閑話六
悪事千里を走る。
そんな言葉があるが、悪事でなくても人の噂と言うのは得てして広がる物である。ただ、悪事ほど人と言うのは口にしやすいので、広がりやすいと言うだけだ。
では、現状広がってる話と言うのは悪事であるだろうか? それは、それぞれの立場から見た時、YESでありNOであるだろう。
何せ、世界で駆け巡っている噂と言うのが……勇者が魔王と共闘したと言う話だからだ。
事は少し前に起きた化物事件。その際に一つの街と魔境が化物によって消滅した。
コレだけでも、人々にとっては実にセンセーショナルな問題だ。
だが、事はここで終わる事が無かった。そんな、街と魔境を消滅させた化物を、勇者と魔王が共闘して倒したと言うのだ。
人々は様々な反応を見せた。
中には勇者の裏切りだ! などと叫ぶ者。それとは逆に、世界の危機で偶々勇者と魔王が共闘しただけだろうと、現実的に物を考えて居る者。他にも多々あるのだが人の領域に置いて多いのは、やはり勇者が魔族と繋がったのでは? 等という話だろうか。
ただ、その話が広がるのは有る意味仕方の無い背後関係がある。何せ、勇者が裏切っただの勇者として不適格だのと言っているのは教会の人間達だ。
そんな教会に所属する人間が、公式に発表したともなれば当然だが人の意思はそちら側に流れて行く。中には、そんな事信じれるか! と言っている者も居るのだが……。
そして、当然だがそんな話が街で広がれば、勇者と元々組んでいたパーティーメンバーや国の人間にも知れ渡る事となる。
「全く……勇者様が裏切ったか。ありえん話だな」
「私もそう思います……ですが、勇者様が魔王と手を組んで化物を倒したのも事実みたいですし」
戦士と賢者が勇者はそんな事をしていない。だが、事実手を組んだのは確かな話だと確認をしている。
そして姫騎士はと言うと、何時もの様に二人の会話を見守っている。
ただ、此処で問題なのは彼女達のお供である騎士達だろう。彼等は何かと勇者が裏切ったと言う教会ベースの会話で盛り上がっているのだ。
勇者の人となりを知っている彼等が、勇者が裏切ったという話で盛り上がる。これは、周囲に居る人にとっては、本当に勇者が裏切ったのでは? と思ってしまう要因にもなる。
とは言え、そんな彼等の知る勇者も魔境内で二人の魔族と会う前の勇者なのだが……。
「兎に角だ。勇者様を発見しないとな。話を聞かねば解るまい」
「ですが……その勇者が発見出来ないのですよね」
そして、勇者が見つからないという事で頭を抱える二人。当然だが、魔境に入れるレベルに達してないので、発見できる訳が無いのだが。
「恐らくですが……勇者様は一人で救世の旅をして居るのではないでしょうか? でなければ、あのような化物が出た際、直に対応など出来ないはず」
「姫ちゃんよ……だが、それなら何故私達を置いて言ったんだ? 別に一緒でも良いだろう」
「……足手まといでは無いはずですし。勇者様の考えが解らなさ過ぎます」
勘違いも良い所である。実際には足を引っ張り過ぎていてどうしようもないレベルだ。だが、この三人娘と言い、お供の騎士達と言い、全く足手まといと言う自覚が無い。
その証拠に、騎士達もそうだそうだ! と、賢者の言葉を支持し、此処に居ない勇者の行動は最悪だと言わんばかりである。中には、化物程度ならば俺が倒せたなどと言い出す者も居る始末。
「先ずは……何が何でも勇者様を探すのよ。一度発見されたのだから、間違いなく近くに居るはずだわ」
そう言って消滅した街。その側にまで移動する事を提案する姫騎士。
だが彼女達は知らない。勇者の移動速度は次元が違うという事を。そして、既に今彼女達が居る街。その近くにある魔境〝還らずの森〟に帰還していると言う事を。
既に見切りを付けられている。そんな事は露知らず、彼女達は勇者を求めて動き出す。しかし、既に距離を置かれている。
そして、自分達の自らの状況と力量を正しく認識する事が必要なのだが……その事には全く考えが及ばない。
ただ、現状として言えるのは、彼等の中に勇者の悪口を言っている者達が居ると言う事だろうか。そして、その事を細かく見ている姫騎士が居る。
近い将来に共としてついて来ている騎士達の中に暇が出されるのも……ありえるかもしれない。
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一気に全ての話題を掻っ攫うでしょうねぇ……。




