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閑話八

えまーじぇんしぃー! ちっと、ホラーな展開かもですので、ご注意ください。

「馬鹿な! 何故ばれた!!」


 慌てる男が森の中を駆け巡る。

 彼はこの土地の領主をしていた男で、勇者達が捜査した、あの村に例の施設を造った男だ。


 彼は、あの研究がばれるなどと思っていなかった。カモフラージュはしっかりと行っていた筈だったから。

 地下室への扉は巧妙に隠していたし、魔力が漏れてこないようにと処理もした。

 もし、施設に入られたとしても、人形を大量に置いた事で勘違いしてくれるだろうと、そんな人の意識を誘導する小細工もしていた。


 だと言うのに、何処の誰だが彼には解らないが、その巧妙に隠したはずの地下室が暴かれたのだ。

 実際、暴いたのは勇者とそのお供の魔族二人なのだが……三人は表に出る事無く行動して居るので、彼が勇者達の行動を知る術は無い。


「はぁはぁ……追っ手は……居ない……か?」


 しきりに背後を気にする男だが、背後には何も居らず傍から見れば気にしすぎでは? と言う行動を繰り返している。

 しかし……実際には追っ手がしっかりと、男をストーキングしている。


 ギョロリと、空間の一部が割れ目玉が出て来る。

 それは、男を目視するとゆっくりと男の居る方向へ、空中を浮きながら移動していく。


「むぅ! またか! またあの目玉が来たのか!!」


 ずるずると後ずさりをし、地面を転げまわるかのように転がった後、なんとか立ち上がり走り出す。

 しかし、そのような事をしても目玉から逃れる事は出来ない。


 一つ。また一つと空間が割れ目玉が男を見つめる。


 悪夢の光景といえよう。空中に突如目玉が何個も現れるのだ。そんなモノを目にすれば、正気ではいられなくなる。


 しかし、この男はマッドな科学者の面を持ち合わせていた。生きた人を切裂き魔石を埋める。その様な事を平然と出来る男だ。

 空間に目玉が出たぐらいでは、正気を失う事など無い。……と言うよりも、既に正気ではないのかもしれない。


 彼が普段通りの生活をしていれば……寧ろ、実験のサンプルだ! と嬉々として飛びついていただろう目玉。

 だが、今男はその命を狙われた後だ。当然、この目玉は命を狙ってきた物が放ったモノだと考える。


「姿を現さずに、監視しつつチェイスとは……えぇい、卑怯な奴め」


 もし、この場に男が行った実験の被害者が居たのならば、「どっちが卑怯だ!」と罵っていただろう。

 しかし、その様な事を言える様な者は現状此処には……。


「クスクス……卑怯者ガ卑怯ダッテ」「エー……ワラエルネ」「自分ノ事ヲ理解シテナインダヨ。クスクス」


 居た。

 何処からとも無く、男の居る場所で声が響く。それは、幼かったり、年老いていたり、男だったり、女だったりと、様々な声だ。


「誰だ! この私を愚弄するか!! 私は領主だぞ!」


 男がその声に対して自らは領主だと権力を持ち出し威圧するものの、男の発した言葉に対して周囲からは笑い声が響くばかり。


「アハハ、領主ダッテ」「バカダヨネ。モウ、ソンナ力ハ無イノニ」「マヌケダーマヌケサンダー! アハハハハハハ」


 増える目玉。響き渡る笑い声。其処には狂気のみが存在した。


「おのれ……血走った奇妙な目をしよって!! 何が可笑しいか!! 笑い声どもめ!」


 そう叫ぶと、男が鞘から剣を抜き目玉へと切りつける……が、その目玉が瞼を閉じるような動作を見せると、空間から目玉は消え、男の剣は空を切り地面を叩き付けただけに終った。


「!? 切れなかっただと……」


 そう呟く男の周囲に、再び目玉が現れる。それも、一つでは無い。二つ三つと増えて行き、それに合わせるかのように笑い声も増していく。


「な……なんだこれは!」


 男が叫ぶが、それに応える者は居ない。いや、応えは笑い声で返ってくる。


「実験ダヨ?」「実験ダヨネ!」「ソウソウ、実験実験」


 実験と笑いながら連呼するそれら。男は何の事か解らず、「意味がわからん!」と叫びながら剣を振る。


「何ガ解ラナイノカシラ……ダッテコレハ、アナタノ行ッタ実験ノ結果ナノヨ?」


 静寂が訪れた。

 何者かがこの言葉を発した時、周囲から笑い声が消え、ただその言葉のみを男に聞かせるかの様に。


「実験の結果だと……馬鹿な! あの実験は失敗に終ったはずだ!」


 男がそう叫ぶと、周囲の目玉が一斉に男を睨みつけ……うっすらと姿を作り出す。

 子供が、大人が、老人が、男が、女が、恨みの籠った目で睨みながら、一斉にその手を伸ばし始めた。


「や……やめろ! その手で私に触れるな!!」


 伸びてくる手。そして、掌からは目玉が現れ男に押しせる。


「くるな……くるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 叫びを上げるが、誰も助けに来るものは居ない。何故なら彼の護衛をするべき者達は、既にこの手に囚われている。


 掴まれ、絡まれ、次第にその姿は腕に全て覆われ……まるで腕で出来た球体の様なモノがその場に残った。


 男と護衛達は、口を塞がれ声を上げられず、手も足も掴まれ身動き一つ取れない。そして、目に映るのは大量の目玉。

 もはや、逃げる事も敵わない。護衛は既に正気を失っているだろう。

 そして、男にとって不幸な事は……彼が、この状態に置かれても正気を失う事が出来ない事だろうか。




 因みに、この後……この手や目玉が、彼等を連れ何処へ行ったのか、それを知る者は少ない。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!


手や目玉の正体は……次あたりで。

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