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四話

 深い森の中。高レベルのモンスター達を放置し激しい剣戟の音が響き渡る。この狂気のダンスを踊る主役は勇者と魔族の女。

 観客はと言うと、魔族の女が背にしていた子狼とモンスター達。しかし、モンスター達はと言うとこのダンスに巻き込まれ、切裂かれ、吹き飛ばされ、叩き潰されるといったモノが出てくる始末。


「奇襲を防いだ事は褒めてやるが、そんな赤子の狼を背にしていたら、防げる攻撃も防げないぞ!」


 勇者の言っている事はまさに悪役である。しかし、そのような事を言いつつも、勇者の聖剣は子狼を一度も狙ってはいない。

 この勇者が、正々堂々など知ったことか! と豪語しようとも、弱者を守る為に剣を取る。その信条だけは捨てていない。なので、生まれたばかりの狼。しかもモンスターでもない存在を、その聖剣で斬る、もしくは隙を作る為の餌にするなど出来るはずが無かった。


「ふん! こんな所で人間、それも勇者に出会うなんて運が無い。それにしても、勇者は口だけじゃない? そう言ってるのにこの子を狙わないんだから……さ!」


 勇者の剣を殴って払い、魔族の女が拳を勇者に向けて放つ。それを勇者はバックステップで回避。

 基本的に、この女魔族は狼を背にして居るので、動く事が出来ない。故に全てがカウンター狙いだ。だが、ただのカウンターでは無い。この女魔族は殴る時に魔力を拳に込めて打ち込み、回避されると解れば、そのまま魔力を砲弾として飛ばしている。

 なので、バックステップで回避したところで、魔力の砲弾が勇者を襲うのだが……真直ぐに飛んでくる砲撃など勇者に取っては子供の投石となんら変わりが無い。


「狙わなくても、お前はその場に留まざる得ないだろう? なら、こちらはじわじわと攻撃するだけで十分と言う訳だ!」


 飛んで来た魔力の塊を聖剣で切裂く。普段ならこんな風に隙が出来るような形で切裂く事はしないのだが、今回は敵対する女魔族が動かない事を理解している為に、余裕と力の差を見せ付けつけ……所謂、舐めプを勇者はしている。

 何故そのような事を? と疑問が浮ぶだろう。何せ、そのような事をしなくても、この二人のレベルと状況を見れば、勇者は簡単に女魔族を倒せるのだから。


「答えろ。何故その小さいモフモフを庇っている」

「……そんな事を聞く為になぶり殺しにしてるのかしら?」

「まぁ、気になったからな。気になったら調べ上げないといられない性質でね」


 そう、勇者は純粋に何故この女魔族が狼の子を守っているのか、気になって仕方なかった。

 勇者にとって、魔族とは弱者を甚振り、命を奪い、人間の世界を滅ぼそうとする絶対悪だ。しかし、その魔族が今、目の前で弱い存在を守ろうとしている。

 今までの価値観と全く違うと言う状況に、勇者は何が何でも聞き出したくなってしまった。


「良いから答えろ。その答え次第では……滅多切りにしてやる」

「……この子は保護してくれるの?」

「それも、貴様の返答次第だ。力の差は理解して居るんだろう? なら、お前に選択肢など無いと思え」


 まさに悪役である。勇者とは一体……ただ、此処には二人と一匹しか居ない。二人の攻防でモンスター達は色々な意味で散ってしまった。

 それ故この場に勇者の、この極悪非道とも取れるような物言いを聞くモノは居ない。


「はぁ……解ったよ。とは言え何も面白い事は無いよ」


 どうしようもない状況に、女魔族は勇者の要求を飲むことにした。とは言え、何故赤子の狼を守っていたかと言う話をするだけなのだが。

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