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十八話

まだまだ悩みはつきません。

 勇者の剣。それは迷い無く悪を切裂く一閃。

 其れが一般的に認識されている勇者のあり方で、聖剣の使い方だ。


 しかし、人が見えない場所にいる現在の勇者。彼の剣には今、曇りが見えだした。

 確かに、勇者の剣は強い。その一撃は鋭くモンスターを一撃で仕留めている。


 だが、勇者本人はこの一撃に納得が出来ずにいる。


 何かが違うのだと、毎日のように振るっていた剣を手に考える勇者。

 それは、足運びだろうか? 重心の移動だろうか? 剣を振るった時の力の入れ具合だろうか? 様々な動きを思い描き、試してみるものの答えが見つからない。

 素振りの時は何ら問題が無い。一心不乱に剣を振るい、動作を確認するものの、問題が一切ないのだ。


 しかし、いざ敵対する物を目の前にし、剣を振るうと何か違和感を感じる。


「……解らん。なんだこの気持ち悪い違和感は」


 モンスターの死骸を前に、勇者は一体何だと声を上げる。

 別にモンスターの命を刈り取る事に躊躇して居る訳でも無い。寧ろその命に感謝し、美味しく頂く予定だ。

 なので、命を奪うその事に関しては問題が無いと勇者は再確認する。


「では何だ?」


 自問自答をするが、一向にその悩みが晴れる事が無い。

 其れもそのはずで、勇者の剣が曇った理由は此処最近の悩みが原因で、別にモンスターは一切関係が無い。


 人間と魔族。勇者とは何か。


 その様な事をここ数日、長々と考えては棚に上げる。それを繰り返した為か、精神的にも負荷が掛かってしまい、勇者の剣に影響を与えてしまった。

 なぜなら、勇者とは魔族を魔王を狩る為のハンターだ。そのハンターが、狩猟の理由に疑問を持つ。となれば、動きが鈍っても致し方ない。


 しかし、勇者はその事から目を逸らしているのか、気が付こうとして居ない。故に、更に勇者の剣は曇りを見せる。


 そもそも、この勇者。元よりそう言う気質が有ったはずだった。人間が魔族と今だに戦いをして居る理由に疑問を覚えるぐらいだ、なぜ聖剣は彼を選んだのか疑問すら覚える。

 しかし、勇者として選ばれてしまった彼は、一旦それらを棚の上に上げ魔族と戦い、勝ち進んできた。勝ち進んできてしまった。


 そして此処に来て、魔族の女や男との交流は、勝って来たことにすら疑問を覚えるようになる。

 何故なら戦った場所は、人間では無く魔族の領域。謂わば勇者達が彼等の場所を奪った形になる。


「ふむ……鍛錬が足らぬと思ったが、そう言う訳では無さそうだな」


 モンスターの死骸を前に、鍛錬不足か? と考え素振りをする勇者。しかしそんな訳も無く……ただただ悪戯に時を使っただけに終った。そもそも、素振りなら毎朝しているので、今更やったところでと言う話だ。


「となると……やはり、食べる量が足らないのか!!」


 何故そう言う発想になる! と、今の彼を師匠が見たら突っ込みを入れただろう。しかし、この場には勇者に指摘をする者は一人も居ない。


「こうなったら、この獲物をさっさと持ち帰りアイツに調理させるか!」


 美味しいご飯。確かにそれは、人に活力を与える物だろう。しかし、根本的に間違っているので、美味しいご飯を食べたからといって、勇者の剣にある曇りが晴れる訳では無い。

 そして、この曇りは勇者が明確に戦う理由を見出すまで晴れる事は無いだろう。

 勇者が戦う理由を見つける事が出来るか、それとも剣を置いてしまうのか、その前に何かが起きるのか……出来れば大事件が起きる前に、勇者には剣の曇りが晴れる用、何か明確な目標を持って欲しい物である。

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