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1章 弟子入り

「生命の危機に瀕した時、魂が変質し、体内の魔力オドが急増する。そしてそれに耐えられるだけの()へと変化を遂げる。また、魂の変質の際に新たなスキルに覚醒することもある。これが魔物化のより詳しいメカニズムだ。」


赤髪に碧眼でいつものローブを纏った旅人が話を始める。『場所を移そう。』そう提案され俺と旅人は村長の家から俺の家に移動したが弟子入りの話かと思えばまた魔物化の話である


「人間もまた然りである。動物のように体が変質するケースは確認されていないが、魂が変質、及び成長することで()も変化し、身体能力が向上する。」


人間も変化するだと?


「また人は獣と違って鍛錬によって()を先に鍛え、魂の成長を促すことができる。器が大きくなる分、それを満たそうとするのだ。時の賢者はこれらのような魂、及び肉体の成長を『存在進化レベルアップ』と名付けた。」


存在進化レベルアップ


初めて聞くその響きに俺は自身の夢を叶える可能性が開けたような気がした


「だがこのレベルアップには壁が存在することが確認されている。一定回数の存在進化レベルアップをしたところで存在進化レベルアップしなくなってしまう。また、個人、特に役職による差が激しいことも確認済みだ。」


旅人が淡々と告げる現実。

回数の限界、個人差。これらが表すことはつまり──


「結局、初級職が上級職に匹敵する力を持つのは不可能。その賢者はそう結論を出した。」


胸の中に微かに湧いた希望はあっさりと裏切られてしまった。肩を落とす俺を気にせず旅人はなおも続ける


「しかし、時の賢者は大きな間違いをしていたのだ。」


失意の俺の顔を覗き込むように近づき、旅人は顔をニヤつかせて告げる


「────存在進化レベルアップに限界などない。」


旅人の姿が消えた。突如として姿を消した彼女に混乱していると背後から声がかけられる


存在進化レベルアップは重ねる毎に次にするまでのハードルが高くなっていく。並の鍛錬では魂も肉体も変化しないほどにな。そしてある程度重ねたところでハードルは急激に上がる。───────時の賢者すら限界だと勘違いするほどのな。」


再び旅人の姿が消え、再び正面に現れる


「私の役職は『魔道士』だ。戦士ほど救いようのない役職ではないが初級職の一種だな。」

「今の瞬間移動は何かのスキルか?」


尋ねる俺に旅人はちっちっちと指を振り答える


「私はちょっと早く動いただけさ。自分の能力にものを言わせてね。」

「目に見えないほど早く動きましたってか?勇者みたいな化け物ならいざ知れず、魔道士なんて初級職ができる芸当じゃ───」


そこまで言いかけ旅人の話を思い出す。こいつ…まさか…っ!


「そう、私は賢者の定めた限界…それを凌駕する回数の存在進化レベルアップを重ねたのさ。」


旅人からとんでもない圧がかけられる

ビリビリと空気が張り詰め、地震でも起きたかのように家が振動する。そしてその圧に晒され、昨日ぶりに感じる死への恐怖心に汗が吹き出す

絶対的強者に睨まれた獲物。どうしようもないほどの実力差がそこにはあった


「ほんの少しばかり魔力オドを解放してみたよ。既に私の魔力オドの量は賢者に匹敵し、身体能力だけなら勇者にも引けを取らない。」

「そんな化け物が何の目的で旅なんかしてやがる?」


そんなに強ければ王都で重職につけるはずだろうのに、わざわざこんな辺境まで旅に来ているなんておかしい。その気になればこの村を壊滅できるだろう。


警戒を表す俺に旅人は魔力オドの解放をやめて話す


「ある日、私のスキル『未来視』が二つの予知を出した。一つは私を遥かに超える実力者に出会うこと。もうひとつはその実力者を超えうる存在がこの村にいることだ。」


勇者に匹敵するこの化け物をさらに超える奴だと?

そんな奴が存在するなんて信じられない。ましてやこの村にそいつを超える奴がいるという。

『未来視』とやらの予知がどれほど当たるのかは知らないが俺には旅人の話が真実だと信じられない


「この村に来て村人と接し、村長の娘であるリノ、そしてギルという小僧が一段と高い才能を秘めていた。しかし、昨日の君の姿を見て確信した。二つ目の予知が表す存在は君であろう。」

「俺はアンタと違ってロクに存在進化レベルアップもしていない最弱職だぞ?」

「そんな最弱職が格上の巨熊相手に生き残っている。得体の知れないユニークスキルを使ってな。」


───────俺は昨日、魔物化した巨熊に襲われた時に二度、おかしな現象が起きた。


一度目は心臓に相打ち覚悟で刺した剣は気がつけばやつの剣を切り落としており、二度目は確かに頭を砕かれ死亡──したはずだったが頭を掠める程度に収まった


頭を砕かれた時の感覚を思い出し気分が悪くなる


「君のユニークスキルには可能性を秘めている。格上にも通じる可能性がな。」

「だとすれば何だ?俺にアンタを超える実力者とやらを殺させるつもりか?そんなことをしても残るのはアンタよりも強い俺だけだぜ。」

「そんな事は考えてないさ。私も存在を確認しに来ただけで弟子に取ろうとは思ってはいなかった。」


サラッと答える旅人。予想が外れ余計に思惑が分からなくなる。そんな俺を見て面白がるように告げる


「しかし、君が最弱職(戦士)であると知り、考えが変わった。私は見たくなったのさ。生まれた時から与えられた役職が人生を左右するこの世界で、最弱職たる戦士の君が全ての理をひっくり返す瞬間をね。」


ゲラゲラと笑い声をあげる旅人。こいつはやはり頭のどこかがイカれているようだ


「そんなアンタの遊びに付き合うつもりなんてな──」

「きみにとってもいい話だと思うよ?夢である騎士どころかそれを遥かに超える存在になれるチャンスが転がりこんできたのだから。」


断ろうとした俺に甘言が囁かれる


「君だって分かっているだろう?いくら鍛えたからといって戦士である以上、底がしれてる。限界を超えた存在進化レベルアップなんて並の人間ができるわけが無い。たが私ならばできる。君を育て上げ、騎士どころか世界で最強の存在にしてあげるよ!」


確かにそうだ。いくら存在進化レベルアップをしたところで限界を超える方法を俺は知らない。頑張ったところで時の賢者が定めたという壁にぶち当たり、そこで人生を終えるだろう。


父のような騎士になりたい。誰かを守れる力が欲しい


「私の弟子になれ。」


今一度告げられる


こいつのことは信用ならない。世の中をひっくり返すのをみたいだなんて嘘かもしれない。たが────


「いいぜ。ただ俺は俺の夢のために強くなるだけだ。アンタの道楽に付き合うつもりはない。」


俺は弟子になることを選んだ。こいつが何を考えていようと俺の夢のために利用してやる


「いや、君は強くなるさ、何者よりもね。この私が師匠なのだから。」


旅人が手を差し出してくる。払おうと思ったがもう俺らは師弟関係だ。一応礼儀だけは払おうと手を伸ばし握手する。


「よろしく頼むよ弟子よ。」

「──その呼び方はやめてくれ。俺にはジーンって名前がある。」

「そうかジーン。そういえば名乗っていなかったな。私はライザ。まぁ師匠と呼んでほしい。」

「よろしく頼む、師匠。」



こうして俺は師匠の弟子となり、厳しい修行が始まった

2章は少し短めになるかなーと思います。説明ばかりで申し訳ない_(:3 」∠)_

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