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閑話一

置いていかれた三人娘の話。

 勇者が女魔族ともふもふ談義をして居る頃。〝還らずの森〟に一番近い人間の街で、勇者に置いて行かれた三人のパーティーメンバー内の二人が言い争いをしていた。


「だから言ったじゃない。何で勇者様の側に誰も居なかったのよ!」

「ふん! 元々はお前が言った事だろう平民! 何が「少しは勇者様にも一人になる時間は必要ですよ」だ! 結果、何処か行ってしまわれたじゃないか!」

「な! 確かにそれは言ったけど……あの日は間違いなく、誰か側に居た方が良いとも言ったわよ!」


 言い争っているのは戦士と賢者の二人で、姫騎士だけは二人のやり取りを黙ってみている状態。

 そして、そんな彼女達を中心に周囲には如何したら良いのか解らず、右往左往して居る騎士達が居る。と言うのも彼等の考えは単純で、こんな言い争いをして居る三人を、どうやって街に住む人達の目から守るかと言う事だ。

 当然の話だが、勇者が何処かに消えた事も、その事で慌てる彼女達の姿も醜聞以外何物でも無い。

 こんな事が敵対して居る貴族やら他国にでも洩れれば……と考え、必死に彼女達の姿を守っているのだが、果たしてどれだけの効果があるのだろうか?

 なにせ、彼女達の声は大きいし、街自体かなりの人で賑わっている。当然だが、この騒ぎを聞きつけている者は居るだろう。


「二人とも落ち着きなさい」


 そんな中、透き通った声で姫騎士が口を開いた。明らかの他の音や声よりも静かであるにも関わらず、その声は全ての音を切裂くかのように、争っている二人や彼女達を守っている騎士達の耳に届いた。


「勇者様は戻ってきます。今回のこの行動も、賢者さんが言っていた……なんでしたっけ? 恋の駆け引き? を真似ただけでしょう。そう考えれば、可愛い行動じゃないですか」

「それは……確かに、時には距離を置くのも大切だとは言いましたけど」


 勇者の行動予測は、姫騎士の絶対の自信から来る勘違いなのだが、彼女はその考えが正しいと信じてやまない。何故なら自分は勇者に愛されて居ると確信しているから。

 そして、その勘違いの自身から来るものではあるが、彼女が告げる言葉には説得力があった。

 賢者にしてみれば、姫騎士の言う駆け引きに対して身に覚えがあり、何とも言えない顔をしている。まぁ、その内容が基本的には、勇者の前で違う騎士などに声を掛けたりと、着ている物や見方が違えば娼婦と間違われかねない行動だったが。


「だが、実際勇者様は居ない。姫ちゃんどうするんだ?」


 女戦士が姫騎士にどうするかを聞いた。確かに彼女の言うとおりで、実際に勇者はこの場に居ない。戻るつもりが無いと言う事までは気が付いて無いが、このような事は初めてなので、かなり焦ってしまうのも仕方の無い話。


「其れに関しては……そうですね。迷子になっているかもしれませんので、探索は騎士の皆様にお任せしましょう。私達はもう少し〝話し合い〟をしましょうか。では、騎士の皆様……そうですね、数名選んで勇者様の探索に向かってください」

「は! お任せ下さい!」


 見つかるはずも無いのに、絶対に発見できると思っている騎士達。どうせ戻ってくるのだから、探しに行かせなくてもと思いつつ、居ない勇者を探すポーズだけでも必要だろうと考える姫騎士。

 こうして、中身の無い勇者探索が行われるが、彼等には〝還らずの森〟に入る事は不可能で……まさか、そんなところに勇者が行くなど、頭の片隅にも無いのが現状。


「それでは……私達は〝恋の駆け引き〟とやらに着いて、もっとお話をする必要が有りそうですね」


 絶対強者の風格を纏った状態で宿へと移動を開始する姫騎士。

 彼女には恋の駆け引きなど無用の物だった為に、女賢者の話などさっぱり解らない物だった。まぁ、それも当然だろう。今までならば、相手から寄ってきて媚びへつらって来る。それが当たり前の世界だったのだから。

 しかし、勇者の行動は彼女にとって全く持って予想の付かないのものであり、これは少し不味いのでは? と、わずかに危機感を覚えた。その為に、女賢者に詳しく話しを聞こうと行動をする。


 現実には、既に手の打ち様が無いのだが、彼女達がそれを知るのはまだ先の話。

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