牛乳色の温もり
なろうラジオ大賞2第十三弾。気分はハガキ職人。
タイトルは「牛乳色の温もり」と呼んでもらえたら有り難いです。
タイプの違う話を書きたいと思っても、男女二人で読んでもらう事を考えると、自然と話の方向性が決まってきてしまうのが悩みどころ。
せめての抵抗として少しキャラのテイストを変えてみました。お楽しみいただけましたら幸いです。
私の三度目の訪いの声に、男がようやく扉を開ける。
「お、久し振り」
少し待たされた事に不機嫌になっていた私は、返事もせず男の横をするりと抜けて部屋に入った。
「しばらく来なかったから心配したぞ」
お生憎様。貴方には私しかいないのだろうけど、私には貴方みたいなのが沢山いるのよ。寄ってあげただけでも感謝して欲しいわ。
「外、寒かっただろ。今ミルク温めるからな」
そういう気の利くところは好きよ。昔は温め過ぎて火傷させられて随分怒ったものだけど、最近は私の好みの温度も分かったようね。
「お待たせ」
うん、丁度良いわ。私専用のミルクを用意して待っていた事にも免じて、さっき待たせた事は許してあげる。
「ご飯は食べてく?」
残念ね。夕食は他所で済ませてきたわ。私が返事をしないでいると、空になったミルクの器を下げていった。
「さて、と」
男はテレビを点けて見始めた。どういう事? 私が来てあげたんだから、私の相手をするのが当然ではなくて?
「ん? 何だ? どうした?」
私が黙って身を寄せると、男は嬉しそうに私の頭を撫でる。そうよ。そうやって私の有り難さを噛み締めなさい。
「何だ、今日は積極的だな。じゃあ、よっと」
男は私を抱き上げ、胡座の上に座らせる。あら、大胆ね。私の手に触れるのさえ躊躇していた昔が嘘みたい。
「お前は本当に可愛いな」
彼の手が、私の白い身体を遠慮なしに撫で回す。胸も、お腹も、腰も、脚も。くすぐったさと気持ち良さが身体を走り、私は身をくねらせる。
「お前に触れてると仕事の疲れなんか忘れちゃうな」
恍惚とする男の表情に、何とも言えない達成感と満足感が私を包む。舐める位ならしてあげても良いかしら。
「……なぁ、ここにずっと住まないか?」
あら、一人前に私を独占したいのかしら。でも無理ね。私は一人に縛られるような生き方は出来ないの。
「あ……」
男の提案への返事として、私は膝から降りる。……何よ、この世の終わりみたいな顔しないでよ。私が悪いみたいじゃない。
「……駄目か……」
……仕方ないわね。ほら。
「!」
男の背中に背中を合わせる。伝わる体温と一緒に、私の気持ちも伝わるでしょ?
「……ありがとう」
暖かくなったら眠くなってきたわ。私の欠伸を見て、男は寝室の扉を開ける。
「ほら、おいで」
布団をはいで手でぽんぽんと示す。まったく、誘い方がなってないわね。眠いから許してあげるけど。
「おやすみ、みるく」
男の言葉に私は尻尾だけで返事をした。
読了ありがとうございました。
はい、ミルク色の白ねこですよろしくおねがいします。
猫ってこういう小悪魔女子っぽい動きしますよね。だがそれがいい!
短編だと叙述トリックも有効かなとやってみました。
引っ掛かってくれた貴方、その素直さが大好きです。
ばっちり気づいた貴方、素晴らしいです。よろしければどこで気づいたか教えてください。
「別に最初から分かってたし。騙されてないし」と目を逸らしながら言う貴方、可愛いと思います。
エロくない事をさもエロいように書くの、大変だけど楽しいですね。こういうのが好きだという方は、拙作
『欲望の厨房』
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も併せてどうぞ(宣伝)。
それではまた次回作でお会いしましょう。