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フレーズ1
始めは、屋敷内のことだけだと思っていた。
あの子が泣けば、
部屋に飾ってある花を始め、庭じゅうの草花が萎れ
木々は葉を散らす。
それどころか、
料理用の食材までしなびてしまう始末だった。
逆にあの子が笑えば、
花はいきいきと輝き始め、季節を無視して咲き誇る。
もちろん、食材も美味しくなったのは言うまでもない。
喜怒哀楽の豊かな子で、
泣いたと思えばすぐ笑い、
起きたと思えば、すぐ眠る。
まわりのものは振り回されっ放しであったが、
それでも
可愛くて可愛くて、その変化の深刻さに気がついていなかった。
いな、
気づかぬふりをしていたのかもしれない。
気づいてしまえば、別れるしか解決の方法がないと分かっていたから…