フレーズ4
その昔、この世界には国を持たぬ流浪の民の一族が存在した。
彼らは、個人個人が専門的な分野の持ち主で、
行く先々で重宝がられた。
中には、国主自らがその地に残ることを懇願したが、
彼らは決して首を縦にふることなどなかった。
なぜなら、彼らには、全うせねばならぬ重大な使命が課せられていたから。
その使命がいつから課せられ、いつ成就するのか?
それは、長さえも知り得ぬことであった。
ただ、それが守られている限り
彼らの自由は保証され、どの国にも、どの地域にも
自由に出入りが可能であった。
もちろん、彼らの中にも事情があって一族から離れて暮らす者も存在したが、
離れてからも生活は最後まで保証された。
風の精霊を守護とし、自由気ままに暮らす一族の使命、それは、
ー夢魔を倒す運命の子のその瞬間まで見護ること
ただし、決して手をださずにいること。
「育てるのには、ずいぶん手をだしちまったが、
あの瞬間には、一切手を出してねえからな…」
「えっ!では、ルッカが夢魔を浄化する瞬間を見ていたと?!」
「ああ、お前さんがルルカにブスーとやられるとこなんざあ、
胸がスカーっとしたもんさ!」
「·················」
ハルフォードとしては、びみょーな思いでその言葉を聞いていたのだった。