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1話


                  1


 大輔と由香は、高校時代に出会った。

 だが、それは....。


            △


 背が高く、容姿も群を抜く見た目もあり、中学の頃からよく告白を迫られていた大輔だが、鏡を見ても自分自身に今一自信が無く、どうして自分が度々告られるのか、不思議に思っていた。

 その理由が、小さい頃に母親から。



『大輔は目がタレ目で、なにかシャキッとしない顔立ちね』



と、母親からは、悪気は無い言い方で、言われていたものの、自分は冴えない容貌だと、この頃から思い込んでしまっていた。



 実は優しい面持なのに、自分の容姿が良いという事に、その自分自身が全く気が付いていないと言う、残念な男子、細井ほそい 大輔だいすけだったのだ。



             ◇



 高校に入り、女子からの言い寄りも、以前と全く変わりない日常が同様に続いていた。


 実は自分の思いとは裏腹に、事実、女子からは人気がある。

(あーぁ。 何でこんなオレに、興味を持って、告白してくる女子が時々居るんだろう。もっとイケメンに告ればいいのに....)

 その高校に入ってからも、良くある告白を丁重に断ってから。

(こんな自分に、告ってくれるなんて、申し訳無いな...)

 と思う度に、何故か落ち込む大輔だった。


 だが、そんな日々の大輔に、学内でも三本の指に入る程の人気の女子、長田ながた 由香ゆかが声を掛けてきた。 学年だったらNo1とも言われている。


 声を掛けてきた、と言うよりも、要求と言った方が良かった。


「ちょっとどいてよ! そこ」

 そう言って、廊下を歩いていた大輔に、声を掛けてきた女子、それが由香だった。

 大きめな学習機材を抱え、前が少し見づらい事もあり、廊下の真ん中を歩いていた大輔に、声を掛けてきたのである。


 さっと避けた時に、由香と大輔は一瞬だが、目が合った。



(この人は....確か....)



 わずかに聞こえた、由香の小声だが、その後すぐに。

「ごめんね、ありがとね」

 そういって、そのまま彼女はその場を通り過ぎて行った。


(あんな可愛い女子がこの学校にいたのか)


 大輔が由香との出会いでの、第一印象はこの程度であった。


            ◇


 由香との廊下での出会いから数ヶ月が経った。

 あれから度々学校内で由香を見る事はあるが、大体は複数の女子と一緒に居る事が多く、噂で聞いていたとおり、一学年下の人気者の女子だという事が分かった。 また、当然だが、男子にも人気があり、良く告白を受けていると言う噂があった。

 一方の大輔側も、時々ではあるが、女子からの告白があって、相変わらず、自分の容姿に自信が無い大輔は、全ての告白を、優柔不断に断っていた。 そうすると、大輔の心を奪う女子は誰なんだろうと言う、恋愛の駆け引きが女子達から始まる様になり、それからと言うものは、週一で必ず告白があるようになり、当の本人は、迷惑千万極まりない状態がしばらく続く事になる。


 大輔が3年生になると、自分の身の回りが大分落ち着いてきてはいるが、それでも大輔と由香は、それぞれ交際する様な特定の相手は居ない状態で結果、所謂、お互いに年齢=交際経験が無い、と言う事になっていた。

 

 今まで、全くと言って良いほどの交流がない大輔と由香だったが、大輔が下校時間ギリギリに、あまり通らない自転車通学のための通用口から下校しようと思っていたら、自転車置き場の隅で、あまり人から見えない死角となる所で、男女が向かい合わせで何かを喋っているのを見つけ、これは告白だと、咄嗟に想い、引き返そうと体を返した瞬間に、言い争う声が聞こえた。


「ちょっと! 触らないでよ」


 辛辣な声が自転車置き場に響くが、この時間は結構遅い時間で、もう殆ど学生は下校していて、自転車もほとんどが置いてない状態で、今は人が全くいない。


「いいじゃん、付き合ってくれよ。もうこれで4回目の告りだぞ。 いい加減観念して、オレと恋人になってくれよ」

 女子の腕を掴みながら、半ば強引に引こうとして、校内から出て行こうとするその行為に、大輔は思わず二人に声を掛けた。


「あ! 悪い。 丁度居合わせてしまって。 オレすぐに退散するから、続きはそれからにしなよ....って、ゆうじゃないか?そっちは......って(由香だ!)」


 いきなり背後から声を掛けられた事に、二人最初はびっくりしたが、優と言う男子は、大輔に向かって。


「なぁんだ大輔か」


 そう言った後、まるで邪魔者扱いの様な言い方をしてきた。

「今取り込み中なんで、どっか行ってくれないか?」

 明らかに大輔に対して、消えろ的な言い方をしてくるのと、現在、由香のいかにも困っている顔が、大輔に縋って来る様だったのが少し癪に障ったので、優に対して咄嗟に驚きの一言を放った。


「お前の掴んでいるその女子は、オレの彼女なんだけど、その手を放してやってくれないか?」

「な!!...」

「......!」

 さらに続ける大輔。


「放してやってくれないか? それと、帰るぞ由香」


 一瞬ポカンとしていた由香だったが、すぐさま大輔の言葉に乗る様に。


「大輔。もう遅かったから、勝手に帰っちゃったかと思ったわよ」


 優から掴まれていた手を外し、大輔に近寄って行き、由香は優に対して、最後の一言を放った。


「そう言う事なの。だから、もうこれ以上言い寄って来ないで。じゃあね」

 そうキッパリ言いながら、大輔の腕を掴み、そのままその場所を二人で去っていった。


 残された優は、ただ、ポカーンとするしか無かった。


「そ、そんな...」


 そんな悲痛とも言える優の軟な言葉が、聞こえたような聞こえなかったような、そんな夕方の事象だった。


          △


 大輔と由香は、暫くそのまま腕を組んで歩いていたが、学校から離れ、辺りも薄暗くなってきた事から、人通りがそこそこあるコンビニの駐車場に着いた。

 その片隅で立ち止まり、由香は大輔から手を離し、二人は向かい合った。


「あ、ありがとう。 助かったわ」

 ひとまず安心した様子になった由香を見て、大輔は緊張していた。


「そうか、良かった」

 そう大輔が返すと、由香は不思議そうな表情で、大輔に訊いてきた。


「どうしてあの時間にあの場所に居たの? ま、そのお陰でわたしは助かったんだけどね」

「ああ、それ? うーん...」

 

 歯切れの悪い言い方に、由香がさらに質問をしてくる。


「何かやらかしちゃったの? それで、職員室に呼ばれて、その後に指導室で、お説教でもされていたの?」

「はは...」

「あら、否定しないのね。もしかして、当たり?」

「いや、全く違うけど」

 即答で返した。




 実は、大輔が遅くまで学校に居た理由と言うのは、ズバリ、告白だったのだった。

 しかも、2人連続で、若干の時間をずらしての、告られだったので、中々理由が言い辛い。 なのに、大輔の表情に興味があったのか、由香からは、さらに追撃が来る。


「違うって言う事は、まさかまさかと思うけれど、告白受けていたのかなぁ?.... なぁんてね」

 目線を逸らしてしまった事に、由香は確証を得た。その事に大輔は後悔した。


「あなたもそうだったんだ、でも時間かかり過ぎてない? なんかまだ怪しいなぁ....」


 何も言えない大輔だったが、もう辺りは暗くなってきているので、話を逸らした。

「もう時間が遅いから、オレは帰るから。じゃあな」

 そう言うと、踵を返して、大輔は帰ろうとした。


「ちょっと!」

 そのわずかに怒気を込めた一言に、一応は振り返る大輔。


「なに? もういいだろ? オレは、帰りたいんだ。 さっき助けたから、もう返させてくれよ」

 一人で帰ろうとする大輔を、由香は引き留めて、命令口調で大輔に言い放った。


「送って行ってよ。 こんなに暗くなってしまったんだから」

 

 この一言に、大輔は、絶句した。

「なんで? 長田の家ドコか分からないし、なんで送んなきゃなんないの?」

「こんな時間に女子一人で返す訳? ひどくない?」

「送れって事?」

「ハッキリ言って、そうなんだけど」


 結構、図々しいな、と思う大輔。


「じゃあ聞くけど、長田の家、ココからどのくらいあるの?」

 コレに、ニヤっと笑みを見せた。

 その次の言葉は.....。


「ここから200mだよ」

「ちか!..........」

「どう?」

 呆れてものが言えない大輔、だが絞り出す様に、声を上げた。


「一人で帰れよ!」

 今度は本当に、踵を返して、その場を立ち去ろうとした。その時大輔の後から、大きな喚き声がした。 喚き??  鳴き声だと思う。


「うわぁ~ん!!.......」


 コンビニの駐車場で、泣き出す女子高生を目の前にして、周りがほっておくわけが無く、何やら通りすがる人達が、少なからずこちらを見ている。

 コレにより、放っておけない事情になった訳で、大輔は、仕方なく由香を、道のり約200mを、付き添って送って行くのであった。


(一体何なんだ。 コイツ、結構面倒臭いヤツだぞ)

と、由香に対して、そう思う大輔でもあった。


 






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