表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/64

三話

 森が騒いだ方向へと警戒をしながら勇者が森を進んで行くと、途中から激しい戦闘音が聞こえてくる。


「ちっ……やはり誰かがレベリングでもやりに来たか」


 思わず舌打ちをしてしまう勇者。戦闘中の魔族はこの森で戦える相手、当然だがレベル次第ではてこずる相手となる。

 それに、相手が単体とは限らない。敵が複数居るとすれば、勇者も負けるつもりは無いだろうが、相当厳しくなるだろう。


 それ故に、勇者は森の中を静かに進む。

 もし、この姿を元PTメンバーが見れば、勇者らしくないと騒ぎ立てるだろう。正々堂々としていない……と。

 しかし、そんな馬鹿な話があるか! と、勇者自身は思う。戦いとは生き残ってこそだと言うのが勇者の信条。

 彼女達が言う「卑怯者」だの「正義」だの「勇者としての誇り」なんてものは、死んだ者が言えるわけが無い。はっきり言って、誇りなんぞゴミ箱に捨ててしまえ! と、勇者は常日頃思っていた。

 ただ、そのような戯言を口にしながら、敵へと突っ込む馬鹿者達……もとい、三人のパーティーメンバーや、派遣されてくる騎士達の尻拭いをしてきたのも……また勇者だ。


「こうやって一人で行動してると、本当に気は楽だな」


 尻拭いの呪縛から解き放たれたとでも言うべきか、勇者が今の状況で感じているのは、凄まじいほどの開放感。

 全てが自己責任ではあるのだが、周囲を気にしなくて良いという環境は、其れほどまでに勇者の心を軽くした。


 しかし、数と言うのはまた力でもある。

 勇者にとって足手まといだった三人娘や騎士もまた、勇者にとってミートシー……いや、にくか……違う、人力センサ……所謂、情報収集源でもあった。

 なので、一人となった現状では、悲め……掛け声による敵の接近を認識する事が出来ない。

 それゆえに、勇者は何時も以上に慎重な行動を取る事となる。

 木々を使い身を隠し、明るい空間は避け、その行動は勇者ではなく暗殺者と言った方がいいだろう。


「此処までは近づけたか。さて、暴れているのはどんな奴だ?」


 聖剣を手に爆破の震源地、其処に居るであろう敵を探す勇者。

 しかし、其処にいたのは……人間と全く違いがない姿をした女。そして、その女の背には何故こんな所に居るんだ? と疑問しか出ない小さな存在。

 それは、まだ生後数日ぐらいのもふもふとした何か。そして、周りのモンスターはその小さい存在を食べようと襲っている。


「……此処で戦えると言う事は、あの女は人間じゃないよな? 普通の人間なら、この森に入れるまでレベルを上げる事は出来ないはずだ」


 レベルを上げるにしても、強いモンスターが出る場所などは国が管理している。特定のダンジョンなどが其れにあたるだろう。その為に、勇者が知る国が許可を出している人間……には、あのような女は居なかったと勇者は記憶を探った。

 だからこそ、目の前でモンスターと戦闘をして居る女が、人間だと言うのは否定出来る。


「何であんな狼の子供を守ってるのか謎だが……魔族が一匹なら都合が良い」


 他にあの女の仲魔が居ない事を確認してから、勇者は手に持つ聖剣に力を込める。

 今なら、あの魔族の女を討つ事が出来る。そう、相手を睨みつけながら。

やっと更新できましたー……体調め。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ