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四十一話

 勇者が何時もの森で、まったりとしながら読書をして居る。

 そんな彼の背後に、薄っすらと透き通った影のような存在が現れた。が、勇者は動じず読書を続けながら声をかけた。


「終ったのか?」

「はい。お陰さまで」

「そうか。で、良かったのか? 復讐は果たせたんだろうが」

「えぇ。ただ、まだ眠るには速そうです。何せ……」


 ちらりと勇者と影が視線を移すと、其処には……。


「ムームームー!!」

「キャハハハハ、タノシー!」「グルグルダー! グルグルマキダー!」「目隠シ目隠シ!!」


 口を塞がれ何やら叫んで居る者? と、子供達と思われる声が楽しそうに遊ぶ声。

 そして、その声がする場所には真っ黒な球体の塊が有り、時よりうねうねと動いている。


「……あー、遊んで居る訳か」

「はい。アノ子達が満足するまでは……先に眠れないかと」


 無邪気に遊ぶ子供……と言えば聞こえは良いだろう。

 しかし、時として子供は残酷だ。何せ、手加減を知らない。……そして、この子供達は。




 時を少し遡る。と言うのも、勇者達が施設の地下から被害者の村人達を外に出し供養をした後の話だ。


 全ての村人を荼毘に付し、骨を埋め、墓を作った後に、村人達に埋められていた魔石を砕いた時、それは起きた。

 砕いた魔石の欠片が集まり……勇者達の目の前で一つの巨大な黒い塊へと変化した。


 当然勇者達はその塊が、小さいながらもあの化物に近いモノだと判断し討伐しようとしたのだが、その塊は一切の敵対行動をする処か、勇者達に声をかけて来た。

 何と言う事は無い、それらは勇者の行った行為に対して感謝を告げた。


 ただ、彼等が誕生したのはやはりと言うべきか、領主に対する恨み。そして、その恨みが体内に埋められた魔石に蓄積されていたのだろう。化物を作り出す下地は出来ていたと言う事になる。

 だが、ここは魔境では無い。いわば周囲に濃厚な魔力が無い。当然、環境不足で化物が生まれるはずは無かった。

 だが、此処には勇者と魔族の二人が来てしまった。魔境に住み、そこで修行をして居る者達だ。


 それ故、微妙ではあるが、ぎりぎり条件が揃ってしまい、かなり劣化されて居る化物モドキが誕生した。


 ただ、この化物。恨みの元が元村人達。そして、勇者達の行動を魂や魔力などを通してみていた。

 それ故に、狂い暴れる化物にはならなかったという、ある意味領主の理性ある化物を作るという計画は達成された。

 ただ、その恨みは全て領主に向けられていた訳だが。




「まぁ、満足したら全員で逝けば良いだろう?」

「はい。色々とありがとうございました」

「お礼はいらんよ。俺はちょこっと魔力を与えただけだ。それに、こっちにも思惑が有ったからな」


 勇者の思惑。

 それは、今回の事後処理についてだ。何せ誰が何をしても角が立つ。勇者が動けば二分化されて居る組織が、魔族の二人が動けば教会が、国を動かそうとすれば、実験の内容を告げなければならない。


 それ故に、村人の恨みによる怨念が領主を襲った……と言う形にすれば、一番だろうと勇者は判断した。

 なにせ、実験材料にされた者に襲われたとなれば、非道な実験を行おうとする者を少しでも減らせるだろう……と、多少ではあるが希望的観測。

 実際には、そんな事知るかとやる者は出てくるだろう。実際、既にやった者が要るのだから。なので、勇者はその希望的観測で少しでも減る可能性を考え、呪われた領主をアピールする事にした。


「ま、お前達みたいな奴が少しでも減れば良いんだけどな」

「……そうですね」


 影は顔の無い顔で、苦笑してみせた。実際には解らないのだが、勇者にはその様な感じがした。


「ま、満足するまでは此処に居ると良い。此処なら……誰も来ないからな」

「ありがとうございます。子供達も……喜んでますね」


 響き渡る子供達の声。実際にはその姿は見えない。少し黒い感情と実に楽しいと言った声が響き渡る。そして、勇者の側に居る影もまた、似たような感情がこもった魔力を流していた。




 因みに、女魔族はこの状況が実にホラーチックなので、怖くて部屋から出れずに居た。そして、この状況でも平然としている勇者に対して、更なる尊敬の念を持ってしまうのだが……ソレは別の話。










 世界に驚愕するニュースが走った。

 魔王が、全ての者に直接演説をしたのだ。


「此度、人間が実に非道な実験を行った。少し前に、我と勇者が協力して倒した化物を作り出すという……何とも度し難い実験だ。しかも、それには人の命が使われたという!」


 この時点で、全ての人は魔王の演説内容にパニックを起こしただろう。

 勇者と魔王が協力……と言うのは、色々と話題にはでていたのだが、それが事実だったと発覚した。

 どこぞの誰かが、非道な実験を人体実験をしたと言う事もまた、普通に生活していた人達には驚くべき内容だ。

 しかし、この様な事はまだ軽かった。


「古より、人間は実にくだらない事をする。我等が反撃をしないと解るやその領土を獲得する為に襲う。平民とあらば実験動物にするなどと言う事も、既に何度目だろうか? 獣人狩りの件もまた然り」


 次々と魔王が暴露していく内容。慌てるのは教会に教会と蜜月だった国達。獣人狩りをしていた国は……既に無い。


「故に、我は此処で宣言する。全ての国を……滅ぼすと」


 魔王からの宣戦布告。コレにより世界の歯車が完全に破壊された。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。



取ってつけたかの様な名分で宣戦をした魔王。イッタイナンナンダー(まて

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