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2章 魔の道

「──以前より断然早くなってる。」


左腕だけで素振りする俺はそれでも以前両手で振った時よりも早い剣に驚く


「当たり前であろう。長年鍛えてたおかげか、ジーンは()の方は中々成長している。そして昨晩魔物化した巨熊と戦い、死にかけたんだ。戦闘中も死にかけた時も存在進化レベルアップしているに決まっているさ。」


素振りを一旦やめ、師匠へと向き直る。もしかしたらあの時反撃に出る力が湧いたのは存在進化(レベルアップ)をした影響だったのだろうか。


「右腕の完治にはもう数日かかる。それまでは剣術ではなく魔道について教えよう。」

「魔法は知っているが魔道とは何が違うんだ?」

「魔法は魔道の一部にすぎない。魔法と魔術、二つ合わせて魔道と呼ぶのだ。」


違いが分からない。村では魔法という名前しか教えられないからだ


「魔法というのは己のイメージを魔力で発現させることだ。火を思い浮かべれば火の魔法、傷を癒そうとすれば回復魔法というようにな。イメージを固定化させるために詠唱を唱えたりするが無詠唱でも発動できる。」


そう言って見本を見せるように手のひらに小さな火球を作り出す


「一方魔術というのは魔法陣に魔力を流しこんで発動させるものだ。魔法陣の構築の仕方によって属性、効果が決まってくる。魔法と違ってイメージをせず、魔力を流すだけだから魔力さえあれば上級魔法に匹敵する力を誰でも引き出せる。一般的に羊皮紙に魔法陣を書き込んだ『魔術者スクロール』が高価で取引されている。」


それならばその魔法陣が書かれた羊皮紙を買い込めば魔法なんて必要ないのではないだろうか

そんな俺の考えを読んだのだろうか師匠はフッと笑い説明を続けた


「しかし魔法陣は一度魔術を発動させると機能を失ってしまう。使い捨てな上、貴重な羊皮紙を使うので高価であるし取引数も足りない。魔道士、なんて役職があるが大半は魔法ばかりを使っている。また魔法の扱いに長けたものでないと制御が出来ず、魔術が発動しないなんてこともある。冒険者が保険として『魔術書スクロール』を持ち運ぶ程度と覚えておけ────と言いたいところだが」


師匠は手のひらの火球を握り潰し、手を正面にかざしたかと思った次の瞬間、その空間に魔法陣を浮かび上がらせた


「なっ───」

「魔法陣を空間に描きだす魔法があるとすれば話は変わってくる。」


魔法陣は中央に六芒星の星、その外を二重の円が囲んでおり、円と円の隙間には文字が並んでいた


「魔法陣は基本的に中央の属性を表す図形、その周りを囲む、効果を補助する呪文で構築されている。今回の六芒星は炎、呪文は速さ上昇だ。そして魔術を発動させるために追加の魔力を流し込むと──」


師匠の手のひらから光が放たれ、魔法陣に吸い込まれてゆく、そして魔法陣から小さな火球が恐ろしい速さで放たれ、俺の腹に炸裂する


「熱っ──!?」


服に着いた火を必死に左手で払い消火する


「とまぁこの様に『魔力糸フィーロ』の魔法で魔法陣を構築し魔力を流し込めばどこでも魔術を発動させることができる。」

「だからって人に火球を打ち込むなよ!」


抗議する俺をまぁまぁと適当に受け流し、師匠は話を続けた


「『魔力糸フィーロ』による魔法陣の構築、維持はイメージをするのがとても難しい。先ずは初級魔法を教えよう。」


説明を終え俺に魔法を教えようとする師匠。しかし途中から思ってはいたが


「戦士の俺が魔法や魔術を使えるようになるのか?そういったのは魔道士や賢者の専売特許だろうが。」


そう言うと師匠は首を傾げる


「まさかお前は剣術だけで私より強くなろうとしているのか?」

「いや戦士は前衛で近接戦闘をするのが常識だろう───────」


俺が言いかけるとブフッと吹き出し爆笑し始めた


「アーーーーーーヒャッヒャッヒャッヒャッ!戦士の癖に騎士になろうとしている男が常識だと!?笑わせてくれるな!」


腹を抱え膝をバシバシ叩きながら笑う


「確かに魔法も魔術も戦士のお前にはあまり適性がない。ついでに言うと戦士は元々脳筋な役職だ、剣術に関しても適性が高いとは言えない。」


ズバッと才能がないと言いつけてくる師匠。そして笑いを止め、大きく深呼吸をする


「だが才能なんてのは血のにじむ様な努力で補える。それに近接戦闘だけでは格上には通じない。」


師匠は目にも止まらぬ速さで腰の剣を抜き放ち一閃─────いや動作は全く目で捉えられなかった。剣を振り抜いた姿勢の師匠を見て何をしたか予想したにすぎない


「私が能力が高いだけの女だと思ったか?魔道はもちろん、剣術に加え、徒手も習熟している。ジーン、強者には戦闘中に切れる手札の多さも含まれるのだ。お前には剣術と魔道をマスターしてもらう。」


剣を鞘に納め、では準備はいいなと魔法を教えようとする


俺は改めて自分の選んだ道が果てなく険しいものだと実感した

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