あふたぁ! その五
重要な存在のアフターを忘れてました!! あっぶねぇ。
彼の自我が明確に芽生えたのは何時の頃だろうか? ただ、彼の意識がはっきりした頃には、既に彼にとって優しい世界が有った事は確かだ。
そもそも、その自我がはっきりしない頃の記憶が全く無いのかと言えば、また別。
彼は薄っすらと覚えている。まだ子供だった自分を宝物の様に抱きかかえてくれた事を、動ける様になってからは、色々な遊びを教えてくれた事を。
ただ、大きくなり少しずつ色々な事を知ると、自分と自分の両親だと思っていた両親は種が違うという事に気が付いてしまう。……と言うよりも、本能的に違うと理解しただけだろう。
何せ、全く姿が違うのだから。そしてまた、言葉のやり取りも出来ない。
ある程度だが、意思の疎通は出来ていると言えただろう。しかし、細かなところで通じないのだ。
偶に来る、両親と同じだろう種の雄と両親はしっかりと会話が出来ているのに。
そのような葛藤を胸に、彼は自らも会話をしたいと思い続けていたのだが、それに気が付くことは無かった。
何せ、それはまだ彼の自我が明確になっていない頃の話であり。そして、そのようなもやもやとした何かに気が付いたのは、随分後の事になってからで、気が付いた時に彼は後悔するのだが……。
それはさておき。
幸せとも言える時間を過ごしていた彼は、突如両親の片割れが帰って来ない事で寂しさを覚えてしまう。
もう一人の親から、時折その存在を感じる事は有ったのだが、それでも触れることが出来ないという事が彼にとっては辛かった。
なにせ、彼にご飯を用意してくれていた相手だ。序列でいうなら最上位と言っても良いだろう。
そんな寂しさを、もう一人の親と一緒にごまかしながらも、日々を過ごして行く。
親と一緒に狩りに出ては獲物を取り、体を洗って貰っては櫛で梳いてもらう。
そうしている内に、月日は流れ彼自身も自らの家族を得る事になった。いや、嫁を貰い子供が出来たと言った方が良いだろうか。
その時の、彼の親の喜びようは凄かった。少し彼は引いてしまうレベルだったようだが。
それでも、喜んでくれる親を見るのは嬉しかったと感じた彼は、少しでも親と会話をする為に努力をする様になる。
もう、この頃になると、その知能は既に人のレベルに片足を突っ込んでいただろう。……会話が出来ないだけで。
しかし、彼の思い空しく、彼はもう片方の親も失う事になってしまう。
まだ、一言も言葉を交わせていないのに。そのような思いで一杯な彼だが、その親が彼に頼み事をした。
親が言った〝時が来るまで守る〟その言葉を胸に、人の言葉を練習しながらひたすらこの地を守り続ける。彼の子供達と共に……。
時が流れ、彼の宝物が目を覚ます。そんな時期が来た。
そんな折、森の入り口で人の気配が激しくなる。その為、彼は森の入り口に様子を見に行く。
彼が姿を見せると、人は驚いた後、彼を崇めだした後そそくさとその場を離れた。
そして、数度同じような事をする人々が現れる。これでは話にならない。一体何が目的なのか、彼には解らなかった。
しかし、ある時一人の男がやって来た。
その者はここら一帯の人達。その群れの長らしい。そう理解した彼は……初めて人の言葉を口にした。
『ふむ……漸く話が出来そうな者が現れたか』
時が流れ、森の生態が変化し、彼の宝物を守る為の木々が減った。コレ以上、あの家が一目から逃れるのも大変だろう。
そう判断した彼は、この群れの長に話をして、安全を守る為の交渉をするのだが、それがどうなるかはまた別の話。
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彼とは……言わずと知れたもふもふである、女魔族が助けた狼君の事です。




