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アカシックロマンス  作者: 小倉 悠綺(Yuki Ogura)
序章 勇者ヨハン・ゼロの旅立ち
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第1話 勇者の決起会

「近衛隊長ヨハン・ゼロ、前へ」

「ハッ!」


 ここは王国、グランドームの王宮にある大広間。天井も高く空間も広く、厳かな装いのこの場所に今日、近衛隊を含め、王国の兵士達全員集まっていた。


 上段には大臣を含め、この国を支える重鎮が並んで座しており、そして更にその上、最上段のど真ん中にはこのグランドームの国王、ジョンソン国王とリンダ女王が並んで座っており、少し離れて今年で十六になるパレッタ王女が、後学のためにその式典を傍から見守っていた。


 ヨハンを呼んだのはグリオ内務卿。先代の国王から大臣として仕えており、現代の国王になってついに大臣のトップに着いたグランドーム王国の重鎮中の重鎮だ。


 その大臣のトップに呼ばれた男こそが、ヨハン・ゼロ。僅か十四の歳にして国王の身辺警備を行うエリート集団、近衛隊を彼は率いていた。


 ヨハンはきびきびとした動きで登壇し、大臣に深く一礼するとそのまま真ん中まで歩き、国王と女王の前で深々と頭を下げた。


「ヨハン・ゼロ。まずは十六歳の誕生日おめでとう」


 ジョンソン国王が拍手をすると、隣でもリンダ女王が小さな拍手を送り、ヨハンはますます腰が低くなるようにして頭を下げ直した。


「ありがとうございます。誠に恐悦至極でございます」

「では本題に入るが、まずそなたが十六となった。その意味は重々承知しておるな?」


 国王に問われ、ヨハンは頭を縦に振った。


「勿論承知しております。旅立ちの日が来たという事ですね」

「その通りだ。そなたも知っての通り、近年魔物の凶暴化が著しく、様々な村や街が被害に遭っておる。我がグランドーム領ですら二つの村が襲撃に遭い、村はほぼ全壊。数人の死者も出ておる。この一連の凶暴化についての元凶は魔王フォルトルートにある。そなたには魔物の被害に遭った人々の手助けをしながら、魔王の討伐を行って欲しい」

「ハッ!」


 ヨハンは大広間に響き渡るような大きく、ハッキリした声で答え、その心意気にジョンソンも感心した。


「ソナタは勇者ゼロの血筋の最後の末裔。フォルトルートを倒せるのはもうお主しかおらん。近衛隊長となったこの三年で、魔物を倒す術は得たな?」

「ハッ! 陛下の計らいありがたく、戦闘術の他、学問、冒険での自活術等、あらゆる事を学び得させて頂き、充実した三年間を送らせて頂きました。陛下並びに近衛隊員一同、本日までの間不束者の私に御指導御鞭撻して頂き、この場をお借りして感謝させて頂きます」


 ヨハンはジョンソンに一礼した後、後ろを振り返り、背後に並んでいる近衛隊員に向けても頭を下げた。


 するとそれにレスポンスするように隊員全員がヨハンに拍手を送り、中には感動に咽び泣いている者も居た。


「うむっ! それでは皆の者! 勇者ヨハン・ゼロの祝福を願ってエイエイオー!!」


 ジョンソンが右の拳を天高く挙げ、鬨の声をあげると、それに乗じてこのフロアに居る大臣並びに兵士達全員が腕を挙げて、彼に続いた。


 ヨハンも振り返り、大勢の兵士が見える方を向いて右手を天井に向けて勢い良く挙げていたが、その途中、背後からヨハンを呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、彼を呼んだのはジョンソンだった。


「ヨハン君、後で王室に来てくれ。この場ではゆっくりキミと話せそうにないからな」

「ええ、分かりました」


 その後も兵士一同による祝福の歓声があがり続け、国王や大臣が会場から退場した後も、しばらくの間それは続いた。


 ヨハンは最後の最後までその歓声に付き合い、兵士達が大広間から退場していくのを見届けてから、王室の方へと向かって行った。


 王室の前には国王達と一緒に退室した近衛兵が二人立っており、ヨハンの顔を見るなり頭を下げたので、ヨハンもそれに倣って頭を下げ、二人の間を通って王室へと入った。

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