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閑話五

前回が獣人側だったので、今回は人間側です。

「やばいやばいやばいやばい!! あれはやばい!!」


 やばいと言う言葉以外を忘れたかのように、やばいを連呼して逃げている男が居る。

 彼は獣人との戦いにおいて将として戦場に来ていた男だったが……勇者達による空襲が始まった時、いの一番に逃げ出した臆病者だ。

 だが、直に逃げ出した者は彼だけでなく、彼の周りには彼の供回りの者や同僚なども居る。


「大体何だアレは! 何時から獣風情が空を飛び、遠距離から魔法を連射出来る様になったんだ!!」


 男はふざけるな! と言う思いで一杯だ。それも、彼の……いや、ほぼ全ての者にとっての常識と言えば、獣人の魔法は人間ほどの威力は無く、使えたとしても近距離から中距離までと言ったモノ。

 しかし、その考えは間違いでは無い。何せ、空を飛び遠距離から魔法を連射したのは勇者と女魔族なのだから。

 ただ、此処にいる彼等にそれを知る術は無い。獣人を助けたのだから獣人だろうという考えは当たり前の話だ。

 それに、彼等は獣人ほど感覚が鋭くない。当然だが、臭いで種族を嗅ぎ分けるなど持っての外。結果、人間側には勇者や女魔族といった、獣人で無い者が行なった行為などと気付ける訳が無かった。


「と……兎に角本国に連絡だ! いや、直に軍を再編成し獣共の国を滅ぼすべきだ!!」

「し、しかし……また、あの者が出て来たら太刀打ち出来ませんぞ!」

「……勇者だ。勇者を呼べ!!」

「閣下。勇者は行方不明です! というよりも、勇者不在をしって獣共が動き出したのかと!」

「えぇい! 役に立たぬ勇者め! さっさと見つけて隷属させるべきだ!」


 実に阿呆な話をして居る。全ての責任を勇者に擦り付け、自らの失態を逃れようとしているが、そもそも獣人の扱いを間違えなければ、こんな事には為らなかったとは全く考えない。

 ただ、有る意味勇者の所為と言うのは間違ってないだろう。何せ勇者は獣人側に付いて空爆を行なったのだから。

 しかし、今彼等はどうしたら敗戦の原因を他者に擦り付けれるか、どうしたら失った奴隷を補充出来るかと言う事しか考えていなかった。


「……国に戻っても大丈夫でしょうか? 敗戦によって我々が罰せられるのでは?」

「多少はあるだろうな。だが、それでも罰金か……それとも、次の戦いで汚名返上として最前線に送られるかだろう」

「最前線……やはり勇者を見つけなければなりませんな」


 彼等の頭の中は、既に勇者を前線に立たせてその後ろを着いていく計画で一杯だ。

 何せ、そうすれば勝利は間違いない。しかも、最前線で戦ったという汚名を雪ぐ以上に、名誉を得る事に繋がる。何もしなくてもだ。


 だが、彼等は知らない。勇者が見つかるはずも無い場所に居るし、もし参戦するにしても獣人側で戦うという事を。

 絶対に叶えられる事のない妄想を描きながら、今はひたすらに逃げる男達。




 ただ、彼等は知らない。彼等の祖国が既に……他の人間の国によって制圧されて居る事を。

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