生臭 異臭は不人気作家
僕、神田 暁は家に着くなり、スマホを充電し、タブレットを開き、生臭 異臭でログインすると、直ぐに感想欄を開いた。
そこには三名のユーザーが僕の作品の感想を書いており、それぞれが個性豊かな視点で僕の作品の感想とレビューを書いてくれていた。
「どれどれ、電波ヒジキさん、恋歌 花園さん、綾小路 袋小路さんの三人か」
なんだこの名前は! 誰一人まともな名前の奴がいない。
「この三人のうち一人が山崎 綾さんって事か……まさか隣の席の美少女が僕の作品の読者でファンだとは……流石に未だに信じられない」
僕はタブレットの画面を見つめ溜息をつく。
生臭 異臭は確かに綾さんが言う通りベテラン作家だが、僕が小学生の時から使っているペンネームで、今年で十年目を迎えるだろ、ただ綾さんが言うような面白い作品を書くような作家でもない。
今まで何十作品も書いたが、三人以外に誰にも評価もされず、一度だって三桁のポイントも、評価もされてこなかったのだ。
生臭 異臭が評価されるとするならば、どの作品もエタらず完結させてきた事くらいだろう。
この三人は昔から僕の作品に必ず感想を書いてくれる読者さんで、あまりにも更新が遅いと、『話の続きはまだですか? もう体がウズウズと生臭先生の作品エキスが切れたと悲鳴を上げています』と、お前はヤク中かと突っ込みを入れたくなるようなメッセージをよこす時もある。
まずは冷静に考えよう、三人中一人は山崎 綾さんなんだ。
「この中で怪しいと思うのは、唯一女性らしいユーザーネームな感じの恋歌 花園さんだろうと思うけど……」
他の名前も、流石にこんな事を言うのも失礼だと思うけど、綾小路 袋小路は綾がついてるから、もしかってなるけど、その前に「お前は漫才コンビか!」と言いたい自分がいるのも正直な気持ちだ。
しかし、ユーザーネームなんてみんな変な名前の奴ばかりだからな……山崎 綾さんが話した内容や行動と、『小説家をやろう』での三人の活動内容を照らし合わせてみれば、もしかしたら綾さんのユーザーネームが分かるかもしれない。
取り敢えず、恋歌 花園のマイページを見てみよう、綾さんは書き手であり読み手らしいから、この恋歌さんが読み専の方なら違う人だ。
「どれどれ……!? 二作も作品を書いている……これじゃ分からないな、取り敢えずこの完結してる作品を少し読んでみるか、なんかしらヒントが隠れてるかもしれない、まずは小説情報を……えっ!?……」
僕はこの『恋する私と恋する僕』の小説情報を見たときに絶句した。
「な、なんだこのポイント、感想、レビュー、評価の数は……めちゃめちゃ人気作じゃないか……それも連載して間もない間に……僕は恐る恐るアクセスデータも覗いてみると……な、何!?」
僕はこの作品のアクセス数を見て、椅子から転げ落ちる。
「い、一億PV以上だと!? そ、そんな凄い作品書いてる人が前々から僕の作品を読んで感想を書いているって言うのか……はぁ……」
僕はなんか全身から力が抜けた。
「まぁいいや、せっかくページ開いたんだし読んでみるか……!……! なんだ、これはヤバイ、面白い」
僕は一話だけ見るつもりが、一度読んだら辞められず、数時間没頭して読み続け、最終話まで読んだ上に感想も書いてしまっていた。
「これでは ハッキリした、恋歌 花園先生は山崎 綾さんではない事が、となると残り二人が綾さんて事か……」
こうして僕の勘違いは始まり、恋の行方は遠のいた。




