山崎 綾と隣の男子
入学式も終わり、一通りの学校の話も済んだ放課後の教室は、元々いた友達や、新しく出来た友達などと雑談をする者で賑わっていた。
私も一緒にこの東西新井高校に入学した親友の黒髪ショートカットの鮎川 瞳と色々な話をして、新しい友達もたくさん出来た。
「じゃそろそろ帰ろうか、綾?」
瞳が私に鞄を持ちながら教室の出入り口に向かいながら声をかけた。
「あっ、ごめん今日は先に帰ってて、このあと用事があるから」
私はそう言うと、「ごめんね」と手を合わせて瞳に謝った。
「あっ、そう、分かった、先に帰るね、バイバイ」
瞳はさっぱりした子だからいちいち理由も聞かず、私に手を振ると、他の今日出来た友達の女子達と帰っていった。
それを見届けると私は自分の席に向かい、椅子を引いて。
「よっこいしょ」
と言いながら、自分の席に座る。
私の隣には周りを気にしないのか、学校の行事が全て終わり、帰宅の時間になったにも関わらず、ずーとスマホを睨みながら、何かをしている暁がいた。
「ねぇ暁、さっきから何を見ているの? 見せてよ」
私が隣でそう聞くと。
「……」
無視?……いや違うな、これ普通に自分の世界に入っている。
私は邪魔しちゃ悪いと思い、自分のスマホを取り出すと、『小説家をやろう』サイトにログインして、今連載してる作品の執筆に取り掛かった。
なんとも言えない心地よさ、教室はみんな帰宅して私と暁の二人なのに、彼は私に興味を持つわけでも、避けるわけでもない、だから特に無駄な話をしてこない。
なのに隣に座っているだけでとても居心地が良かった。
二人が無言でそれぞれスマホをいじって一時間近く経った頃だろうか。
「あっ! 充電なくなった……」
彼が突然声を上げた。
「ひゃ! ビックリした……」
私は突然の事に驚き変な声を上げてしまった。
「んっ……えっ!まだいたの山崎さん……あ、綾さん?」
「う〜ん……ポイント三点、惜しいなぁ、山崎って一瞬言いかけたでしょ、それに『さん』は余計だな〜、綾って呼んでよ」
私は顎に指を当てながら、意地悪そうに笑って言った、暁は困った顔で苦笑いをしていた。
「ねぇねぇ、充電切れたなら、一緒に帰ろうよ、もうスマホ弄らないでしょ?」
私は帰りのお誘いをすると。
「えっ、う〜ん……ハァ……分かった」
かなり嫌そうに暁は承諾した、他の男子なら速攻で喜んで答えるのに。
「暁、もっと喜んでよ、女子と帰れるんだよ、そんなに私と帰るの嫌?」
私が頬を膨らませて怒った風に言うと。
「嫌……とかじゃないんだけどね、今まで一人で帰ってきたから、相手に合わせて帰るってのがちょっと苦手かな、ごめん、嫌な気分にさせたかな」
暁は申し訳なさそうな顔をして謝る。
「だったら私に合わせないで、私が暁に合わせて帰るよ、それなら良いでしょ?」
「嫌、そう言う問題じゃないんだけどね……まぁいいや分かった、僕は今日は全速力で帰る事にするよ!」
私が暁に合わせると言うと、難しい顔をして、突然全速力宣言をした。
「えっ、走って帰るの? 本当に? 私は良いけど暁は走りに自信でもあるわけ……暁でも冗談言うんだね、はっはっ」
私は暁の本気なのか冗談なのか分からない宣言になんだか嬉しく、少しでも私に心開いてくれたのかなんて思いながら、暁の全速力宣言に私も素直に応えた。
「じゃ早く帰ろ暁、早く帰らないと暗くなっちゃうよ」
私はスマホを鞄にしまうと、鞄を腕から肩に担ぎ、玄関の下駄箱目指して先に教室を出た。
「えっ、ちょ、ちょと待ってよ綾さん、さっき僕に合わせるって言ったばっかじゃんか」
暁は慌てて帰り仕度をして、私を追いかけて下駄箱まで走ってきた。
「じゃ帰ろ、早く暁!」
私が先に歩き暁に手を振る。
「……僕は自分のペースで帰るから、早く帰りたかったら先に帰ってて良いよ綾さん」
暁は私に優しく微笑んで、自分に遠慮しないで帰ってと促す。
「ヤダ……一緒に帰る」
私は暁の隣に寄ると、腕を組み彼の歩幅に合わせて私も歩いた。
最初は彼の歩幅が大きく私も少し必死についていっていたが、少しずつだが彼は歩幅を短くしたのだろう、私でも楽についていけるスピードで歩けるようになっていた。
「ありがと、暁!」
私はなんだかんだで私に歩幅を合わせてくれている暁にお礼を言うと。
「ど、どうしたの急に……べ、別に疲れただけだからね」
暁は顔を赤くして照れる。
「ツンデレさんですか? 意味分かってるくせに」
私が意地悪言うと。
「うぅ……少し離れようか、他の人が見ると誤解されるし、歩きづらいしさ……」
暁が膝を動かして私を離そうとする。
「やーだよ、だって一緒にお話をしながら帰りたいから、ボソボソ話す暁と離れちゃうと、なに言ってるか聞こえなくなっちゃうよ」
私は上目遣いで暁を覗き込み、笑いながら彼に言った。
「はぁ……分かったよ……」
暁は溜息をつき、諦めた顔をしていたが、ほんの一瞬だが笑顔を覗かせていた。
夕焼けがオレンジ色に輝く中二人寄り添い私と暁は一緒に家路を歩いた。




