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閑話三

「ハハハハハハ! あやつが消息を絶ったか!」

「ちょ! 老子笑いごとじゃないですよ! 勇者が消息を断ったんですよ」

「いやいや、奴ならその内何かやらかすと思っておったわ」


 勇者消息。その噂を聞き、ある場所にある道場で老子と呼ばれた老人が豪快に笑っている。

 そんな彼は勇者の師匠であり、武術・戦術・学問と様々な分野で、勇者やこの場にいる弟子達に教えている存在だ


「しかし……老子は何故勇者が何かすると思ってたんですか?」

「あーそれはな。奴が此処に居る頃に色々と疑問を投げかけてきたんだが、その内容が内容だったからな」

「えっと、どの様な話で?」

「それはな、聞けば何故だれも思いつかなかった? と思うような内容だが、当たり前すぎて疑問にも思えなかったモノだな」

「……すみません老子、それでは解りかねます」


 勇者が此処にいた当時。老子にした質問。内容を言わないものの、普通に考えれば当然違和感を覚えるはずのモノだと老子は言う。

 しかし、その内容を言ってもらわねば周りには通じない。此処にいる人は皆、頭にはてなマークでもつけたかのような顔をして、老子が内容を話してくれるのを待っている。


「ふむ……しかしだな。この話は外では絶対しないほうが良い話だ。それでも聞きたいか?」

「えっとそれは、聞きたくないと言えば嘘になるかと」

「ならば、誓約魔法を使うとするか。外では話すなっと、それが許可出来る物のみ残るが良い」


 そう老子が宣言すると、がやがやと弟子達は相談し始める。


 誓約魔法。これは、簡単に言えば約束を守らせる為の魔法。

 強制力は其処まで有ると言う訳では無いが、誓約を破れば破ったものに色々と不都合が起こる。

 例えば、童●である事が有る日突然皆に知れ渡る。大怪我をして足や手を失う……といった感じで、不都合の内容も軽いものから重いものまで様々であるが、何かしら起きるのは確定して居る魔法だ。

 軽いのならば問題無いのでは? と思わなくも無いが、どうしたら軽くなるのか、どんな事をすれば重くなるのかなどのメカニズムが解っておらず、この魔法を使うと言うのはかなりの抑止力になる。


 そんな魔法を使うという事で沢山の人が去ると思われたが、何故か全員がこの場に残っている。


「おぬし等……本当にいいのか? 誓約だぞ?」

「えぇ、問題ないです。むしろ同門の勇者が何を考えていたのか、皆知りたい思いで一杯ですから」

「そうか……ならば、魔法を使い話すとするか」


 そういって老子は、誓約魔法を使いぽつりぽつりと口を開き始めた。




 勇者が昔、老子に投げ掛けた疑問。それは至極単純な事。だと言うのに、なぜ誰も突っ込まないのか? といった内容。

 それは、過去にも勇者が居て、魔王と戦ったいた。そして、魔王を倒したという情報が有ると言うのに、何故今だに魔族と……魔王と戦っているのか? と言う事。

 過去の勇者と言えば国や教会の教育上、全ての勇者が魔王を討ち倒し、聖女や姫や貴族の娘などの嫁を貰い幸せに暮らしました。と、そう言う教えで終っている。


 しかし、現状を考えれば其れは可笑しい。と道場に居る頃の勇者は感じた。


 ならば何故、人間は魔族の領域を制圧して居ないのか? 魔王は倒したのだ、当然だがその部下も打ち倒している。だと言うのに、未だに魔族の領域は顕在し、魔王も居る。これでは可笑しいではないか。

 これでは、意図して人間の上層部が魔族を残しているのか、勇者が魔王を倒したと嘘をついたのか。

 そう勇者は考えてしまった。それゆえに老子に相談した。


 そして、老子は老子で何故今までこんな単純な事に目を向けなかったのだろう? そして、なぜこの子は気がつけたのだろうかと、頭を悩ませた。


 何故ならそれは実に危険を孕む疑問だからだ。


 なので老子は、子供である勇者に対して、絶対にその疑問を自分以外にぶつけないようにと師匠権限で厳命した。 

 それも当然だろう。何せ教会や国を全て否定しかねない内容なのだから。


 しかし、考えれば考えるほど、深みにはまってしまう。そんな闇が深い内容。そして、その答えが見つかるはずも無く、長い時間老子と勇者は共に悩み続け……悩んだまま、勇者は聖剣を手に入れて勇者として任命されてしまう。




「そんな訳で、奴は今でも悩み続けているはずだ。ワシも……答えなどみつかっておらぬがな」


 余りにもの内容に、弟子達はフリーズした。其れも仕方ないだろう、こんな事を急に聞かされても、今までの国や教会の教えと違いすぎている。

 ただ、ヒントは普通にある内容だ。なにせ魔族や魔王が居る事自体が、疑問の証明となっている。

 しかも、魔族からは一切人間の領地に攻めてくる事が無い。これでは、色々と可笑しいではないか! と、気がついてしまえば当然に思えてしまう。


「しかし、何故我々は今まで其処に目が行かなかったのでしょう?」

「それが……教育じゃろうなぁ。当たり前、当然、誰しもが言うから、そう言ったことで見るべき場所が見えなくなってたんだろう」

「はぁ……なんだか教会不信になりそうですよ」

「後、国もな」

「だからこその誓約だ。こんな事外では言えないだろう」


 そういう老子の顔は、実に悪そうな顔をしていた。それをみた弟子達は、しまった! という想いで一杯だ。

 なにせこの老子、何かと悪ふざけが過ぎる。今回の事も最初から話すつもりだったのだろう。ただ、弟子から自主的に聞こうとしたと言う事実を作り上げた。

 これは、無理矢理聞かせるよりも、自主的に聞いたほうが考えるからだという老子の考えが元だが……その際に、かならずこの老子は、楽しくなる方向を選ぼうとする癖がある。


「さぁ、悩むが良い! 悩めば悩むだけ、色々と世界が広がるからな」

「ろ……老子!! 老子すら答えが出てないのに何を!」

「皆で考えるから良いんだろう? さぁ、今度からはこの話も学問に混ぜるぞ」


 そう老子が断言する。

 この老子……答えが余りにもで無いので、皆を巻き込んで少しでも答えを導き出せるようにしたのだろう。

 実にあくどいやり方ではあるが、人が沢山集まって考えるというのは、色々な方向から物事を考えれるので、巻き込むというのは間違いでは無い。


 しかし、この事に関して彼等が答えを導き出せるかは疑問である。

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