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閑話四

 獣人達の軍を指揮している将軍が、救助された獣人奴隷達の解放される状況を眺めていた。

 眼下で起きている事は彼等にとっての悲願であり、長い年月……それこそ、数百年と言った話で半ば諦めの境地でもあった。

 しかし、今回人間の領域が荒れたとあり、一縷の望みにかけてみる思いで軍を動かした。


「奇跡的な光景ではあるが……それを行なった者は一体何者なのだろうな?」

「突然現れましたからね。とは言え……前々から繋がっていた者も居たようですが」


 突然現れた男はカルガモのお面を着けた、なんとも場にそぐわない者では有ったが、その男自身の持つ存在感や洩れ出る魔力などが只者では無い事を裏付けており、そのような男が手を貸すと言う物だから、この場に居る獣人達は頭を縦に振るしかなかった。

 とは言え、そのような存在感を持つ男が手を貸すと言った所で「はい、そうですか」と、納得できる訳が無い。

 彼等は彼等で半分以上疑ったまま、別の方向で救助を行なう為の作戦も考慮していた。

 しかし、蓋を開けてみれば……彼等は殆ど何もする事無く奴隷達の救助が完了したではないか。これはもう、唖然とするしかない。


「獣人で無い事は確かですよね」

「まぁ……そうだな。雰囲気もそうだが、獣人にある耳や尻尾が無かったからな」

「人間……であれば、あそこまで魔力を有してないでしょうし、人間の魔力とは臭いが違いました」

「解りきった事を……あれは、魔人族だろうな。おい、其処の所はどうなんだ!」

「えぇ、お察しの通り。私と繋がりがあるあの男は……魔人族ですよ。前々から、獣人奴隷の件でお世話になってまして」

「……どおりでお主の所で、奴隷達の救助がされたと言う多い訳だ。あのような者と繋がりがあれば、人間共の地でも動けるのも解ると言う物だ」


 男魔族と繋がりがあった者。彼が周囲の問いを認めたことにより、カルガモ仮面は魔人族と認識される。

 しかし、彼等にとってここで気になる事はと言うと、何故種族が違う魔人族が手を貸してくれたのか? と言う事だ。


「しかし、何故あのカルガモ仮面は手を貸してくれたのだ? 種族が違う上に……獣人と魔人は友好関係に無いだろう?」

「その事については……どうも彼自身も少数勢力のようでして、種族のあれこれに囚われず独自で動いているみたいです」


 少数勢力……実際は、勇者と女魔族と男魔族にペットの子狼を入れれば三人と一匹なのだが……それでも少数勢力なのは変わらないだろう。ただ、正確な人数を教えていないと言うだけで。


「そう言えば……三人は居たな。それぞれ妙なお面を被っておったが」

「確かに! しかも一人は……臭いが異なってましたね」

「ん? それは……一人は獣人と言う事か?」

「いえいえ、耳も尻尾もありませんでしたし……あれは人間ではないですかね」

「まてまて!? 人間であれだけの魔法を撃つ者など!!」


 いないはずだ。そう繋げようとして、彼等は一つの答えが頭によぎる。

 何故、人間の国が荒れているのか。何故、自分達が戦争をすると決めたのか。全ては、人間達の最大戦力である勇者が消えたからでは無いかと。

 そして、あれだけの魔力を持ち、魔族とは違う気配や臭い。更には仮面で顔を隠してるという事を考えれば、手を貸してくれた者が人間の勇者では無いか? と言う答えに行き着くのは自然な事かもしれない。


「……人間側にも、我等に支援をしてくれた国もあるからな。全てが敵……と言う訳では無いかも知れぬ」

「しかし……それにしても我等が耐え忍んだ時を考えれば……」

「うむ、それは解っておる。ただ、此度の事で一番頭を悩ませた国の軍を崩壊させた。この事で流れは変わるだろう」

「……大々的に勇者や魔人族が手を貸してくれた事を広めますか?」

「いや、それは止めておこう。仮面を被り身元がばれぬようにしておったのだ。我等がそれを広めるのは、手を貸してくれたというのに仇で返すと言う物だ」

「了解しました……ですが、この件はしっかりと残しておきたい事でもありますので、特定の人物だけが見れる書物にでもしておきませんか?」

「そうだな。遠い未来の世界で正しい情報が流れるようにしておくべきだな。今回の件で勇者や魔人族に敵対しなかった人間の国が手を貸してくれた事は、何時か公表するべきだろう。そして、それが出来る頃には種族関係なく手を取り合っておるかもしれぬしな」

「……逆に、争いが激しくなっている可能性もありますが?」

「だからこそ……今は禁書扱いにしておけば良い」


 どちらに転んでも、人の目に付かなければ問題が無いだろうと判断する指揮官達。

 しかし、この戦いを見ていた獣人は多い。そして、お面の救世主が獣人出ない事もまた、彼等は理解している。

 どれだけ秘匿しようと確信に迫らぬ事とはいえ、お面を着けた者達が居て、彼等が獣人で無いのに助けてくれたと言う話が広まる事は確定している。

 何せ彼等は、不当な奴隷狩りから救ってくれたヒーローだからだ。




 正しい情報は秘匿されるが、戦場から帰った兵や奴隷達によりお面のヒーローが居た事が、獣人の国で広まって行くだろう。

 ただ、これが国や種族の関係に左右される事は……現状は無い。

 しかし、じわりじわりと蒔かれた種は、全てが変わる頃に盛大な花を咲かせる事になるはずだ。だが、その頃に勇者達やこの場に居る者は既にこの世を去った後だろう。

 そう考えると、時代の変わり目に生きているのでは? と獣人の指揮官達は考える。そして、変わった世界を見れないのは残念だなと、少しの寂しさを覚えるのだった。

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