに過ごした。とはいっても、昼休憩には決まって誰かが冷やかしに来ると言う、そう言う事も有りながらの週だった。

 木曜日には、あのDQN総長の、谷川 奈緒が、来て冷ややかな目をして、去り際に。

「あらどうしたの? 何かあったの?顔色悪いわよ」

 そう言いながら、不敵な微笑みをしながら、去って行った。


 今まで我慢していた大輔も、このままじゃ済まさないと、計画を練り始めた。

(あのDQN嬢たち........)


 拳を握りしめ、怒鳴りたいほどの怒りを堪えるのに必死だった。



            △


 午後からは由香たち、新入社員組が帰って来た。


 休憩時間中に帰って来た由香と美菜たち。とりあえず、部屋の人達への挨拶が終わり、それぞれ自分の席に着く。 特に由香は、周りの人に何か言われたのだろうか、先週のモールの時の様な、落ち込んだような面持ちになって居る。

 何とか平静を保とうと思ってはいるみたいだが、気分がすぐれない様だ。視線は合うが、すぐに俯いてしまう。美菜も、いつもよりは暗い表情になって居る。そんな美菜が心配な幸宏は、早く終了時刻にならないか、ソワソワしている。

 そんな中でも、午後からの業務を夕方までこなし、何とか今週一週間の作業・業務がすべて終わった。

 だが、いつもの様に、大輔は任された業務が残っているので、約1時間の残業がある。だが、今日は由香の事が気になり、どうしても一緒に帰りたい大輔だ。


 業務終了のチャイムが鳴ると、あちこちでシャットダウンの音がして、それぞれのPCの電源が落とされる。

 身支度をし、退社する社員が多い中、相変わらず約1時間の残業を、向かいの鈴木 恵と一緒にこなし始める。

 だが、大輔はどうしても由香の事が心配で、一度席を外した。

「恵さん、10分くらい席外します」

「いいから、早く行ってやりなさい」

 どうやら、恵にはもう事情は分かっているらしい。 快く、了解を得た。


 帰り支度をしている由香に。


「由香、ちょっといいか? 休憩ルームに一緒に来てくれ」

「うん」

 大輔の誘いに素直に頷き、二人で休憩ルームに向かった。


 幸宏たちは、大輔に挨拶した後、美菜と一緒に帰宅して行った。後で連絡すると言っていたが、そちらも心配だった。



 休憩ルームに着くと、業務が終わって一息ついている社員が数名居て、大輔と由香が姿を現すと、舌打ちしたような、面倒臭いような雰囲気がしていた。

 とてもココじゃ話せないと思い、再び自席の方へ戻って行く。 改めて、今回の大輔たちの事が、通常では無い雰囲気だという事が、肌で感じた瞬間だった。

 今の周りの表情で、由香は泣き出しそうになるが、由香の背中をさすり、宥めながら自席へと戻っていった。


            △


「あら早いのね」

 PC の画面を見ながら、恵が帰って来た二人の事を横目で見ながら、そう言った。 

「まだ休憩ルームには、結構人が居たんで、変な顔されたんで、戻って来たんです」

「何か大変みたいね、あなた達」

「はは.....、まあ」


 もう誰でも知っている情報だと思うので、恵からのこの言葉に驚くことは無かった。 しかし、この恵は、大輔たちに対して、変な意識とか、色眼鏡で見る事が無かった。 むしろ、何か他に疑わしい事が大輔の周りで起きている事に、気を使っている様だった。それと言うのも....。


「ところで、業務だけはやっちゃおうか、大ちゃん。話はそれからでもいいでしょう? 長田さんも待っててもらえるかな」

「はい」

 恵は由香にも終わるまで待っているようにうながしてきて、由香は、何となく従う事にした。


 PCの画面を見ながらの会話は、さすが仕事が出来る女史だと、言わざるを得ないほどの、ブラインドタッチで、ちゃっちゃと終わらせていく。

 一方の大輔も、恵までとはいかないが、そこそこの速さでキーボードを叩く。


 いつもより気合が入って居たのか、通常よりも20%は早く終了した。


「私は終わったわよ、大ちゃんは?」

 そう聞いてきたので、大輔も。

「後はこのページで終わりです。2分くらいですかね」

 などと、そう言っているうちに、大輔もPCをシャットダウン中になり、業務は終了した。


 一度二人が伸びをし、立ち上がったところで、恵が由香に対して質問してきた。



「長田さん、大ちゃん。あなた達を貶めているのは、あの3人組なのよね」

 

 そう言って、鈴木 恵は、不敵に口角を上げ、二人に聞いてきた。










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